2014年3月2日日曜日

未体験ゾーンの映画たち2014に寄せて

スクリーン上の出会いに意義がある。

未体験ゾーンの映画たち2014
ヒューマントラストシネマ渋谷 2014.01.18.~2014.03.07.


何はともあれ、まず、こうした作品の数々との出会いを作ってくれた、この企画に感謝します。ありがとうございます。

それにしても、映画を劇場公開するというのは、かくも難しいことか。ベネディクト・カンバーバッチ、マシュー・マコノヒーといった今人気の俳優や、ポール・ヴァーホーヴェン、ヴィンチェンゾ・ナタリといった通受けする監督の名前をもってしても、作品がDVDスルーの危機に追いやられるとは。

確かに、ここで上映されている映画は、小粒の良作かボンクラ系の、いわばミニシアター系である。うまくいけばロングランになるかもしれないが、『アメリ』や『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』の成功が予測不能だったように、何が当たりになるか分からない。俳優や監督のネームバリューすら成功の当てにならないだろう。ましてや、これまでそうした作品を上映してきたミニシアターが、次々閉館しているご時世である。簡単に公開しますというのも、映画館にとって厳しいだろう。

そんなご時世だからこそ、なおさらこの企画はありがたい。
私個人の感覚だが、DVDでレンタル/購入した映画や、専門チャンネルから録画した映画は、どれほど気になっている一本であろうと、観賞を先伸ばしにしがちになる。下手をするとそのまましばらく存在を忘れている。良作だろうとボンクラだろうと、せっかくの作品が未体験のままに終わってしまう可能性があるのだ

劇場公開には期限がある。その分、終わる前に観に行く意欲が沸く。ついでに、上映作品がボンクラ系であるなら、同じスクリーンにいる観客の皆さんが、勝手ながら友だちに思えてくる。
作品の体験だけじゃなく、作品を上映する空間も体験させてくれる。そんなゾーンが今後も継続してくれること、増えてくれることを、心より祈っています。

ちなみに……

未体験ゾーンの映画たち2014極私的ベスト

1位 ポール・ヴァーホーヴェン トリック
悪人と言い切れない程度にヤな奴だらけの、まさかのヴァーホーヴェン流ホームコメディ。

2位 チェインド
殺人鬼と、殺人鬼に飼い育てられた少年との、あまりにも奇妙な疑似親子関係。ジェニファー・リンチは間違いなくお父さん(デヴィッド・リンチ)の変態性を受け継いでいる。ただしお父さんの『ツイン・ピークス』や『イレイサーヘッド』ほど浮世離れしてはいないから、地に足のついた変態ね。

3位 アタック・オブ・ザ・50フィート・チアリーダー
タイトルそのままど直球。でもコーマン先生は「セクシーなチアリーダーが巨大化」と聞いてお客が観たがるものを掌握してらっしゃるので、出オチには終わりません。

4位 MUD
5位 ザ・ドア 交差する世界
6位 ミスティック・アイズ
7位 テーター・シティ 爆・殺・都・市
8位 スキンウォーカー・プロジェクト
9位 ハウンター
10位 アダム・チャップリン

最後に、唯一未体験ゾーンを飛び出し、バウスシアター(残念ながら今年5月末に閉館……)で公開が決定した『MUD』に、おめでとうを言わせてください。上位3作を占めた私の好みはボンクラと変態ですが、最も普遍的に優れた作品はこれだと思います。

映画本編だけでなく、スタッフさんの作品レコメンドにも秀作の数々が見受けられました。
こちら↓は『最強ゾンビ・ハンター』のレコメンド。

こちら↓は『フィンランド式残酷ショッピング・ツアー』の。
「食人は文化だ」……

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