2012年3月12日月曜日

マリリン・マンソン@新木場スタジオコースト

アンチクライスト・エンターティナー。

MARILYN MANSON
2012.03.10. 新木場スタジオコースト

セットリスト:
1. Antichrist Superstar
2. Disposable Teens
3. The Love Song
4. Little Horn
5. The Dope Show
6. Rock Is Dead
7. Tourniquet
8. Personal Jesus
9. mOBSCENE
10. Sweet Dreams
11. Irresponsible Hate Anthem
12. 1996
13. The Beautiful People

長年大好きで、しまいには勝手に師と仰いでいるアーティストに対してだって、今回のライヴ今一つじゃないかな……と思うときがある。
しかし、「ライヴどうだった?」と聞かれると、欠陥があったことを理解しながらもそれを差し置いて、心の底から「最高っす!!!」という感想が真っ先にやってきてしまう。
ムダに熱いファン精神の成せる業なのか、アーティスト自身の魔力なのか。

土曜ということもあって、チケットソールドアウトのスタジオコースト。開演前の緊張感がかすかに漂うフロアは割とぎゅうぎゅう詰め。そんな中、開演とおぼしき「The Beautiful People」のリフのアレンジのようなSEが響くと、オーディエンスが大挙してステージへ押し寄せ、冷たい外気に反して熱気がもわわわとたちこめる。
ステージを覆っていた黒幕が落ちると、40を過ぎて年々丸みが出つつも見まごうことなき長身シルエットが、スモークの奥から出現した。そういえば、最近やたらステージに幕を張る割に、ステージセットが地味っていうのは禁句か?
マンソンにしては珍しく、いつもは本編終了やアンコールに持ってくる「Antichrist Superstar」がライヴの幕開けだった。のっけからお約束のレスポンスも、お約束関係なしのシャウトもぶっちぎりレベルのオーディエンスのハイ・ボルテージぶりを見て、「昨日もここでライヴやったけど、今日の客は世界一最高だ」とのたまうマンソン。PAバランスやバンドのコンディション以上に、本人の機嫌がいかがなものか毎回ヒヤヒヤさせられるマンソンのライヴだが、幸い本日は大変ご機嫌麗しい模様だ。

もはや毎年のようにメンバーが入れ替わるマンソン・バンド。現在の布陣はマンソン以下、右腕にして盟友トゥイギー・ラミレズ(G)、トゥイギーとはサイド・プロジェクト仲間のフレッド・サブラン(B)、サウンドガーデンのバックを務めたこともあるジェイソン・サッター(Dr)。トゥイギーは2001年以来の薄汚れた白ワンピース姿で、オープニングだけなぜかマイケル・マイヤーズ(映画『ハロウィン』の殺人鬼)のようなマスクを着用していた。
前任者クリス・ヴレナの脱退に伴い、現在ライヴにはキーボーディスト不在となっているらしい。キーボードの音はサンプリングで補われていたものの、いかんせん音が細かった。
その分リズム隊が健闘しているので、基盤はぶっとく安定しているのだが、バンド全体のコンディションが芳しいかというとそうでもない。例えば、トゥイギーのハウリングすれすれなギター・プレイは面白いといえば面白いのだが、決して技巧派のギタリストではないので、人によっては聴き心地が良くないかもしれない。それは仕方ないとしても、マンソンに至っては、しょっちゅう歌い方がぐだぐだになったり、歌詞をすっ飛ばしたりする。声が思うように出ないのか、はたまた単に雑なだけなのか。個人的には、後者の疑惑のほうが濃厚なのだが。

そんな調子でも、久しくライヴでお目にかかっていなかった曲が入ると、自然と嬉しくなるもの。「Little Horn」や、デペッシュ・モードのカヴァー「Personal Jesus」然り。トゥイギー脱退期の『The Golden Age Of Grotesque』から「mOBSCENE」がチョイスされたのも珍しい。サプライズというほどではないにしても、ファンとしては盛り上がる。
その辺りを除いては、セットリストのほとんどは『Antichrist Superstar』『Mechanical Animals』『Holy Wood』の三部作から。現時点の最新作である09年の『The High End Of Low』からは1曲も演奏されず、来日公演前日に発表された、新作収録予定の新曲もなし。今のところは「グレイテスト・ヒッツ」選曲のようだ。

欠点の目立つ音楽面をカバーしたのは、やはりマンソンその人のキャラクターだった。
しょっちゅう平然とオーディエンスにケツを向ける下品ぶり。
トゥイギーにもたれたり抱きついたり、花道に連行したりと、オーバーにベタベタアピールする仲良しぶり。
ステージ花道そばの観客のタオルをたびたび拝借し、返す間際に「その汗アブサンでできてるぞ」とぬかしたり、「The Dope Show」を歌いながら謎の粉をオーディエンスの頭上に撒き散らすブラックユーモア。
ステージ中にビールを要求し、いざ日本人スタッフが持ってくるとすべて飲み干さずに吐き散らし、「アルコールを飲むな。ドラッグをやるな。セーフセックスを心掛けろ」とのたまうマイウェイぶり。そう言いながら背中に回した手で中指立ててみせるクソガキぶり。
スタッフがマイクとスタンドをセットしてあげたそばから、スタンドをぶん投げたりはっ倒したりする、迷惑なほどのオレ様ぶり。
最後には、星条旗タオルでケツを拭く「アメリカの悪役」ぶり。
マリリン・マンソンにどういう立ち振る舞いが期待されているのか、この人は把握しきっている。もともとステージ前のオーディエンスのボルテージは高めだが、こういうマンソンを見せられると、「そうそう、これを求めてたんだよ!!」とばかりに、余計に沸騰するのだろう。

今回のライヴにおいては、ミュージシャンとしてのマンソンの評価はやや低めかもしれない。しかし、妙な芸人精神といい、オーディエンスの心を掴む巧みさといい、エンターティナーとしては相変わらず優れている。そこからは、エンターテインメント精神に欠かせない、頭の回転の速さが窺える。
この知性があるから、何だかんだでどこまでもマンソンについていきたくなっちゃうんだろう。

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