2011年9月23日金曜日

クローム・ディヴィジョン/3rd・ラウンド・ノックアウト

悪魔だってパーティーしたいんです。
CROME DIVISION
3rd Round Knockout('11年)



ウィスキーとタバコと美女とハーレー。
ロックンロールの定番……というには、あまりにど直球すぎて引っくり返りたくなるアイテムである。
逆にいえば、そういうアイテムをさらりと着こなし、タイトなロックンロールにしてしまうバンドはカッコいい。だからモーターヘッドは偉大なのだ。

クローム・ディヴィジョンは、偉大なるモーターヘッドへの敬愛をエンジンとして突っ走っている。それでいて、モーターヘッドより幾分アタマの悪そうなポジションをとっている。
2006年に1stアルバムをリリースし、本作3rdに至るまで、メンバー交代劇などはあったものの、音楽性はあまり変わっていない。酒飲んでバカ騒ぎ、バイク暴走、喧嘩上等、女遊び上等、ロックンロール最高! 的な歌詞が、大したひねりもなく恥ずかしいほどストレートに書かれている。そいつを図太いビートに乗せて突っ走らせれば、モーターヘッド直系疾走ロックンロールの完成。
というと簡単な話のように思えるが、実は結構デリケートな作業である。本家モーターヘッドに近すぎてはただのコピー、うかつに奇をてらったことをすればただのパロディ、そもそも本家とは一線を画す個性が何かなければただの二流。
クローム・ディヴィジョンの場合、モーターヘッドよりも歌詞の洗練度を落とし、ブルージーな曲を加えることで(『ゴーストライダーズ・イン・ザ・スカイ』のカバーがその最骨頂だ)、より野暮ったさを醸し出している。それでいて、サウンドにはメタル的な鋭さと重さがある。その音楽は、装飾品をムダにつけまくり、ムダにチューンアップした、カッコよさとダサさ紙一重の改造ハーレーのようだ。

コアなメタル好きにしてみれば、クローム・ディヴィジョンは、ディム・ボガーのシャグラットのサイド・プロジェクトとして名が知れているだろう。ノルウェーブラックメタル界のトップクラスに位置するディム・ボガーは、宗教・人間の闇を描く歌詞、キーボードを多用した哀愁漂うメロディ、オーケストラを起用した重厚かつ荘厳なサウンドで知られている。
そのボーカリストが、荒くれパーティー野郎丸出しの曲を書くとは、にわかには結びつけにくいかもしれない。しかし、ディムのツアードキュメンタリーで、ホテルの部屋で悪質なイタズラに精を出し、バス内では酒飲んでふざけて、延々パーティーを繰り広げている様相を見ると、案外自然な流れのように見えるのだった。


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