2011年11月23日水曜日

空飛ぶモンティ・パイソン 第2シリーズ第4話



サナギから蝶へ!
テリーGのアニメーションから始まるオープニングはパイソンズ初。イモムシの顔が、テリーGによく使われる変質者の顔なのは謎だが。

建築コント
今回、第1シリーズ第9話から登場のガンビーたち(テリーG以外の5人)が番組司会を務める。もちろんアホのおっさんたちなので(それ以前にパイソンズなので)、マトモな進行はやってくれない。
まずはマンション建築プランのプレゼンを巡るスケッチ。1つは蓄殺場専門業者による設計、もう1つは超絶欠陥設計、建築業者は「とりあえず庶民には安い家叩き売ってりゃいいや」スタンス、そのうえフリーメイソンまで絡ませ……パイソンズが見る限り、建築業界はロクなとこじゃないらしい。

フリーメイソンを見分ける方法
フリーメイソン同士は独特の握手をするという話がよくあるが……こんなに分かりやすかったらもう秘密結社じゃないって。

悪質保険業者コント
パイソンズに関わらず悪者扱いされることの多い保険業者。金は払ってくれないが、裸の美女はたくさんサービスする保険に「悪くないじゃん」と思ったあなたは幸せかもしれない。
ちなみに、最初にあしらわれる顧客(グレアム)に表示される「Straight man(脇役)」のテロップ、まさかグレアムがゲイであることにかけて「ストレート」というギャグでは……。

ザ・ビショップ
主教(テリーJ)が、教会で起こるさまざまな事件の現場に駆けつける……けどいつも手遅れなハードボイルドミステリ風映画。日本でも、住職や尼僧が事件に関わるミステリものがあることはあるが、ここまでギャング風ではない。聖職者茶化しは前回もやっていたが、主教のガラが悪い分こっちのほうがいろいろ問題ありそう。
なお、映画のオープニングのテロップ「EのC映画(C of E films)」とは、「Church of England(英国国教会)」の意らしい。いっそ本当に教会が作ったらおもしろいのに……という意見は危険だろう。

ドキュメンタリーなんてくそくらえ
BBCはドキュメンタリーを多く制作していて、評価も高い。最近話題の自然・野生動物をテーマにしたドキュメンタリー映画の多くはBBCの作品。
かといって、自分たちの生活を勝手に住宅難問題ドキュメンタリーの題材にされたら、たいていは怒る。もっとも、この夫婦(夫マイケル、妻グレアム)の住環境にツッコむなってほうがムリだが。

一家に一台・詩人をどうぞ!
本来なら、ご家庭にワーズワーズなどの詩人が置かれているというコンセプトにツッコミを入れるべきだろう。しかし、詩人点検係(マイケル)にやたら積極的に迫る若奥様風テリーJのインパクトが強すぎて本筋を忘れてしまった。

5匹の呪われたカエル
カエルの呪いは魔法で解きましょう。しかし、カエルから人間に戻った実体がこれでは……呪いは解けていないのでは?

薬局
薬を渡しがてら盛大に病名をバラす薬剤師(ジョン)は絶対に嫌だが、「香り(原語ではrequisite)」の一単語だけ発音をおかしくする薬剤師(マイケル)も何となく避けたい。
スケッチの間に挟まれた「何のアフターシェーブローションを使っているか」街頭インタビューでは、回答者にガンビー、枢機卿(第2シリーズ第2話登場)、ケン・シャビー(第1シリーズ第12話登場)となじみの顔がいたりする。

空飛ぶモンティ・パイソン 第2シリーズ第3話



主教のリハーサル
パイソンズおなじみ権力者茶化し、今回のターゲットは高位聖職者。何のリハかは想像力で補うこと。
動物のはく製が次々に爆破されるネタは、過剰な動物愛護精神への挑戦状らしい。

