2011年9月30日金曜日

チェンジリング

あなたなら、どう生きるか。

チェンジリング('08)
監督:クリント・イーストウッド
出演:アンジェリーナ・ジョリー、ジョン・マルコヴィッチ



事実は小説より残酷で悲しい。それでも事実を生き抜いた人がいることを、イーストウッドは観客に知らせる。そして、「あなただったら……?」と、壮大な問いかけを投げる。

1928年のロサンゼルス。電話交換手として働くクリスティンの息子、ウォルターが失踪する。5ヵ月後、ようやく息子が見つかったとの知らせが警察から届く。喜んで駆けつけたクリスティンだが、そこにいた「息子」はまったくの別人だった。人違いを訴えるものの、警察はこの少年が彼女の息子と主張して譲らず、逆にクリスティンを異常者扱いし精神病院へ閉じこめる。しかし彼女は、警察の不正摘発に熱心なブリーグレブ牧師の手を借りて、警察のずさんな捜査体制を訴えに出る。

悪徳警官や権力者の横暴は、これまでも映画でさんざん描かれてきたが、ここではおおむね事実であるだけに恐ろしい。逆に、クリスティンの母親愛と芯の強さは、事実であるだけに痛ましくも素晴らしい。
クリスティンと警察との戦いだけを見れば、弱い立場の一市民が権力に立ち向かっていくドラマだ。しかし、ウォルター失踪事件には、世間を震撼させるもう1つのおぞましい事件が関わっていることが分かるため、権力をやっつける痛快さはない。たとえ進展があっても、一応の解決があっても、そこには常に冷たく重たい事実が影を落としている。
ただし、イーストウッドは最後にひとすじの光を残した。それは決して安易なハッピーエンドではないし、極めて不確かなものだ。それでも、クリスティンにとっては確かなものであり、それがあったからこそ彼女は生き続けたのだろう。

アメリカの歴史には、本作で描かれている事件のような闇がある。それでいて、闇に光を当てる本作のような映画を認め、大々的に公開する懐の深さもある。
イーストウッドは、祖国の懐の深さと暗い歴史の間で絶妙なバランスをとりながら、深い人間ドラマを描くことに秀でた監督である。

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