2012年3月20日火曜日

コーンバグズ/Rest Home For Robots

「音楽はオレの人生だ!」(いや、ホントに。)

CORNBUGS
Rest Home For Robots('05)




俳優があまりにもインパクトの強い役を演じると、たいていそのイメージから脱却するのに苦労する。インパクトの強い悪役となるとなおさらである。一時期のゲイリー・オールドマンなんか、『レオン』のスタンフィールド刑事のイメージが強くて、色んなところでブチギレ系の悪役やってたもんなぁ。
そんな中……インパクトの強い悪役から、こんなに脱却する気のない人に出会ったのは初めてです。ビル・モーズリィ。

奴の名はチョップトップ。『悪魔のいけにえ2』で、ギャーギャーわめいたりケタケタ笑ったりしながら、人を殺したり追い詰めたりしていたサイコ男。
頭からむき出しになったプレート(ベトナム戦争で負傷した痕跡らしい)の周りの皮膚/肉を、炙ったハンガーでカリカリしながらつまみ食いする癖も猟奇的。
そのくせ、音楽好きだったり、ふざけすぎて長男に怒られてたり、ほかの兄弟同様グランパ大好きだったり、「やんちゃ」で済まされてしまいそうな可愛げまで持ち合わせている。(賛否というか、否のほうが多そうですが)
一応、『2』のラストで倒されてはいるものの、死んだかどうかは定かではない。死んだとみなされていたり、その後逮捕されて精神病院に幽閉されたという設定もあったが、未公開に終わっている。
そういうわけでホントの詳細は不明だが、とりあえず奴は生きていた。しかも、新しく仲間を作っていた。
そして……1999年にコーンバクズとしてCDデビューしていたのである。

いくら一部で人気キャラとはいえ、『2』から13年越しでチョップトップを表舞台に出したところで、大きな意味はない。ファンはもちろん喜ぶけど、それ以外で誰かが得するわけでもない。
おそらく、チョップトップを演じたビル・モーズリィ自身、チョップトップが大好きなのだろう。実際、ビルのオフィシャルサイト、マイスペース、ツイッターユーザー名はチョップトップ名義である。
なおかつ、ビルとタッグを組んだギタリスト、バケットヘッドも、チョップトップが好きだからこそこのプロジェクトを動かしたのだろう。バケットヘッドは、ケンタッキーのパーティーバーレル頭にのっけて白マスク被った正体不明ギタリストだから、チョップトップと一緒にいても違和感ないし。

本作は1999~2001年までの曲を集めてリマスターした盤。CDは現在だいぶ高値なので、ダウンロードのほうが入手しやすいようだ。
見た目はイロモノ/腕は技巧派なバケットヘッドのリフと、ピンチフェイスのドラムが音楽の基盤。このギターリフがいかにもカッコいいロックで、しかもキャッチー。シンプルにして妖しげなリフの「In A Gadda Da Vida」(Iron Butterfly!!)好きなチョップトップのレーダーにも引っ掛かりそう。
そこに、ビルが安っぽいホラー的な歌詞をがなりたてて乗っける。いかにもチョップトップがその場で楽しく適当に歌っちゃったようなノリで、相手がサイコ野郎ということを忘れて微笑ましくなってしまう。(実際、曲はほとんど即興でつくられていたらしい)
短いM6「Ed Gein」で、「エド・ゲイン(『悪魔のいけにえ』のモデルとされる殺人鬼)はよく俺と間違われるんだよ」とブラックジョークを飛ばし、気色悪くエヘヘヘヘと笑うところも、いかにもチョップトップ。
M8「Pigs Are People Too」では「弟ババ」(=レザーフェイス)に言及するところもあり、いけにえファンをニヤリとさせる。
お遊び色の強さがリスナーを選ぶところだが、そもそもボーカルが知る人ぞ知るチョップトップという時点で、どういったリスナーをターゲットにしているのかよく分かるので問題ないだろう。

『2』で「Music is my life!」という名言を残しているチョップトップ。曲を聴いたりレコード集めたりするのみならず、ミュージシャン活動までしてしまって、さぞかしはしゃいでいるに違いない。
その活躍はファンにとっても喜ばしいことだろう。「好きが高じてバンドデビュー」って、ちょっとした夢のシナリオだしね。

残念ながら、コーンバグズは2007年に解散。現在、ビルはスパイダー・マウンテンというユニットで音楽活動をしているが、チョップトップを名乗ってはいない。
ただし、上記したビル関連のWebページは相変わらずチョップトップ。そこはやっぱり譲らないらしい。今年か来年に公開される『Texas Chainsaw Massacre 3D』ではドレイトン・ソーヤー(オリジナルでいうところのコックの長男だが、まったく同じキャラクターかは不明)役だが、ファンにとっても自身にとっても、ビル・モーズリィは永遠のチョップトップなのだろう。

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