2011年9月11日日曜日

ゴーストライター

平熱のサスペンス。

ゴーストライター('10)
監督:ロマン・ポランスキー
出演:ユアン・マクレガー、ピアース・ブロスナン




ロマン・ポランスキーほど、自身の人生がそこいらの映画以上に劇的な映画監督もいないんじゃなかろうか。
母をアウシュヴィッツで亡くし、2人目の妻をカルト集団に殺され、性犯罪容疑をかけられてアメリカを離れ、以来入国できないままアカデミー賞を受賞し……
そんな現実(ノンフィクション)の凄まじさを知っているからだろうか。どれほど劇的な事件でも、ポランスキーはフィクションをどこか冷めた目で描いているようにも思える。

主人公であるゴーストライターは、亡くなった補佐官の後任として、元英国首相の自伝執筆を依頼される。元首相の住むアメリカの孤島を訪れ、原稿のリライトを進めるうちに、彼の経歴に疑問を覚えるようになる。前任者が遺した手がかりをもとに謎を追うが、事件の核心に迫るにしたがって国家レベルの秘密に触れるようになり、ライター自身にも危険が迫る。

謎を追いつつ何者かに追われるという展開は非常にサスペンスフルなはずだが、主人公が比較的冷静であるためか、観ていて緊張状態が続くことはない。というより、主人公以前に監督自身が、このミステリーを冷めた目で観ているようだ。映画的でありながら、どこまでも冷めた描写のオープニング/エンディングショットによく表れている。
また、取り立てて大がかりな謎が隠されているわけでもないので、謎解きもののミステリーとして観ると物足りなく思えるだろう。
ただし、隠蔽工作がやけにスムースに行われている描写や、ブロスナン演じる元首相がトニー・ブレアを彷彿させるところなど、妙にリアリティを感じさせる作品ではある。

この映画は、ポランスキーと共同で脚本を書いているロバート・ハリス著の小説を基に作られていて、決してポランスキーのオリジナルストーリーではない。
しかし、ストーリーを追うにつけ、ヒッピーカルチャーの影から生まれたマンソン・ファミリーの手で妻を奪い、犯罪容疑のため離れざるを得なくなったアメリカへの、ポランスキー流の当てつけではないかと勘繰りたくなってしまう。

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