2013年5月10日金曜日

007/ゴールデンアイ

007/006、諜報部員やめるってよ。

007/ゴールデンアイ('95)
監督:マーティン・キャンベル
出演:ピアース・ブロスナン、ショーン・ビーン



自分の007童貞卒業の一本がコレになったのは、イトコが懐かしのニンテンドー64『ゴールデンアイ』を持っていて、バトルモードで対戦させてもらっていたからである。
ボンドはいつもイトコが選択するので、私は「じゃあこん中だとショーン・ビーンが好きだから」という理由でたいがいアレック・トレヴェルヤンで戦った。
そんなショーンの思い出込みで観賞したのに……まさかこういうことになろうとは。

冷戦時代、旧ソ連の基地に潜入したボンド。ボンドは任務を果たし脱出したが、同じ任務に携わっていた、旧友でもある006ことアレックはウルモフ将軍に殺された。
それから9年後、テスト飛行中だったタイガーヘリが強奪され、さらに間もなくロシアの宇宙兵器管理センターから衛星レーザー兵器「ゴールデンアイ」が奪われる事件が発生。調査に携わったボンドは、事件の背後に犯罪シンジケート「ヤヌス」が絡んでおり、ウルモフ将軍もヤヌスと関わりがあることを知る。
しかし、ヤヌスの本拠地で、ボンドは思わぬ真実を目にすることに。

個人的リアルタイムボンドがブロスナンなので、ボンド映画の基準線がなんとなくピアボン(ピアース・ブロスナンのボンドの意)シリーズに落ち着いている自分の目線。しかし、後々ほかのボンド作品(ダニエル・ボンドシリーズを除く)と比べてみると、本作はずいぶんスパイガジェットがおとなしいほうである。
ボンドカーも一応出てくるけど、どんな機能が搭載されていたかまでは分からないまま、友達に貸しちゃってましたね。機能を知らずにボンドカーに乗るって、何の気なしにミサイル発射ボタンを押しちゃいそうで結構な恐怖だと思うけど。

ガジェットが地味な代わりに、ダムの淵から垂直落下やら、バイクで断崖絶壁ジャンプからのヘリ飛び移りやら、市街地を戦車で破壊やら、アクションシーンはやたらと派手にやらかしている。そのわりに意外と緊張感がないが、これは監督の作風によるところが大きいのではないかと。
ボンドが乗った移動手段は列車だろうと車だろうと破壊される……というネタ扱いにまでなっている。ボンドガールのナターリア(イザベラ・スコルプコ)いわく「何か因縁でもあるの?」と。

ちなみに、戦車による街破壊のシーンで、フランス産炭酸水ペリエのトラックをイギリス人ボンドがぶち破るあたり、モンティ・パイソンの時代から脈々と続くイギリスのフランス嫌いネタのようだ。

ボンドガール勢に「強いプロフェッショナル」色がいっそう濃くなったのは、ピアボン時代=90年代に入ったころからである。
その代表格が、初めて女性でボンドの上司Mになったジュディ・デンチ。貫禄あるデイムの前では、ボンドさえ「あなたは男性優位の時代を象徴する太古の生き残りよ」とバッサリ。
歴代の中で一番ボンドに冷たい3代目マニーペニー(サマンサ・ボンド)からも、言動について「それってセクシュアル・ハラスメントよ」と釘を刺されるのだった。

ただ、秘書からチクリ上司からグサリと言われつつも懲りたそぶりを見せず、またそんな姿に嫌味がなく、一方でときにボンドガールにも容赦のないピアボンは、この時代のボンドにちょうど良かったんじゃなかろうか。
ナターリアに「(PCハッキングは自分がやるから)さっさと逃げ道を探しなさい!」と怒られ、一瞬目を丸くしながらも「イエス・サー」と冗談めかして答える姿が好感高い。

ピアボン時代の幕開けにして、歴代ボンドガール最強クラスの1人となったのが、ヤヌスの殺し屋ゼニア・オナトップ極私的ボンドガールベスト第1位でもある。
女殺し屋キャラはそれこそコネリー・ボンドの時代からいたが、オナトップがその中でもずば抜けているのは、殺人やバトルで性的興奮をかきたてられる変態的嗜好によるところが大きい。宇宙局の職員たちを射殺しながらエクスタシーの溜め息をもらし、ボンドの反撃に遭ってもなお楽しそう。
あと、ゼニア・オナトップという名前は "Then you are on a top" をもじった婉曲的エロネタだと、Twitterで町山智浩さんに教えてもらいました。

何より一番重要なのは、必殺太もも胴締めチョークスリーパー! オナトップのエロさとインパクトの強さの真骨頂はここにあるといっても過言ではない。映画秘宝のボンドガール総選挙でも、「自分も太ももで締められたいです」って投票者コメント多かったもんなぁ。
おかげで、自分の脳内では『ゴールデンアイ』=太もも締め映画ってイメージになっちゃったのである。

そう、問題はそれ。映画の印象の多くをオナトップ(の太もも締め)が持っていってしまったため、好きな俳優に名前を挙げているにもかかわらず、ショーン・ビーンの印象が薄まってしまったのである。
ボンドのかつての仲間にして旧友、それでいて出自にまつわるイギリスへの密かな憎しみを抱えているというおいしい設定なのに、あるいは体格の均整がとれているから潜入/戦闘時の黒服がとても似合うというのに、殺し屋とPCオタクくんの影に隠れてしまうとは……。
同じ元諜報部員ヴィランのハビエル・バルデム(『007 スカイフォール』)のインパクトと比べると、なおのこと薄ら哀しい。

もっとも、そういうところも定番のショーンらしくって、どうしてもえこひいきしてしまうのですが。おかげでアレック・トレヴェルヤンは、極私的ボンドヴィランベストにて堂々の6位入りをはたしました。
あと、せめてもうちょっとショーンを目立たせようと、勝手に邦題つけました。(記事タイトル参照)

最後に、本作のタイトルシークエンス動画を添付しておきます。女と拳銃といういかにもなシルエットを配しておきつつ、落ちていくハンマーと鎌、壊れたスターリン像など、スパイ映画と冷戦時代の間柄の終わりを表明するところがなかなか。ティナ・ターナーの主題歌も、個人的には好みです。


0 件のコメント:

コメントを投稿