2011年12月29日木曜日

ロッキー・ホラー・ショー@神奈川芸術劇場

フランク・N・古田新太。

リチャード・オブライエンズ・ロッキー・ホラー・ショー
2011.12.23. 神奈川芸術劇場
出演:古田新太、岡本健一、ROLLY

個人的に軽犯罪とみなしている駄洒落がサブタイトルになってしまったが……
出演者もファンも「フランクン・フルター」と「古田新太」の名前の相似を指摘しているが……
本当にそういう表現が、今回の舞台にはぴったりだったと思う。古田さんは、フランクのキャラクターを完全に自分のものにしていた。映画版『ロッキー・ホラー・ショー』のティム・カリー=フランクそのものとはちがうようでいて、とてもフランクらしかった。

10月末の川崎ハロウィンのロッキー・ホラー上映会では仮装参加者が多数だったが、この日は受付近くでマジェンタを1人見かけただけで、思いのほか仮装がいなかった。当日の寒さを思えば仕方ないのかも。
場内では、メイド服風の衣装を纏ったお姉さんたちが、ポップコーンを売っている。買った人にはもれなく、お姉さんによる「こちらのお客様お買い上げでーす!! ありがとうございまーす!!」という大々的アピールと、周りの人の拍手がついてくる。
上映会のときよりはおとなしめの会場だが、やっぱりロッキー・ホラー特有のどこかぶっ飛んだ雰囲気は保たれているのだ。

ちなみに、神奈川芸術劇場の3階席は、ステージを見下ろすと武道館よりも急に感じる。
高所恐怖症の人はちょっと注意が必要かもしれません。

ロッキー・ホラーの上映会では、スクリーン前で有志のファンたちがキャラクターを演じるのがお約束。小道具があったりなかったり(あってもパイプ椅子で代用だったり)のチープ&ラフ感と、溢れかえるキャラクター愛が魅力だった。

今回は本格的な舞台なので、セットも小道具ももちろんきっちり作られている。舞台背をスクリーン映像で演出するところもある。特に、後半の「物体転送装置」のくだりは、装置のセットが大々的に作られていたため、映画本編よりも筋の通った場面になっていた。

しかし、これだけ大がかりになっても、映画にあったチープ&ラフ感が保たれているのが良い。スクリーン映像のCGはどこか安っぽく描かれているし、ブラッドとジャネットが乗った車も2人がぎゅうぎゅうに詰まるほどの小さい(おそらく1人乗りの電気自動車)。大々的セットと上述した物体転送装置だって、昔のB級SF臭漂うローテク感丸出しデザイン。
B級エンターテインメントに関しては、安っぽさも魅力のうちである。

ところどころカットされたシーンがあったり(冒頭の結婚式シーンや、ロッキーをいじめるリフラフのシーンなど)、新しく付け加えられたシーンがあったりはしたものの、流れの妨げにはなっていないし、新しい演出を楽しめる余裕すらある。
当然、最大の魅力である音楽はカットされることなく順番通り。Rollyさん(エディ役で出演。エルヴィス風の出で立ちがアホかつ愛らしい)による和訳歌詞が、ぶっ飛んでいたり空耳っぽかったり、ロックファンがニヤリとする小ネタを挟んでいたりとこれまた楽しい。

最大の焦点はキャスト。全員キャラクター像を新しく築き上げつつ、オリジナルの「らしさ」はきっちりと踏まえているのだが、このクオリティが想像以上だった。
例えばロッキー。映画と違って喋るキャラクターだが、筋肉アピールと性欲中心に生きているあたりがロッキーたる所以。
個人的お気に入りであるリフラフも、映画より内股でカクカクした動きながら、本来のカッコよさはしっかり魅せてくれる(元祖リフラフ、リチャード・オブライエンはもともとカッコいいのだとこの場を借りて主張したい)。特に、「タイムワープ」でギターをかき鳴らす姿には感動すら覚える。映画版以上にフランクにボコられる姿も、かわいそうなような可笑しいような。
そして、古田新太さんのフランク! リフラフだけじゃなく、コロンビアやジャネットにも容赦なく全力パンチをお見舞いするほどバイオレントだが、そんな横暴ぶりすら素敵に見えてしまうフランクならではの魅力全開。しかも、ときどき可愛らしく見える。冷静に考えたらボンデージに網タイツのおっさんだというのに。(それはティム・カリーも同じか)
キャラクター1人1人に愛着を持ってしまうというロッキー・ホラーの楽しみが、ここでも完璧に再現されたのは、やはり嬉しい限りだ。

お楽しみは舞台本編が終わったあとも続く。
キャスト全員登場のあと、「時間と財力があったらまた観に来て」とフランク古田。しかし、客席を見渡して「時間はあっても財力はなさそうね」と、毒と笑いの一蹴。(でも確かにその通り)
「だったら今日めいっぱい楽しみなさい!」との声に、客席全員が立ちあがる。ロッキー・ホラー・ショーで立ちあがったとしたら、やることは1つ。「タイムワープ」のダンスである! もちろん、川崎ハロウィンで覚えたばかりの私も、座席範囲の許す限り踊りましたとも。
そのあとも、ハンドクラップや雄叫びが飛び交い、ステージ上のダンスは続き、Rollyさんはサックス型ギターで「ジングルベル」を爪弾き……神奈川芸術劇場は、もはやライヴハウスの様相だった。
ようやく現実世界に帰って来たのは、3度のカーテンコールののち、フランク古田がロックスターよろしく口に含んだ水をぷーっと吹き散らしてから退場し、場内アナウンスが流れはじめたときだった。

キャストもスタッフも、ロッキー・ホラー・ショーファンが集って制作したといわれる今回の舞台。
その文句に違わず、キャストの全身から、舞台の隅々から、そして音楽から、ロッキー・ホラー愛がビシバシと伝わってきたのだった。

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