飛ぶ教室
飛行訓練教室のロケーションがそもそもおかしいとか、飛ぶ訓練って飛行機じゃなくてそっちですかとか、ツッコミどころに欠かさないスケッチ。が、最後に英国旅客機操縦士協会の男(エリック)から寄せられたツッコミは、「そこですか!?」という細かいポイント。
第1シリーズでは、スケッチ同士のつなぎとして「道徳的によろしくない」「職業差別だ」といったクレームの手紙をネタにしていたパイソンズだが、今回はムダに細かいクレームをテレビ番組に寄せる視聴者をネタにしているらしい。

英国航空ハイジャック
ハイジャック事件が多発していた70年当時、というか現代から見ても、世界一ソフトなハイジャック犯(マイケル)。いや、ハイジャックの内に入れてはいけない。

ケチな詩人、ユアン・マクティーグル
これもまたパイソンズがよくやる、スコットランド人偏見ネタ。いわく「金に関してケチ」。
もちろん、あらゆる偏見に手を出すパイソンズなので、「差別だ!」といったところで今さら。そもそもこの番組にゴーサイン出してるプロデューサーがスコットランド人だし。
ついでに、ケチなスコットランド人(テリーJ)が出した「金貸してくれ」手紙が「素朴さが売りの斬新な芸術」と解釈されるというネタで、芸術をバカにすることも忘れない。

手の世界
手を植物や動物に見立てる手法は影絵でおなじみ。それが妙に毒々しく映るのは、テリーGの「ギリアニメーション」の成せる技か。

牛乳配達人スタイルの精神科医
牛乳配達は労働者階級の仕事、精神科医は中流以上の階級の仕事のはず。でも、パイソンズにとって階級差はネタにするためにあるようなものなので問題なし。ある意味問題大ありだが。

精神世界番組~デジャヴュの世界~
デジャヴュを検証するはずの番組で、司会者(マイケル)が何度もデジャヴュに遭う。というよりむしろ無間地獄に近いものがあり、見ようによっては怖い。

2011年11月14日月曜日

空飛ぶモンティ・パイソン 第2シリーズ第2話



人力飛行機
オープニングからサイレント形式のブラックな笑い。吹き替え版でアナウンサー(ジョン/納谷さん)が「責任持てんよ」と言うのも納得。

スペイン異端宗教裁判
15世紀末ごろから、カトリック以外の宗派を異端とし、凄惨な拷問と惨殺をくり広げたスペイン異端宗教裁判。今回の放送では、誰かが「スペイン宗教裁判」と口にするたびに、「まさかの時にスペイン宗教裁判!」を決めゼリフに3人の枢機卿(マイケル、テリーJ、テリーG)が来てしまう。
……が、数を数えられないわ、セリフを噛むわ、間違った小道具を持ってくるわと、その実力は新人俳優さん以下。かくして、異端審問をめぐる血みどろの逸話は遠くなりにけり。

BBCのジョーク「訪問販売コント」に出演
第1シリーズ第10話「あなたもコントに出ませんか?」に近いものがあるスケッチ。BBCから突然「チョイ役で出演お願いしますよ」と言われ、詳細も伝えられないままスケッチの現場に行くことになり、結局ネタが成立しない状態で帰される。この男(グレアム)は無事に帰されなさそうなので、第1シリーズのスケッチよりヒドいかも。
ちなみに、「本当は編成希望なんですが、高学歴が邪魔してね」と語るBBCスタッフ(ジョン)。イギリスでは、コメディアンおよびコメディ番組上層部は、高学歴人間が占めるところらしい。実際、パイソンズも全員高学歴。

税金問題
税金審議会の場で、次に税がかけられようとしている「アレ」。さらなる増税傾向にある現在の日本では、「アレ」の正体がなおさら気になる。

スペイン異端宗教裁判(その2)
いろいろと残念なザ・枢機卿ズ再登場。老婦人を拷問にかけるはずだが、その内容は……。
こんな親しみやすい異端審問だったら、歴史はメチャクチャ違っていただろう。

