2013年9月4日水曜日

パシフィック・リム

環太平洋イェーガー愚連隊。

パシフィック・リム('13)
監督:ギレルモ・デル・トロ
出演:チャーリー・ハナム、菊池凜子



2012年末、この映画のティーザー・トレーラーを観たときには、そのビジュアルに「おおお!!??」となった。
2013年に入って正式な予告編が公開されると、さらに期待値は上がり「うおぉぉぉぉ!!!!」となった。
そして8月9日、ついに映画が公開されるとこうなった。
「エルボーロケットォォォォォォォォ!!!!!!!!!!」

太平洋海底の裂け目から出現した怪獣(KAIJU)vs環太平洋各国が開発した巨大ロボ・イェーガー!! ……というのが映画の主軸にして、最大重要事項である。
戦いに赴く人間たちのドラマも、親子関係やら失った仲間やら実は結構あるが、必要最小限に抑えられている。人間同士のつながりが一番活きるのは、2人のパイロットの脳をシンクロさせてイェーガーを操縦する「ドリフト」だ。
特撮怪獣映画やロボットファン必見! というような書かれ方もしているが、自分のようにゴジラもロボットものも申し訳程度にしか見たことない人でも、いちいち心が熱くなるショットが満載。冒頭だけでも、アックスヘッドのゴールデンゲートブリッジ襲撃、ジプシー・デンジャー起動、漁船の前にナイフヘッドが現れ、船長が「KAIJUだ……!」とつぶやくなど、1つ1つのシーンに心臓をつかまれっぱなし。海からの怪獣出現シーンが、音楽といい怪獣の咆哮といいどう見てもゴジラっぽいのも熱いところ。監督にその意図があったかどうかは分からないが、悪名高きエメリッヒ版ゴジラ(別名:ゴジラじゃないゴジラ)に近い展開やショットもあり、エメゴジはそんなに好きでもないのになぜか嬉しくなる。
各イェーガーのデザインが無骨で重々しいのもポイント高い。『アイアン・スカイ』といい、金属むき出しでやたら重厚でガシャンガキンゴゴゴゴと動くマシーンの類は、どうしてオタクスピリットに火をつけるんでしょうね。もちろんそれだけじゃなく、ヒーローロボのジプシー・デンジャーはスマートさと丸っこさを程よく、ライバルロボのストライカー・エウレカはシャープにと個性もある。
ここまで観客を熱くするのは、ひとえにデル・トロ監督の「こんな絵が観たかったんだ!! これがやりたかったんだ!!!」という、海底の裂け目よりも深い怪獣映画愛が背後にあるからにちがいない。

イェーガーはミサイルやプラズマ砲などの兵器を搭載しているが、基本戦闘は殴ったり投げたり羽交い絞めにしたりというプロレススタイル。そういえば、初期ウルトラマンも、スペシウム光線以外は怪獣とは基本殴り合い勝負だったような。
思いっきり冷めた観点からみれば「なんでわざわざタイマンで行くんだよ」とツッコミたくもなるのかもしれないが、それに対しては「その方がアツいから!!!」としか答えられない。イェーガーのデザインと同じく、怪獣の顔面に全力パンチ(エルボーロケット!!)かますとか、取っ組み合いながら至近距離でプラズマ撃つとか、無骨なバトルほど燃えてくるのだ。
香港でのジプシー・デンジャーvsオオタチ&レザーバック戦に至っては、ジプシーの戦闘スタイルがまるで昔の映画のヤンキー。レザーバックの顔面を殴る両手のコンテナはカイザーナックル、オオタチをぶん殴るタンカーはバット(釘が打ちつけてありそう)、とどめの新兵器チェーンソードはバタフライナイフ……と当てはめられ、ちょっと『岸和田少年愚連隊』を観ている気にすらなってしまう。
欲をいえば、この直前の戦いでもっとクリムゾン・タイフーンとチェルノ・アルファの活躍を見たかったものだ。せっかく面白い必殺技持ってるんだから。

人間ドラマは最小限に抑えられているとはいえ、主だった人間たちのキャラクターは非常に濃くて面白い。これもデル・トロ監督が愛情をぎゅうぎゅうに詰めたおかげかなぁと。リミッターを外せば全キャラクターについて語れそうなところだが、長すぎるのも難だしネタバレにもつながるのでさすがに割愛。
日本人としては、森マコこと菊池凜子の活躍がどうしても嬉しいもので。ステレオタイプすぎずアニメ系すぎず、ヘタに主人公・ローリーとの恋愛が絡まず、当然変に浮きもせず、安心して見られるカッコいい日本人。日本語パートになまりがあるのはどうしてかという疑問もあるけど。
ペントコストはセリフが一番大仰なのだが、ロボットものアニメに出てくる厳しくも優しい司令官を実写に起こしたようで、何を聞いてもカッコよく思えてしまう。「世界が滅びるとき、お前はどこにいる? ここか、イェーガーの中か?」は、ぜひ2013年映画を代表する名言にしたい。
管制官は、名前がテンドー・チョイだし演者がクリフトン・コリンズ・Jr.だし国籍不詳にもほどがあるが、指令センターであくせくしてる蝶ネクタイしめた博士キャラというのは、なぜか不思議と懐かしさがある。そんなイメージに親しんだ覚えもないはずだというのに。
そして、デル・トロ映画といえばロン・パールマン。あんな下品な金歯と金の靴が似合う人はそうそういない。怪獣危機の世界であんなにうまいこと悠々サバイバルしていけるあたり、さすがヘルボーイです。

そんな面子の中、意外にもインパクトトップクラスとなったのが、怪獣の出現頻度と生態を研究するニュートとゴットリーブの学者2人。論理派と情熱派/潔癖とグチャドロ(怪獣の内臓ほっぽらかし)という絵に描いたような凸凹コンビ→いちいち対立→でも最後は力を合わせるというベタベタなキャラ方向が、オタク監督に愛情持って作られたせいか妙に斬新に見えてしまう。ニュートの「メガネメガネ」(まさか海外作で見られるとは……)や、映画史上最適ポジションにある便器など、お笑いパートも担っているのだが、これまたうるさかったりウザったかったりしすぎず、良い感じのスパイス。個人的には、ゴットリーブが握手返し下手な理由が、直後のとあるショットから推測できるという見せ方が好きだ。
ちなみに、重度の怪獣オタクという設定のニュート、見た目はJ.J.エイブラハムス似でもどう考えてもデル・トロ監督自身ですよね? 

久しく日本で作られていない「怪獣映画」というジャンルが、まさかのメキシコ発の日本映画ラブレターとして帰ってきた本作。監督の熱いスピリットを受け止めるためにも、DVDより劇場で、2Dより3Dで、3DよりIMAXで、さらに願わくば4DXで、とにかくでっかいスケールで体感するべき映画だろう。

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