2012年3月15日木曜日

悪魔のいけにえ2

電ノコお笑い劇場(殺戮もあるよ)。

悪魔のいけにえ2('86)
監督:トビー・フーパー
出演:デニス・ホッパー、キャロライン・ウィリアムズ



「そこそこ話を押し広げてつまらない続編になるぐらいなら、オレ自身の手で潔く葬ってやる! 
いっそのこと『すごく怖い映画』ってイメージもぶっ壊してやる!!
突っ走れ! リブ・フリーキー&ダイ・フリーキー!!!」
……と、トビー・フーパーが言ったかどうかは知りませんが。
いや絶対に言ってないですが。

前回の事件から13年後。ラジオ局の女性DJストレッチは、番組に電話をかけてきた若者たちが、チェーンソーで惨殺される瞬間の音声を偶然耳にしてしまう。一方、13年前レザーフェイス一家に甥を殺された元レンジャーのレフティは、この事件に一家の痕跡をかぎつけ、単身捜査に乗り出す。
新聞でレフティのことを知ったストレッチは、証拠として殺人を録音したテープを提出し、レフティの希望に沿ってテープをラジオで公開放送する。そこへ、事件の痕跡を揉み消そうと、レザーフェイスらが彼女のもとへと乗り込んできた。

スプラッター映画の続編のお約束として「残虐度アップ」があるが、そちらは『ゾンビ』の特殊メイクでおなじみトム・サヴィーニ先生が腕をふるってくれたおかげで踏襲。かなりぶっ飛んだ状況下でのゴア描写なので、「そんなアホな」的笑いも含んでいるが、スプラッタ苦手な方には結構エグいだろう。
逆に、前作を覆っていた不快な空気はすっかり薄れ、グロさも不気味さも実にカラリとしている。BGMも、前回の不協和音から一転、ラジオから流れる陽気なロックである。
しかし、まさか残虐度のみならず、「お笑い度」と「ファミリー度」までアップして帰ってくるとは……。
さらに、ラブストーリー(200%片思い)まで突然始まってしまうとは……。

食肉処理場、死体インテリア、地獄の晩餐、チェーンソーダンスなど、前作をなぞったシーンも多々あるが、ブラックな笑いと明るいライティングのため、パロディのようになっている。
また、2作目ともなると、登場の際、畏怖の念よりも「待ってましたーー!!」感が強まってしまうのがホラーアイコンの性。監督がそのへんを意識したのかは分からないが、レザーフェイスは格段にコミカルになっている。ミイラ(前作で他界した兄ヒッチハイカー)と二人羽織りするわ、チェーンソーで突撃する前に必ず謎の腰振りダンスが入るわ、ある意味芸達者になり、こちらもパロディ感満載。
今回はレザーフェイスだけでなく、デニス・ホッパー演じるレフティも、「チェーンソー持ったアブナイ奴」として登場する。殺人一家に立ち向かうため、なぜか武器としてチェーンソーを選択。甥の復讐とばかりに、一家のアジトを破壊し、しまいにはレザーフェイスとチェーンソーチャンバラを繰り広げる。ヒーローというよりバイオレントなお笑い担当だが、本来法の側にいたはずの人間が身も蓋もない破壊魔と化しているあたり、かなり狂気じみている。しかも、ヒロインを救うよりも、より悲惨な状況に突き落としていることが多い。「しょうがないですよ! 暴れん坊デニス・ホッパーだもの!!」という映画マニア限定の免罪符は一応有効かもしれないが……。

今回初めて名字が「ソーヤー」と判明した殺人一家。前作で次男のヒッチハイカー(本名チャーリー)がお亡くなりになり、さぞかし団欒(?)風景は静かになってしまっただろうと思ったら、実はますます賑やかになっていた。
その最たる原因は、ヒッチハイカーの双子の弟チョップトップ。音楽大好きで、やかましさはファミリーいち。頭に鉄のプレート(なぜか一部むき出し)がはまっていて、周りの皮脂をつまみ食いしてしまう悪癖あり。ヒッチハイカーのリアルな狂気と比べると、だいぶマンガ的なヤバい奴だが、コミックリリーフと化したレザーフェイスの脇にいると映えるキャラだ。ちなみに、兄ヒッチハイカーはミイラと化して登場。ほとんどパペット扱いだが、あれはあれで家族に大切にされているらしい。
そんな弟たちに相変わらず振り回されている、食肉卸業者兼コックの長男(本名ドレイトン)。実は州のチリコンテストで最優秀賞を獲るほどの腕前。零細企業の苦労、家族を養う苦労をボヤく姿には哀愁が漂うが、食材の仕入れ元に関する倫理感はやっぱりズレズレ。
そして、相変わらず家族みんなに愛されているグランパ(実は祖父ではなく父)は、御歳137歳と判明。その割に、前作より血色が良く、若干アグレッシブで、「ハンマー技」も再披露。
なお、レザーフェイスの本名はババ・ソーヤー。コミカルさといい気の弱い末っ子ぶりといい、「ババちゃん」という呼び名が似合ってしまいそうだが、呼んでもぶった切られること請け合いだ。

まず間違いなく今回の「マジですか!?」設定ナンバー1は、「ストレッチに恋するレザーフェイス」である。どうでもいいけど、絶対にあれは初恋である。
もともとオリジナルの『悪魔のいけにえ』で、お兄ちゃんに怒られてオドオドしたりグランパ大好きだったり、実はピュアな本質を見せていたわけだが、今回は思春期真っ只中のピュアさ加減が炸裂。ついでに、思春期の男子的なチェーンソー下ネタも付いてくる。ただしプロポーズは血なまぐさい。
彼女が好き/でも我が家じゃ人間は食材……の葛藤に苦しむレザーフェイスは、うっかりすると見ていて何とも切なくなってしまう。もちろん、ストレッチは恐怖でそれどころじゃないので、どう見ても思いは一方通行にしかならない。ある意味、そこいらのドラマ以上の悲恋である。

何せ、もとの映画が極めて完成度の高いホラー映画なだけに、いくら映画会社が儲けを見込んで続編(あわよくばシリーズ化)を進めたって、なかなかあれを超えるものは出来ない。それならいっそセルフパロディにしてしまおうというフーパー監督の方針は、当然前作のファンの失望を買う。
しかし、この思い切りの良さと、各キャラクターのぶつかり合いで引き出される奇妙な魅力のおかげで、オリジナルとは別物の面白さが生まれたこともまた事実である。

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