2012年12月7日金曜日

タイタンの戦い

「まぁ、神様だから」……で済むかボケェェェ!!! (by人間)

タイタンの戦い('10)
監督:ルイ・レテリエ
出演:サム・ワーシントン、リーアム・ニーソン



マイティ・ソー』でも触れたが、神話の世界の神様のおもな仕事は、人間に迷惑をかけること。家庭内不和とか痴話ゲンカとか、人間界では「自分とこでやれ! よそに迷惑をかけるな!!」と怒られること必至レベルのネタで。オーディンのしつけ不足と家族会議不足のせいで、兄貴は勘当され弟はグレはじめ結局兄弟大ゲンカに至り、そのとばっちりで勝手に故郷をバトルフィールドにされた人間はたまったもんじゃない。
しかしそれすら、こいつらに比べれば遥かにマシだったようで。

神々と人類が共存していた古代。神々は人間の信仰と愛を糧に永遠の命を得ていたが、やがて人間は神の傲慢に耐えかねて反旗を翻す。一方神々の王ゼウスも、報復として、兄である冥界の王ハデスを人間のもとへ送り込んだ。
そのハデスに家族を殺された漁師の息子、ペルセウス。彼は人間として育てられたが、実はゼウスと人間の女性との間に生まれた半神半人(デミゴッド)だった。家族の復讐のため、人間たちを守るために、ペルセウスはハデスと魔物クラーケンに戦いを挑む。

本作は、レイ・ハリーハウゼンによる1981年の特撮映画を、技術で迫力を盛りに盛りつけたリメイク作品とのこと(ちなみに自分はオリジナル未見)。
この手の映画でありがちな話だが、技術に労力を費やしたぶん、ストーリーはあっさり気味。打倒ハデス→手がかりゲット→進む→戦闘→アイテムゲット→さらに先へ進む……というRPGなノリが目立つ。本来はストーリーの中核にいて、ペルセウスとのロマンスがあるはずのアンドロメダも、隅に追いやられている。大して面識のないお姫様よりは、そばでちょくちょく助けてくれる守護半人(?)に心が……っていうほうが自然な流れだからか。
あと、鍛錬してもいないペルセウスがアルゴスの兵士よりも強いのは、「デミゴッドだから」ってことでいいのかな?

そう、作中一番あいまいなのが、ペルセウスの立ち位置。
デミゴッドながら「人間として戦う」と明言したはいいが、そこに固執するあまり死にかけたり味方を失ったりで、本当にヤバくなったところでようやく神の力(およびアイテム)を受け入れるという、どっちつかず状態。対戦相手は神とか怪物なんだから、もっと早い段階で受け入れろよと言いたくもなる。
人間としての誇りや強さの表れなら、どれだけ部下を失ってもペルセウスについてきた隊長・ドラコの存在(と、演じるマッツ・ミケルセンの漢っぷり)だけでも十分なので。

まぁ、神様襲来! 怪物襲来! 手に汗握るバトル!! 劇場によっては3D!!! というド迫力の絵面をみていると、制作する側の「オレはこれがやりたいんじゃぁぁぁ!!」精神は、どっちかというとこちらに費やされているようで。だったら、その大作映画の蓑を借りたボンクラスピリット、高値で買わないことにはねぇ。

それにしても、一連の大災害の原因となった神様兄弟のド外道っぷりときたら。ヒーローたるペルセウスよりも、むしろこちらに注目したくなってしまうほど。
初っ端から、兄ハデスを騙して冥界送りにするあたり、ナレーションで説明されるだけとはいえゼウス十分ヒドい。そりゃハデスも怒って権謀術数巡らすわ。
それに、信仰と愛が永遠の命の糧といいながら、求愛を拒んだ女に呪いをかけるってどんだけワガママですか。「私は人間を愛しているので、反乱主導者のアクリシウス王のみ罰します」(意訳)といったところで、その手段が「嫁を寝取る」という地味にイヤな仕打ち。そりゃ人間もキレますって。
そのくせ、愛人の子であろうと息子には甘く、ちょいちょい剣やら金貨やらしまいには伴侶(この展開にはいろいろ解せないものがあるが)やらのプレゼント攻撃。しかし、息子は貰うものは貰うけど結局お父さんには構ってあげず。正直、このダメ親父(注:神です)ならそうなっても当然のような。

弟が弟なら兄も兄。ゼウスの神像を破壊したアルゴス兵をめった殺しにするのもヒドいが、ついでに無関係だった漁師一家まで殺していくって、アバウトにも程がある。
さらに、ペルセウスが自分の計略の妨げになると知るや、ゼウスの稲妻に焼かれ異形の者と化したカリボス(かつてのアクリシウス王)を差し向ける。「私まだ力蓄えきれてないから。一応パワーあげるから私の代わりに使っといて」(意訳)って、カリボスも隠遁生活だしそこそこ老体だろうに、どんだけ人使いが荒いのか。

一番ダメなことには、ポセイドンやらアポロンやらオリンポス十二神もいながら、誰一人このド外道ブラザーズを止められていないこと。そんな状態だから、他の神様のシーンばっさりカットされちゃうんですよ!! (Blu-ray特典の未公開映像参照)

それぞれ「私はリーアム・ニーソン(還暦迎えてますます凶暴)だ」「私はレイフ・ファインズ(またの名をヴォルデモート)だ」という強力免罪符をお持ちのゼウスとハデス。ある意味ではがっちり信者も押さえているので、目下最強の神様ではないかと。
ある意味対抗馬を挙げるとしたら、洗脳・殺人・破壊行為の数々までやっておきながら、終わってみればヒーローたちに負けず劣らずかそれ以上の人気票を獲得してしまった『アベンジャーズ』のロキ?

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