2015年2月11日水曜日

死霊のしたたり

変質者頂上決戦、遺体置き場にて開催中。

死霊のしたたり('85)
監督:スチュアート・ゴードン
出演:ジェフリー・コムズ、バーバラ・クランプトン



私個人が『死霊のしたたり』なるタイトルを初めて聞いたのは、実は『アメリカン・ビューティー』を観ていたとき。ケヴィン・スペイシーがお隣さんのウェス・ベントリーからドラッグを買うときの暗号が「『死霊のしたたり』貸して」。当時はそれが実在の映画とは知らず、『死霊のはらわた』をパクった架空タイトルかと思っていた。
それから10数年後、本作は実在し、タイトル……というか邦題がパクりっぽいのは、当時悪魔の何たらとか死霊の何たらという邦題が氾濫していたからなのだと学習。というわけで、唯一本当にパクりっぽいのは、『サイコ』オマージュってレベルじゃないでしょ! なメインテーマなのでした。

↓でもハマっちゃうとクセになるんだ。
『死霊のしたたり』のテーマ。


スイスの医科大学にて、脳科学の権威であるグルーバー教授が狂ったように暴れて死亡する事件が起きる。博士と同じ部屋にいた助手のハーバート・ウェストは、博士を死なせたのかと問いただされたのに対し「生き返らせたのだ」と答える。
その後、ウェストはミスカトニック大学に医学生として編入する。出席早々、大学の脳研究者ヒル教授の理論に真っ向から食ってかかる傍ら、優秀な学生ダン・ケインの同居人となって地下で自身の研究を進める。その研究とは、ウェスト作の蘇生薬を死体の脳に注射することで、生き返らせることができるというものだった。かくして、ケイン、ケインの恋人メグ、メグの父で学長のアラン、そしてヒル教授を巻き込んだウェストの一大実験が始まる。

『バタリアン』のタールマンみたいなゾンビがぬーっとやってきそうな邦題だが、実態はドロドロな感じはみじんもなく、人を投げたりシメたりどついたりするタフでアグレッシブなゾンビ。人を噛んだり感染したりもなし。そしてしまいには、ある意味でもっとレベルの高いゾンビも現れる。かつては『ZOMBIO/死霊のしたたり』という邦題だったようだが、「ZOMBIO」のほうが話の内容に近い邦題なんじゃないでしょうかね?
原作はH.P.ラヴクラフトの『死体蘇生人ハーバート・ウェスト』とのことだが、ラヴクラフト読者とはいえない私からしてみても、「ラヴクラフトそんなに下世話じゃないでしょ……」と思うぐらい別モノ。
ハーバート・ウェストというマッドサイエンティストが死体蘇生に情熱注ぐってところぐらいしか共通してない。しかし、下世話エンターテインメントと化した本作は、ラヴクラフト臭の薄さなぞ関係ないぐらいパワフルだった。
ウェストの蘇生薬は死体を蘇らせることはできるが、知性までは蘇らないうえになぜかやたらめったら凶暴化するので、一度蘇生薬を試すと死体が猫だろうと人間だろうと、飛びつかれたりぶっ飛ばされたり、棚は倒れ器具は壊れ、その場が荒れに荒れまくる。ホラーの域を思いっきりはみ出して、もはやドタバタコメディーの域である。こういう物理的にアブない状況に陥ると、さりげなくケインの陰に隠れようとするウェスト君が密かな見どころ。
ラストは遺体置き場で複数の死体と内臓も露わに一大バトルが繰り広げられるし、ブライアン・ユズナ&スチュアート・ゴードン作品のエロ担当と言ってもいいバーバラ・クランプトンは思いっきり脱いでくれるし、エログロの面白さのツボはきっちり押さえてくれている嬉しい一本なのである。

本作……というより3まで続いた本シリーズ最大の魅力は、ハーバート・ウェストのキャラクターと、それにピタリとハマったジェフリー・コムズの怪演。原作のウェストとは小柄という点以外共通項がないコムズだが、一度目にしてしまうとどう見てもウェストに思えてしまうから不思議。蘇生実験に没頭するときはもとより、常日ごろから真っ直ぐにフロム・ビヨンドを見つめてそうな目つきは、どう見ても関わったらイカン人に他ならない。それにも拘わらず、1~2作目ではケイン、3作目でも新人医師ハワードを乗り気にさせて研究を手伝わせてしまうのだから、実は天性の人たらしの才があるのではないか。もちろん観客からの好感度も高いし。はっきり言ってマッドサイエンティストなのに。実験中にうっかり死人が出れば「新鮮な被検体だ!」と死を悼む間もなく蘇生液を注射し、衝動的に殺しをやれば死体の始末云々より「首と胴が別々でも生き返るのかな?」と実験開始するぐらいトンじゃってるのに。
そのウェストの天敵にして、彼に並ぶマッド……というよりは変態サイエンティストなのがヒル教授。物腰穏やかな顔して、ウェストの研究を横取りしようと脅しにかかる腹黒さ……までの段階では、あっさりウェストに返り討ちにされ、首と胴が分かれた状態で死んでしまう程度。しかし、この状態のヒル教授に、ウェストが興味本位で蘇生薬を投与したのが功を奏し(?)、ウェストを気絶させて研究材料一式を分捕り形勢逆転。そうして何をするかと思えば、自分を殺したウェストへの復讐でも、自身の研究の発展でもなく、長年ストーカー的に思いを寄せてきたメグへの堂々たるセクハラという、最も矮小にして最もゲスい欲望の充足。人間、モラルや社会の目がどうでもよくなると手近なエロと暴力に走るということは、『インビジブル』でポール・ヴァーホーヴェン先生も提示していましたね。ウェスト君とはまた異なった、生首ヒル教授の変に生々しい(けど笑える)欲望は、そのド外道性で観る者を魅了した。
さて、この若きマッドサイエンティストvs熟年変態の決戦のゆくえ、そして不幸にも巻き込まれた皆さんの運命やいかに……? と勿体つけたわりには、次回いろいろ辻褄の合わないキャスト続投もあったりするのはご愛嬌ですよ。

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