2015年4月29日水曜日

Repo! The Genetic Opera

歌って踊ってザックザク(刺殺音)。

Repo! The Genetic Opera('08)
監督:ダーレン・リン・バウズマン
出演:アレクサ・ヴェガ、アンソニー・スチュアート・ヘッド



スラッシャー映画とミュージカル。ヘンな組み合わせに思えるかもしれないが、ある種の人間には大変にテンションの上がる最強コンボである。問題は、一般的に需要が限られていることと、「ある種の人間」というのが自分の周辺で自分しか心当たりがないことだが。

2056年、世界規模で発生した内臓の疫病の蔓延で、人類の多くは死滅していた。ジーン・コーポレーションが開発した臓器移植という対抗策が生まれてからは、病は脅威ではなくなり、整形手術ですらファッション感覚で受けられる時代になっていた。ただし、臓器移植にかかる医療費はローン制であり、返済が滞った移植者は臓器を強制的に没収=殺害される。その殺人を請け負う人間こそ、ジーン社に所属する合法的暗殺者「レポマン」だった。
政府並みの力を持つジーン社だが、社長の座に就くロッティ・ラルゴには死が迫っていた。ラルゴ家の後継者は、短気ですぐ周りの人間をザクザク殺してしまう長男ルイージ、美容整形手術中毒の長女アンバー、女の顔の皮膚をマスク代わりに被るのが趣味の次男パヴィ。当然ロッティはバカでサイコな我が子らに会社を継がせるつもりはなかった。
ジーン社が牛耳る街には、シャイロという17歳の少女が住んでいた。極めてまれな血液の難病を抱える彼女は、家から一歩も出ることを許されずに生きてきて、孤独と苛立ちを密かに募らせていた。父ネイサンは、亡き妻の忘れ形見であるシャイロを大切にしていたが、そんな我が子にも打ち明けられない秘密を抱えていた。妻の死の本当の原因は、自分の作った治療薬であったこと。そして、ジーン社のもとでレポマンとして債務者の臓器を回収していること……
シャイロとネイサン親子、ラルゴ一家の運命は、ジーン社主催のステージ「ジェネティック・オペラ」の夜に交錯していく。

『SAW2~4』のダーレン・リン・バウズマンの監督作……ということよりも、元X-JAPANのYOSHIKIがサントラのプロデューサーを務め、サラ・ブライトマンとパリス・ヒルトンが出演しているということが日本では宣伝になったらしい。劇場公開はされたのに、その後権利関係の問題なのか、ソフト発売はされていない。確かに観る人を非常に選ぶ作品ではあるけれど、日本盤が出ないのはやはりもったいない(輸入盤での購入は可能だが)。
ダーレン・スミス&テレンス・ズダニッチが手掛けるロックミュージックに、血しぶきと内臓溢れる古典的スプラッター色、それに手術台や車椅子などからうかがえる『SAW』風味がなぜか相性抜群。さながら、スタイリッシュとグロテスクを増長させた『ロッキー・ホラー・ショー』となった。実際、ロッキー・ホラーの流れをくむカルトミュージカルになることは間違いないと思われる。一緒に歌ったり合いの手入れたりする「観客参加型」で観賞しても面白いだろうしね(日本国内で出来るもんならなぁ!!!!)
個人的には、ジグソウ作のヤな死に様量産装置がガチで痛覚神経に訴えてくる『SAW』シリーズより、内臓引きずり出しながらノリノリで歌ってる本作のほうが見やすくていいですね(それはそれでどうよという意見も一般には多いでしょうが)。

もう一つ『ロッキー・ホラー・ショー』との類似点であり、またこの後のバウズマン&ズダニッチ作ミュージカル『The Devil's Carnival』にも通ずる点が、濃いキャラクター祭りである。
一番曲者ぞろいなのがジーン社のメンバー。ボスのロッティ=マフィアのボスといえばこのお方のポール・ソルヴィーノを筆頭に、チョップトップことビル・モーズリィ&スキニー・パピーのニヴェック・オーガがバカ兄弟、バカ姉貴に至ってはパリス・ヒルトンだ。特にパリスは、我がままで金遣いが荒くて、女王様のような恰好で闇マーケットにクスリ(一応整形手術用の鎮痛剤なのだが依存性が高い)を買いに来るという堕落令嬢。現実のパリスの素行を顧みるに、禁句だろうが「それ演技じゃなくて地じゃないですか……?」とツッコミたくもなる。
パリスのほかに出演が宣伝になったサラ・ブライトマンは、視力と引き換えに未来永劫ジーン社に尽くさねばならなくなったオペラ歌手ブラインド・マグ。歌はもちろんのこと、作中随一の良心としても一際光っている。また、物語の語り部的な役割である墓泥棒を演じているのは、スコア担当のテレンス・ズダニッチ。低い歌声が大変魅力的です。ちなみにもう一人のスコア担当ダーレン・スミスは、ジェネティック・オペラのぶっ飛んだバンドマスターです。
こうも濃いキャラだらけだと主役級がかすむのではという危惧もあるのだが、本作はむしろシャイロ役アレクサ・ヴェガのピュアさと芯の強さが際立つようになっているので安心。歌もイイし。なお、ネイサン=レポマンのアンソニー・スチュアート・ヘッドは、実は舞台版『ロッキー・ホラー・ショー』でフランクをやったこともあるらしい。確かにあの声はフランクに似合うなぁ。それも観てみたいよ。

予告編。この時点で「カルト・クラシック」と銘打たれているがそれも正しい。
中盤あたりから聴けるのがアンソニーの歌声。この声のフランクか……いいな!

闇市で墓泥棒が違法に精製した鎮痛剤(ザイドレイト)を売りさばく「Zydrate Anatomy」。
美容整形中毒のアンバーもザイドレイト目当てにやってくる。
テレンスの素晴らしいボイスと、もはや演技とは思えないビッチなパリスが拝めます。
イメージとはいえ少しだけ流血があるので苦手な方は注意。

警告を伝えるためシャイロのもとを訪れたブラインド・マグが歌う「Chase The Morning」。
実は彼女にとってもシャイロは大切な子なのである。
本作のサラ・ブライトマンは人間離れした魅力に満ちているよ。

しかし個人的に一番お気に入りの曲は「Mark It Up」ですね。
「会社を継ぐのはオレだもん」というバカ兄弟(ビル兄さんとオーガ)の争い。
作中ではまだソフトなほうとはいえ一応流血ありなので注意。

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