2012年3月31日土曜日

マーダー・ライド・ショー

殺人屋敷へアドベンチャーに行こう。

マーダー・ライド・ショー('03年)
監督:ロブ・ゾンビ
出演:シド・ヘイグ、ビル・モーズリィ



ロブ・ゾンビ。実はベジタリアン。……って、名が体を表わしてないじゃん。
でも、音楽とアートワークを見れば、真性ホラーオタクって点で体を表わしていることは丸分かり。
映画にもなると、もういいってぐらいさらに表れまくっております。

ハロウィン前夜。たまたま田舎町を車で通りかかった若者たちが、たまたま怪しい見世物小屋に立ちよって伝説の殺人鬼ドクター・サタンの話を聞き、好奇心から車を走らせて、うっかり美人ヒッチハイカーを拾ったが最後。誰かに車をパンクさせられるわ、不気味な一家につきあわされるわ、しかも一家の正体が殺人鬼だわで、次々と殺されていく……って、どっかで見たような。
そう、話の大筋(特に導入)は、『悪魔のいけにえ』とほぼ同じ。ただし、色彩鮮やかな画面、カラリとした空気、ブラックユーモアは『悪魔のいけにえ2』に近い。狂気じみているのに、いつも明るくにぎやかで、ケンカするほど仲が良い殺人一家も、『いけにえ』のソーヤー一家と一緒。
レザーフェイスみたいな分かりやすい大型殺人鬼こそいないが(この一家の末っ子タイニーはマスク被った巨人だけど、あまり殺人に加担していない)、一番凶悪でマッドな芸術家肌の司令塔オーティス、セクシーで可愛くて残虐なベイビー(実は監督の嫁さん)、男好きっぽいママ、下品なグランパなど、個々の家族のキャラが立っている。ちなみに、ポスターやジャケットのトップを飾っているピエロ=キャプテン・スポールディングは、殺人鬼というより殺人ショーの案内人。
ゾンビ監督の『いけにえ』大好きパワーがよーくうかがえる設定だ。

このほか、スラッシャー映画でお約束の「犠牲者はチアリーダー」ネタもあり、警察はやって来ても役に立ってくれないネタもあり、しまいにはゾンビ(っぽいもの)、マッドサイエンティスト、ロボトミー、改造人間、死骸の山、儀式まで絡んでくる。ついでに、『ロッキー・ホラー・ショー』を彷彿とさせるやりとりも入っている。いろいろ詰め込み過ぎて、どこに向かいたいのかよく分からなくなりそうだが、その手の映画マニアにしてみればお腹いっぱいになれるフルコースだろう。カニバリズムは入ってないけど。

殺人と拷問が趣味、というよりもはや生活習慣の一家なので、それなりにサディスティックでエグいところはある。ただ、前述の通り比較的カラリとしているので、ゴア描写もさっくり、というかざっくり、あるいはばっさり、ぐっさり程度。そんなにドロドログシャグシャはしていないので、そこそこホラー慣れしている人なら余裕を持って観ていられそう。
犠牲者の若者たちも、大してカッコ良くも可愛くもなく、適度にウザったくと、あまり感情移入させない描かれ方で、監督の「死んでもあとくされなし」狙いがうかがえる。
『マーダー・ライド・ショー』という邦題の通り、この映画そのものがアトラクションなのだ。映画の前半、若者たちがキャプテン・スポールディングのホラーハウスで殺人鬼ツアーに行ったように、観ているこちらもイベント感覚で殺人一家の世界を巡る。そういう意味では、スポールディングは我々観客にとっての案内人でもあるようだ。

監督がもともとミュージシャンなだけあって、音楽の使い方は絶妙。ゾンビ作曲のいかがわしげなロックはもちろん、殺人シーンでコモドーズのファンクなんか流された日には、うっかり恐怖を忘れてカッコ良さが先走ってしまう。特に保安官殺しのシーンは、古風なポップスと計算されつくしたスローモーションのおかげで、凶悪なサイコのはずのオーティスがヒーローのようなオーラを発している。
ときおり挟まれる、あまり意味のないサイケデリックなイメージ映像も、ロブ・ゾンビのPVを彷彿させる。そこが少々くどくなることもあるのが難だが。

ホラー好きが、そのまた一部のホラー好きのために作ったような映画なので、ファンへの門は結構狭い。その狭いゲートをうまいことくぐってしまうと、監督とハイタッチした気分になれそうだ。
ただ、うっかり映画の中の若者よろしく「ロブ・ゾンビ最高!! ひゃっほー!!」なノリではしゃいでると、彼らとは違った意味でもう後戻りできなくなる……かもしれない。

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