「嵐が丘」手旗信号バージョン
読んで字のごとく。パイソンズは、大作を茶化すために、顔芸も下ネタもドタバタも必要としない。

ジェスチャー刑事裁判
陪審員の判決や、次の被告の呼び立てをジェスチャー当てゲームで。「そこジェスチャーするまでもなく分かるんじゃね?」というツッコミは禁句。
まぁ、ちょっとした英語の勉強にはなるかもしれない。被告は「defendant(ディフェンダント)」、魚のエラは「gill(ギル)」、結び目は「knot(ノット)」、無罪は「Not Guilcup(ノット・ギルカップ)」……いや、最後のは違うか。
そして、最後の最後にまた「スペイン宗教裁判」の一言が。ザ・枢機卿ズの出番となるはずだが、番組はもう終了間近。枢機卿ズ最後の戦いは、エンド・クレジットとの競争だった。

空飛ぶモンティ・パイソン 第2シリーズ第1話

第2シリーズに入ったところで、面白さを伝えるために、できるところは動画を添付することにします。



オープニング
第2シリーズから、オープニングにはジョン演じるアナウンサーが登場する。イッツマンお決まりのセリフが「It's...」なら、アナウンサーお決まりのセリフは「And now for something completely different」(それでは、お話変わって)。
吹き替え版の場合、ときどき「責任持てんよ、ワシは」になっていたりもする。実際、パイソンズはかなりヤバそうなネタで幕を空けることもしばしばあるので、間違ってはいないはず。

内務大臣を迎えて
文字通り、内務大臣(グレアム)を迎えて住宅政策についての意見を訊く、普通の報道番組。
大臣が素敵なドレスをお召しになっていることと、本題にまったく入っていないことを除いて……。

新型ガス調理器コント
シリーズ1回目にしてテリーJのおばちゃん的魅力が活きるコント。
ただし、ここで問題なのは、正式な書類がないとガス調理器1つ取り付けられない労働者たちの方。杓子定規なのはお役所だけではないらしい。

空軍パイロットのヒゲ剃り
同じく、シリーズ1回目にしてテリーGのブラック過ぎるセンスが活きたアニメ。こんなヒゲ剃り、スウィーニー・トッドもびっくりです。

新聞販売店のエッチな客
アダルト商売の広告を、隠語を使って普通の売り込み広告に見せかけ、新聞販売店の掲示板に貼るという手口は実際にあったらしい。読む人が読めばピンとくるそうな。
しかし、この客(エリック)のように何でもかんでもそっち方面に解釈するには、相当な煩悩パワーが必要と思われる。

シリー・ウォーク
パイソンズを代表する傑作スケッチにして、究極の脚技。あまりに人気すぎて、あちこちで「バカ歩きやって」とリクエストされることにジョンは嫌気がさし、バカ歩きを封印してしまったのだとか。
ジョン演じる「バカな歩き方省」の大臣によると、当時イギリスのバカ歩きは国防に次ぐ予算を投じられていたらしい。しかし、これでも予算は削られたほうで、バカ歩きを申請する場合にも、よほどバカでないと補助金を出してもらえないらしい。
ちなみに、残念ながら補助金申請を却下された男(マイケル)は「ピューティーさん」と呼ばれている。第1シリーズ第2話「結婚カウンセラー」で、妻を他の男に取られても文句を言えないお人よしバカのアーサー・ピューティーと同一人物の可能性が高い。
とりあえず、このインパクトは一度見ていただきたいので、下に動画を添付しました。脚が長く関節が柔軟なジョンならではの凄技です。

蛙のエセル
何でこんなタイトルになったのかは分からないが、とりあえず報道特番。トピックは、最近逮捕されたばかりのギャング、「ピラニア兄弟」ことダグとディンズデール兄弟。
ピラニア兄弟の関係者たちが取材に答え、2人の人物像に迫っていく形式だが、肝心の兄弟は最初に写真がちらっと出てくるだけで(しかもパイソンズメンバーではなく、誰か分からない)、実物が姿を現すことはない。
関係者の中でも強烈なのが、弟ディンズデールの恋人(ジョン)。「(ディンズデールは)女形の扱いを心得ていたわ」と語るように、「ガールフレンド」とは言い切れない……。ただし、ジョンの女装キャラの中では、当社比で一番可愛げがあると思われる。
なお、弟を含めたみんなが恐れ、ルイジ・ヴェルコッティ(マイケル。第1シリーズにたびたび登場したイタリアン・マフィアの男)すら怯えさせた兄ダグの最大の武器は、「比喩、隠喩、パロディ、風刺などあらゆる表現を使った皮肉」。
あらゆる皮肉で人々を脅かすって、モンティ・パイソン自らのことでは……?

