2013年5月27日月曜日

2001人の狂宴

ロバート・イングランド主催:北から来る奴ぁバーベキュー祭り!! 

2001人の狂宴('05)
監督:ティム・サリヴァン
出演:ロバート・イングランド、リン・シェイ



アメリカには行ったことなくて映像&文献情報でしかないんだけど、マリリン・マンソンTシャツ着て歩いてただけで逮捕って。
高校でマンソンTシャツ着用禁止令って。
マンソンファンってだけで悪魔崇拝者や殺人犯扱いって……。自分はもうこのエピソードを聞いた時点で、アメリカ南部に行きたい気がしない。
しかも、下手に迂回路を進んだりしたら死んじゃうもんなぁ。……さすがにこれは実録じゃないけどね。いくらいまだに南軍の旗を掲げるとか、アングロサクソン以外の人種に冷たいところがあるとしても、今後もこのエピソードは実録にならないでね。

ハーシェル・ゴードン・ルイス監督作『2000人の狂人』のリメイクである本作。北部から来た若者たちがプレザントヴァレーという南部の田舎町に迷い込み、150年祭の特別ゲストとして歓待され、実は南北戦争で殺された人々の亡霊であるにこやかマッドな町民の皆さんにメッタ殺される。

……という大筋はもちろん変わらないが、オリジナルから40何年の時を経て、近年仕様に変化したところも多い。
オリジナルでは、犠牲になるのは罪のないごく普通の人々だったが、今回は若さとバカさと「休みだ! ナンパだ! セックスだ!!」というギラギラに溢れた、伝統的死んでよし要員に変更。
また、祭りのメインは「北部人を殺す楽しみを町民みんなで分かち合うこと」だったのが、「北部人のお肉をみんなで食べること」にシフト。だから、殺すときは別にギャラリーがいなくてもかまわない。
1964年作のオリジナルを現代に沿わせたら、ド田舎にてバカな若者を凝った手段で大量殺戮(セックスとエロトラップに引っかかったらアウト)という古典的スプラッターホラーになったというのも不思議な話だが。

しかし、凝った血祭りの割に「あれ? それもう死んでるの? それでいいの??」と問いたくなるあっさりな死に様まで受け継いでいるのはちょっと物足りない。
そりゃ被害者8人に本編88分ではサクサク(ザクザク)片付けないと間に合わないだろうけど、ある程度慣れたスプラッターもの好きにはちょいと消化不良かもしれない。
どちらかというと、バイセクシャルの男をケツから串刺しとか、黒人が綿プレス機で圧死というちょいインモラルな描写のほうがヤバいといえそう。

撮影裏話を知ると、ダミー人形を使ったゴアシーンとか、キャスティングの大雑把さとか(特にチャイナガールはどう見てもストレートな中国系じゃない)、ルイス映画に負けず劣らずのワンパク性だらけなんだけどな。
なお、この微妙な空気は、イギリス版『2000人の狂人』を意識したと思われる『インブレッド』にも受け継がれている。

あと、カラリと能天気な雰囲気が逆に不気味だった「ヒーーーハーーーー!!」ソングのインパクトが薄いのも残念。せっかくロックアレンジ(別名ロブ・ゾンビバージョン)までしてるのに。

実は、見どころは血しぶきよりも、キャラクターアクター祭りなのである。何せ、町長さんがエルム街の悪夢』のフレディことロバート・イングランドですよ。フレディに劣らぬハイテンションで、胡散臭いんだけどたまらなくチャーミングで、南軍国旗アイパッチも可愛らしいロバートさんのほとんど独壇場ですよ。
もうどんだけ犠牲が出ようと雑だろうと、ロバートさんが楽しそうならそれで良し! みたいなノリさえありますよ。

リン・シェイ演じるグラニー・ブーンも、にこやかな世話焼きおばあちゃんから狂気がにじみ出て、ロバートさんに並ぶくらいの大怪演。一番オリジナルの町民の怖さを受け継いでいるのはこのお方かもしれない。
ジュゼッペ・アンドリュース演じるハーパーは、ヘリウムが残ってそうな声といい粘着度の高い笑顔といい、色男のはずなのに不気味が先行しているのだが、このズレズレ感が気持ち悪くて気持ちいいから不思議。

キャラ立ちはちょい役に至るまで活きている。
本編への前フリとして南北戦争の歴史を説く大学教授は、映画界のMr.胡散臭い奴ことピーター・ストーメア! 
本編とほとんど関係ないアルマジロぶん投げヒッチハイカーに、本作のプロデューサーでもあるイーライ・ロス! アルマジロ死骸+ヒッチハイカーって絶対それ『悪魔のいけにえ』意識しただろ! 
同じく本編にほとんど関係ない、ただ怪しいだけのガソリンスタンドのおっちゃんを演じるトラヴィス・トリット(本職はカントリーシンガー)も良い味出してる。
そして、町民の1人としてサラリと出ているのが『13日の金曜日』シリーズ後期のジェイソンことケイン・ホッダー!! しかも、エンドクレジットをよく見ると、役名が「ジェイソン」。こんなところでフレディとジェイソンの迎合があったとは……。

ゴアよりもキャラが先に立つってのは、ホラーとしてはどうなのかというツッコミもあるけれど、ロバートさんをキャスティングした時点でこうなるのは目に見えてるはずですよ。

ちなみに、リメイクのどさくさにまぎれて狂人が1人増えていたりするが、オリジナルでは2000人と謳っていた町民たちが20~30人だったのが、2001人と謳いつつ30~40人(ときどきCGで割増し)になった程度なので、そこんとこは大差ありません。
それぐらいの人数なら、バーベキューのメインディッシュもみんなに行き渡るだろうしね。

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