2012年12月13日木曜日

インビジブル

肉体脱いだら、モラルも脱げた。

インビジブル('00)
監督:ポール・ヴァーホーヴェン
出演:ケヴィン・ベーコン、エリザベス・シュー



①人間とは、血と臓物の詰まった肉袋である。
②人間とは、セックスとバイオレンスと嫌がらせが好きな肉袋である。
……といったところが、ポール・ヴァーホーヴェンの見解らしい。あれこれマジメに考えたら「いや、そればかりじゃないよ!」と反論したくなるところもあるだろうが、ヴァーホーヴェン級にばっちりとそこんところを描かれたのでは、「そうっすよね!!」と大いに納得したくなってしまう。あ、それを世間一般では「タチが悪い」というのか。

天才科学者のセバスチャン・ケインは、生物の透明化と復元という、国家の機密プロジェクトを担っていた。動物を用いての透明化と復元には成功したものの、より大きな名誉を追うセバスチャンは復元成功の事実を伏せ、自ら実験台となり人間の透明化と復元を試みる。
結果、透明化には成功し、セバスチャンは透明人間の状態を楽しむが、復元は動物実験と違い失敗に。しかも、研究チームの同僚たちによる復元化研究は遅々として進まない。元に戻ることができないセバスチャンは苛立ちを募らせ、ついには透明であることを悪用し犯罪に走り、憎悪を同僚たちに向ける。

透明人間といっても、すんなり身体が透き通ってくれるわけではない。薬を投与した血管から、皮膚、筋肉、臓器、骨格と順番に消える。もちろん、動物による復元実験のときには、血管から骨、臓器、筋肉、皮膚と逆に現れ、ゴリラの姿に。しかも、透明化にしろ復元化にしろ、人間にしろ動物にしろ、実験台の上でのた打ち回りながら姿を変えていくのだから、エグさ倍増。さすがヴァーホヴェン、一筋縄じゃいかない。
もちろん本当にエグいのは、透明になってからのセバスチャンの暴走劇だ。同僚女子へのセクハラに始まり、実験体の動物を殺し、不法侵入し放題、果てに向かいのアパートの女性に暴行、邪魔な人間は殺害……世界征服的な大それた陰謀を張り巡らすわけでもなく、半径数メートル以内の悪事で落ち着いてしまっているあたりが、妙に生々しい。人間から血と臓物と肉袋を取ったら、エロと暴力と意地悪しか残らないということか。セバスチャンのセリフを借りるなら、「見えない人間はモラルも透明になる」である。
かといって、肉袋をかぶっていればまだいいというわけでもない。研究チームの面々は、正直セバスチャンなしには大した成果は上げられず、またいざというとき役に立たないどころか、「それやっちゃったら死ぬだろ!」というダメな方向へ突っ走りがち。あまりのまどろっこしさにイラつかされることもしばしば。
そうなると、やっていることはゲス以外の何物でもない悪人のほうが、ダメな善人より魅力的に見えてしまうから不思議。悪人のほうが自信があって、堂々としていて(透明だもんね)、手際がいいからだろうか。あ、それを世間一般では「タチが悪い」というのか。

ところで、ケヴィン・ベーコンというと、一部の映画ファンの間では「脱ぎたがり」で知られている。『13日の金曜日』でセックス→殺されるのくだりでずっと全裸だったのをはじめ、『エコーズ』の上半身裸で全力穴掘り、『ワイルドシングス』の意味なしシャワー登場など。フィルモグラフィー通して脱ぐのが多いわけではないのに、いちいちインパクトが強いんでしょうね。
で、もちろん今回は透明人間なので、皮膚や肉まで脱ぎ捨て、しまいにはモラルも脱ぎ捨てる、ケヴィンのフィルモグラフィー史上でこれ以上はないほど全裸(これ以上あっても困るが)。本当に脱ぎたがり傾向にあるのなら、かなり満足がいく域なのでは。
透明化する直前、実験台の前で、近くにいるのが女性研究員2人(うち1人元カノ)にも関わらず全開になり、「歴史的な実験だ、目をそらすな」と言うシーンがある。マジメに深読みすると、ヴァーホーヴェン監督が人間のエグさを観客に突きつける前触れともとれるが……フマジメに深読みすると、ケヴィン・ベーコンの地じゃないだろうかと思えてしまうのだった。
……最後に何を語っているのだろう。

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