バカ歩きの動画はこちら↓

2011年11月11日金曜日

カンパニー・メン

上を見る前に、足元を見て歩け。

カンパニー・メン('10年)
監督:ジョン・ウェルズ
出演:ベン・アフレック、トミー・リー・ジョーンズ



日本人って好きだよなぁ、上を向いて歩くのが。確かに、3.11のような悲劇を目の当たりにして、それでも生きていくには大切なことだとは思う。
でも、上を向くのがいつも正しいってわけでもないだろう。上ばかり見てると、実は泥沼に足突っ込んでたことに気づかないかもしれない。

リーマン・ショックによる不況を機に敢行された、企業の大規模リストラ。クビを切られた1人、販売部長のボビーは、家族のためにも再就職先を探そうと努めるが、高給エリート精神が仇となってなかなか仕事にありつけない。勤続30年の重役フィルも、年齢のため再就職は難しい。やがて、CEOとは起業仲間で、会社のリストラ策を苦々しく思っていた重役ジーンにも解雇通知が。

「どんなときも、上を向いて歩こう」というキャッチコピーや映画予告を見る限り、日本の配給会社は「苦境でも前向きに頑張ろう」をコンセプトとしたいらしい。しかし、各キャラクターの動向を見ていると、配給会社が宣伝しているほど彼らはポジティヴではない。
例えば、ボビーは失業してなお子どもに高額なプレゼントをしたり、ゴルフクラブに通ったりと、高給エリートのステータスにしがみつこうとしている。彼よりよほど現実を見ている家族に支えられて、ようやく動き出し、慣れない肉体労働を始める。
逆にフィルは、一か八か元の会社の海外部門への就職を打診する行動力はあるが、家族には「失業したとバレるから早めに帰ってこないで」と邪険に扱われ、次第に行き場をなくす。
ジーンは、起業したばかりの頃を思い出し、当時とは変わってしまったCEOに幻滅し、原点に戻ることを考える。
進む道が決意であれ虚無であれ、彼らはみんな上ではなく、足元を見て歩いていた。そして足元を支えるものとは、家族であり、働くということの原点であった。

なお、リストラ社員の悲劇や復活劇がある一方、CEOが長者番付の上位に収まっているという、皮肉な実態がある。映画公開年を考えれば意図してやったことではないはずだが、ウォール街で大規模デモが起きている現在、実にタイミングのいい描写である。

ノーカントリー

世界の終わりのおかっぱ男。

ノーカントリー('08)
監督:ジョエル&イーサン・コーエン
出演:トミー・リー・ジョーンズ、ハビエル・バルデム



世界は核戦争によって終わるのではない。地球の内部崩壊で終わるのでもない。隕石の衝突でも、宇宙人の襲来でもない。
世界を終わらせるのは、世界の片隅にわずかに入ったヒビ。この場合のヒビとは、1人のおかっぱ頭の殺人者だった。

80年代のテキサス。ベトナム帰還兵のハンター、ルウェリン・モスは、狩りの最中に複数の死体を発見する。銃撃戦の痕跡、トラックの荷台いっぱいの麻薬、そして大金の入ったバッグ。
ヤバい金と知りつつも、モスはバッグを持ち逃げしてしまい、麻薬組織に雇われた得体の知れない殺人犯、アントン・シガーに追われるはめになる。
一方、モスが発見した銃撃戦跡地の事件と、シガーによる一連の殺人事件を担当することになった保安官エド・トム・ベル。彼はモスが窮地に陥っていることを悟り、モスとシガーの2人を追跡する。

