2011年12月29日木曜日

モンティ・パイソン・アンド・ホーリー・グレイル

聖杯? そんなものもあったっけ。

モンティ・パイソン・アンド・ホーリー・グレイル('74年)
監督:テリー・ギリアム&テリー・ジョーンズ
出演:グレアム・チャップマン、ジョン・クリーズ、テリー・ギリアム、エリック・アイドル、テリー・ジョーンズ、マイケル・ペイリン




私がこの映画に出会ったのは、ヨーロッパのとある安いシネコンだった。
ついでにいえば、モンティ・パイソンとの出会いでもあった。

それはいまだかつてないほどの衝撃だった。
映画が終わったときには、スタンディングオベーションしたいほど感動していた。
「何て徹底的に色んな人をナメくさった映画なんだ!!!」と。

神の命を受けたイギリスの王アーサーは、従者と円卓の騎士たちとともに、聖杯探しの冒険に出る……
という話のはずなのだが、アーサー王も騎士たちも聖杯探求とは関係のないエピソードにばかり巻きこまれるので、話の本筋を見失いつつある。しまいには、「……そこで終わり!?」と責任者(誰だか知らないが)のもとに押しかけたくなるほど、唐突で強引な結末を迎える。
もちろんその間、元ネタとなったアーサー王伝説、ひいては英国人をバカにしきったギャグ満載。TVシリーズ『空飛ぶモンティ・パイソン』同様、農民から貴族様までコケにする。2011年現在も何かと揉めているご近所、フランスだってボロクソな描かれよう。
さらには、映画の始まりの始まり(本編が始まる前ですよ!)から終わりの終わり(フィルム/ディスクが止まるまでですよ!)まで、観ている人を徹頭徹尾バカにした小ネタを盛りに盛っている。

人によってはあまりにシュールすぎてついていけないかもしれないし、観客をナメた演出にイラっとするかもしれない。
逆に、このユーモアについていける人は、『空飛ぶモンティ・パイソン』や『ライフ・オブ・ブライアン』も観て、晴れてパイソニアンデビューできる……はず。

TVシリーズで各自さまざまなキャラクターを演じてきたパイソンズだが、この約1時間半の映画の中だけでも、1人が複数の役を受け持っている。
一番役の少ないグレアム・チャップマンでも、メインのアーサー王を含め3役。最多はマイケル・ペイリンの1人10役。テリーGとテリーJは、監督業も兼任している。
パイソンズを知っていれば、どのキャラクターが誰かはぱっと見て分かるが、中には「えっ、こいつって○○だったの!?」ってぐらい化けている場合もある。ある程度パイソンズに通じてきたら、改めてよーく見てみるのもまた楽しみである。

そんなメチャクチャ加減だが、実は時代考証はちゃんと考えられているらしい。(一部、意図的に時代考証がおかしくなっているところはあるが)
というのも、監督を務めたテリーJは、歴史学専攻であり、特に中世イギリスについては研究本も出しているほどの専門家。当時の衣装や生活状況などのディテールには割とうるさかったらしい。
これで全員ちゃんとした馬に乗っていれば……ねぇ。でも、結果的にはそれが笑いに効いたんだし、おかげで冒頭のアーサー王衝撃の登場シーンが生まれたんだから、むしろ良かった。

ちなみに、TVシリーズと同じ声優陣による日本語吹き替えも、相変わらず軽妙で聴きごたえあり。広川太一郎さんの「ちょんちょん」も聞けるし、アーサー王(グレアム・チャップマン)は山田康雄さんのおかげで、ときどき威厳が抜け落ちて世にも情けなくなる。
ただし、音楽の使用権利関係などで、吹き替え音声がない箇所があるのでご注意を。

あ、もしハマったら、この映画を基にしたミュージカル『スパマロット』もご覧になってはいかがでしょうか?
それが無理なら、お茶碗など活用して、「ココナツ乗馬法」の習得でも……。

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