2012年2月15日水曜日

ゴッド・アーミー/悪の天使

極道の天使たち。

ゴッド・アーミー/悪の天使('94)
監督:グレゴリー・ワイデン
出演:クリストファー・ウォーケン、イライアス・コティアス



映画における天使の「おっさん率」は意外と高い。『ベルリン・天使の詩』のブルーノ・ガンツ然り、『マイケル』のジョン・トラボルタ然り、『シティ・オブ・エンジェル』のニコラス・ケイジ然り。誰もが宗教画やファンタジーのイラストに出てくるような美形ってわけじゃないらしい。ついでにいえば、頭の輪っかも羽根もない奴もいる。
よしんばおっさんでなかったとしても、『ドグマ』のベン・アフレック&マット・デイモンの天使コンビを見ると、天使=慈悲深いとも限らなかったりする。
ましてやこいつらなんぞ……ねぇ。

聖職者を辞めて刑事になった男、トーマスが担当することになった事件。現場で発見された遺体は、眼球も視神経もなく、骨や血液の成分は胎児とほぼ同じで、両性具有という奇妙なもの。また、所持品の中には存在しないはずの『ヨハネの黙示録第23章』が記された聖書があり、その聖書の中では天国で天使たちによる戦争が起きることが告げられていた。
戦争を起こしたのは、死の天使ガブリエル。地上に降りたガブリエルは、この世で最も邪悪な魂を求めて、アリゾナ州の町チムニー・ロックへと向かっていた。

一部聖書ネタが用いられているので、そこそこキリスト教の知識がないとよく分からない部分がある。なおかつ「信仰とは?」を問うテーマがあるので、仏教徒という名の無神論者が多い日本では、今一つ納得できない思想もある。そういった宗教観の違いを差し引いても、多少こじつけっぽく思える展開がいくらかある。ついでに、低予算なので、あまり凝ったエフェクトが使えず味気ないように思えるシーンもある。そもそも、天国での戦争という割には、ロケーションが人間界の田舎町ほぼ一角というあたり、スケールが小さい。
重箱の隅どころか、真ん中らへんをつついてもアラがこぼれそうなこの映画だが、コアな映画ファンからはカルト的人気を博していたりする。オタクの心臓をぐしゃっと掴んだキモは、羽根も輪っかも慈悲もなく、ロングコートや黒スーツに身を包み、人間(喋るサル)を都合よく利用しまくる、限りなくマフィアに近い天使たちなのである。

邦題の「悪の天使」とは、神の寵愛が人間に向いていることに嫉妬して、戦争を起こしたガブリエルのことなんでしょうが……率直に言って、天使たちみんながみんな、登場した瞬間から要注意人物オーラを出しっ放し。
特に、ガブリエルの僕ウジエルは、ごつい顔面&ガタイで、『仁義なき戦い』のテーマが似合ってしまいそうなぐらい非・カタギなオーラの天使……というよりむしろおっさん。しかも、登場からほどなくして心臓の掴み出し合いバトルを始める、完璧ヤクザのおっさん。
ガブリエルの企みを阻止しようと孤軍奮闘する、まだ良い人っぽいシモンですら、実はその行動のほとんどが人間たちに迷惑をかけっぱなしである。演じるエリック・ストルツは、『パルプ・フィクション』出演時と大して変わらないスタイルだが、『パルプ…』のだらしないドラッグ・ディーラーとは別人の聖性があるのが不思議だ。

極めつけはガブリエル。爬虫類系の不気味さと、シャープなカッコ良さと(特に横顔)、ズレたユーモア感覚と、一挙一動の優雅さ&スタイリッシュさで、浮世離れ感と威厳とオレ様ぶりをものにしている。ウジエルの遺体に背面投げキスで火をつけたり、トーマスにしか見えないように密かにウィンクしてみせるなど、下手をすれば寒いカッコつけになりかねないシーンも、不思議と様になる。
もともとは美男子なのだが、年をとって顔に影ができるにつれて怖さを増しているクリストファー・ウォーケン。このころちょうどいい感じに、キレイと不気味の境界線上にいたようだ。

なお、天使たちは座るとき、椅子の背のてっぺんや看板のてっぺんなど、不安定な場所にしゃがんでいる(通称・天使座り)。その姿は木にとまった鳥のようで、マフィアもどきたちの背に黒い翼が生えているように思える、シュールな魅力のひとときである。

ちなみに、天使ときたら悪魔もきます。というか、堕天使ルシファーが。後半に登場して美味しい場面をかっさらっていくばかりの奴なのだが、なまじヴィゴ・モーテンセンなだけにやたら妖しくカッコいい。『ロード・オブ・ザ・リング』三部作のアラゴルン役でファン層を広げたことだし、このルシファーになら喜んで魂売っちゃう人もいるかもなぁ。

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