2012年3月3日土曜日

ナイト・オブ・ザ・リビングデッド

何でこんなにどうにもならない。

ナイト・オブ・ザ・リビングデッド('68)
監督:ジョージ・A・ロメロ
出演:ジュディス・オーディア、デュアン・ジョーンズ



基本的に、私は「走るなゾンビ!」派である。あんなもんがスピードアップ(モノによってはパワーアップ)して襲撃してきたら、勝てる気がしない。脚力と瞬発力に自信ない身としては、ハンデがほしい。
しかし、たとえゾンビがノロノロでも、誰もが生き延びられるとは限らない。それも、生き残れない原因はどちらかといえばゾンビではなく、人災ってところが厄介で……。

父の墓参りに行ったバーバラと兄のジョニーは、墓地で得体のしれない老人に襲撃される。ジョニーは殺され、バーバラはかろうじて近くの民家に逃げこんだ。
家にいるのは、地下室に逃げこんでいたハリー、妻ヘレン、娘カレン、若いカップルのトムとジュディ、そしてあとから逃げこんできた黒人青年ベン。
蘇った死者(=リビングデッド)が人を襲っているとのニュースを聞いた彼らは家に立てこもることになるが、ベンとハリーを中心に仲間割れが続き、その間にも家は死者たちに包囲されていく。

「ノロノロ歩く」「人肉を食べる」「脳を破壊しないと殺せない」「噛まれた人間もゾンビ化する」といった基本定義がつくられたという意味では、映画史上初のゾンビ映画。もっとも、作中で「ゾンビ」という言葉はまだ出てこない。
このころはキャラクターも観客も含め、みんながみんなゾンビど素人なわけだが、ゾンビもゾンビでたいまつの火にビビって逃げるヘタレぶり。のちの映画に比べればそこまで大群じゃないし、顔面の崩れっぷりもかなりソフト。ひょっとして、頑張れば勝てるのではとさえ思えてくる。

しかし、その期待を一気に台無しにするのが、人間同士の内輪もめである。窓やドアを塞いでゾンビの侵入を防ぎつつ、自分たちの逃げ道も確保しようというベン。絶対ドアが破られない地下室に避難しようというハリー。
いちいち揉め事に気を取られているうちに事態は悪化し、「あの時点でああしておけば良かったのに……」という後悔先に立たずの見本市のような展開に。
人間関係の面倒くささが取り沙汰されることは実生活でもよくあるが、それが最骨頂に達するのは、このような極限状況かもしれない。

そして、救いようのない展開のあとに待ち受ける、もっと救いようのないラスト。「本当に怖いのはゾンビだけか?」という問いを、シーンを冷やかに映し出すカメラと陰気な音楽でもって、これでもかと突きつけられる。観るときの気分によっては、やるせなさが倍増してしまうので要注意である。

ちなみにバーバラにいたっては、分かりやすいパニックぶりを見せていたのは最初ぐらいで、あとはほとんど放心状態という、ヒロインであることを忘れてしまうほどの放置され具合。あまりのお荷物っぷりにイラッとくる人もいるだろうが、実際にゾンビハザードが起きたら、パニックのあまり思考回路が途切れちゃうかもしれませんよ。

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