ここまでは、優れた逃亡/追跡劇サスペンスである。しかし、終盤に行くにつれ、物語はそこから逸脱していく。サスペンスと呼ぶには、あまりにも不条理に満ちた映画だ。
不条理を具現化したようなシガー、不条理に正面から立ち向かうモス、不条理に翻弄されるベル。サスペンスに重点を置いて観ていると、それぞれが迎える結末に納得できないかもしれない。

不条理に覆われた映画だけに、不条理の具現化たるアントン・シガーは、映画全体を食いつくさんばかりの存在感である。
国籍不詳。欲も怨念もトラウマも快楽もない。コイントスで生死を決めるなど、本人にしか分からないルールで生きているものの、基本的にはただ突然やってきて、突然命を奪っていくだけ。
特徴は七三分けのおかっぱ頭。ときに酸素ボンベ付きの蓄殺用エアガンを持っていたりする。その佇まいはいかにも滑稽なはずだが、実際のところ、そこにいるだけで怖い。恐怖は、滑稽さというフィルターに通すと、増幅するらしい。

ベルは、しばしば最近の犯罪の異常性と、正義と秩序が失われつつある世の中を嘆く。しかし、シガーによる殺人事件は、秩序の乱れや異常犯罪だけで測ることができない。ベルもモスも、昔ながらの正義や戦場の経験など、それまでの価値観や信念ではどうにもならないものに出くわしたのだ。
とはいえ、この話は80年代のテキサスに限ったことではない。今も昔も、どこの国のどの場所でも、大した理由のない殺人や暴力が起きる。ベルの言う「世の中の崩壊」は、この当時に始まったことではないのだ。

物語の結末はあまりにも唐突に訪れ、観客は映画のキャラクターともども、希望があるのかないのか分からないこの世界に残される。もとよりコーエン兄弟は通好みの監督だが、通の間でも賛否両論あるかもしれない。
もし、この作品に魅了されたなら、最高にとんでもない不条理と、笑ってしまうほどの怖さを味わえるだろう。

2011年11月4日金曜日

ロッキー・ホラー・ショー@川崎クラブチッタ

今宵お集まりのユニークな皆様。

映画『ロッキー・ホラー・ショー』にハマった者たちの夢。それは、映画上映と舞台を同時に行い、観客も仮装してツッコミを入れたり小道具を使ったりするイベントに参加すること!
ロッキー・ホラー・ショーの真髄は、「観客参加型エンターテインメント」にあるのだ。

日本でロッキー・ホラーを体感できる数少ないチャンスが、10月末に川崎で行われるハロウィンイベント。ロッキー・ホラー上映会は、イベント開催当時からずっと続いている企画の1つである。
もちろん、観客は仮装の人が大多数。映画のキャラクターの格好の人もいれば、ハロウィンの流れでモンスターやコミックキャラ仮装のままの人もいる。
こんな出で立ちだからみんな玄人参加者なんだろうな……と思いきや、映画上映前に「初めての人ーー?」と訊かれて手を挙げる人が多数だった。

上映会の司会は、ロッキー・ホラー・ショーファンクラブ会長のBettyさん。ピンク・ルームの手術着フランクの仮装だ。上映会以前に、チッタデッラ広場のプレイベントも一度拝見している。(ちなみに、このプレイベントの「タイムワープ」ダンスも楽しかったし、キャスト陣の仮装のハイクオリティぶりに驚いたものです)

まずは、話題の海外ドラマ『glee』にロッキー・ホラー・ショーをテーマにしたエピソードがあるとのことで、gleeシーズン2のDVD告知。
続いて、12月から始まる舞台版ロッキー・ホラー・ショーの告知。フランクを古田新太さんが演じるあたりが興味大。
このときの告知映像に、リフラフ役にしてロッキー・ホラーの生みの親、リチャード・オブライエンの映像&コメントが映っていた。ロッキー・ホラーファンの神様の思わぬ登場に、場内は一気に拍手と歓声に包まれる。しかし、何より驚いたのは、このお方の容姿が70年代にリフラフを演じていたときからほとんど変わっていないことだった。

さて、告知も終わっていよいよ本題。といっても直ちに上映に移るわけではない。
ロッキー・ホラー上映会初参加となる人々(通称ヴァージン)の第一関門がここ。ヴァージン代表5名がステージに上がり、「誰が一番ヤらしくバナナを食べるか」を競うのである。……率直に言って、今回見た代表5名は、本当にロッキー・ホラーヴァージンか? と訊きたくなるほどハイレベルだった。優勝者に至っては「69」である。
初心者辱めイベントのお次は、初心者に優しい「タイムワープ」ダンスレッスン。この上なく妖しい執事&メイド兄妹リフラフ&マジェンタをはじめ、歌声とタップダンスがキュートなコロンビアらトランスセクシュアル星人たちの登場シーンで使われるダンスである。ファンなら覚えておきたいロッキー・ホラー名物だ。

「タイムワープ」のダンスシーンはこちら↓

こうした壮大な前振りを経て、ようやく映画本番。
ロッキー・ホラー・ショーが一般の映画と一線を画すのは、映画の場面に合わせて観客が小道具を使ったり、一緒に歌ったり、ツッコミ(ボケ?)を叫んだりできることだ。
小道具に関していえば、結婚式の場面では紙吹雪(海外ではライスシャワーだがここでは禁止)。雨の場面では頭に新聞紙(海外では水鉄砲使ってるけどここでは禁止)。我らがカリスマ、フランクの登場の場面ではクラッカーなどなど、パーティー感覚の楽しさである。
観客が何か叫ぶときは、「お約束のレスポンス」と「即興のツッコミ(ボケ)」がある。レスポンスでいえば、例えば平凡なカップルのブラッドに「asshole(バカ)」、ジャネットに「slut(アバズレ)」と叫ぶのが定番。
ツッコミ(ボケ)ができるのは、ある程度熟練のロッキー・ホラージャンキーだろう。しかも、他の人が笑って済まされるほどの適度なユーモアと毒気、それに度胸を必要とするのだから、なかなかに高度な技である。

せっかくなので、インパクトの強かった傑作ボケベスト5を挙げてみたい。
  1. 「ザキヤマーー!!」(犯罪学者の登場シーン。確かにチャールズ・グレイはアンタッチャブルの山崎並みに顔がデカイ)
  2. 「ズバリ、あんたはオカマでしょう!」(フランクの台詞『しかし秘密を発見しました』の直後)
  3. 「店長、万引きです!」(リフラフとマジェンタが、モニターでジャネットの部屋を覗き見する場面)
  4. 「惚れてまうやろーーっ!!」(ジャネットがロッキーの手当てをしてあげる場面)
  5. 「ごっつぁんです」(レーザー銃を持ったリフラフにスコット博士が片手を上げてたじろぐ場面)
スクリーン前でキャラクターを演じるのは、Bettyさん率いるロッキー・ホラー・ショーファンクラブ「LIPS」の皆様。1つのキャラクターにつき演者が複数いたり(マジェンタは3人いた)、誰一人演じてないキャラクターがいたり(スコット博士はフロア・ショーの場面まで不在)、小道具をパイプ椅子で代用していたり(ロッキーの鞍馬の代わり)と、手作り感に溢れている。しかしこのラフでチープな雰囲気が、小さな舞台で上演されていたころのロッキー・ホラー・ショーとダブるようで、不思議と味わいがあるのだから面白い。何より、有志の役者さんが嬉々としてキャラクターになりきっている姿は、「観客参加型」の極みといえる。

なお、密かに面白かったのが、スクリーンの真下で小ネタを見せるキャスト陣。カメラの移動に合わせて両腕を動かし、あたかも自分が画面を操作しているかのように見せる。あるいは物が投げ捨てられる位置に立ち、それにぶつかって倒れるかのように見せる。さらには稲妻の落ちる先に立ち、感電したかのように倒れる。
ラフなようでいて小技が効いている、コアな楽しみ方だった。

最後は再びタイムワープ。やはり、ロッキー・ホラーの魅力を全身でかみしめられるダンスだ。
かくして、「来年もまたやりたい!」という欲求は募り、ロッキー・ホラー中毒はさらに深まるのだった。

おまけ:ハロウィンパレードを牽引する巨大ジャック・オ・ランタン君。