2015年10月28日水曜日

マーダードールズ/ウィメン・アンド・チルドレン・ラスト

殺人人形、リアルな血を流す。

MURDORDOLLS
Women And Children Last('10)



そういえば、ホラー映画って監督や脚本家個人の思いが割とダイレクトに表現された作品だったりもしますよね。
その多くは「お前らばっか恋愛だのセックスだのスポーツだの優等生だの青春を謳歌しやがってこの野郎ぉぉぉぉぉ!!!!」って恨み言だけど……。

ジョーイ・ジョーディソンとウェンズデイ13のホラー映画愛好組によるプロジェクト……と言いながらも、前作『ビヨンド・ザ・ヴァリー・オブ・マーダードールズ』はウェンズデイが以前より書き溜めていた曲から作られていたらしく、今回はジョーイとウェンズデイのほぼ2人で作曲・レコーディングしたとのこと(ライナーノーツ参照)。

ウェンズデイのB級ホラーボーカルとノリのいいロックはまぎれもないマーダードールズなのだが、前作とは大きく異なるところがある。歌詞のホラー映画ネタが皆無なのだ。
2人ともあれほどホラー映画大好きなのに! と思うところもあるが、マーダードールズとしての活動再開までの間に溜め込んだパーソナルな心情やフラストレーションを反映させた結果らしい。特にウェンズデイはこの間スーツケースだけで移動生活をしていたという環境が、M5「Nowhere」やM8「My Dark Place Alone」に反映されている。
中でも一番ダイレクトに表現したのは「失うものは何もない/証明するものもない/腐る前に騒音を鳴らせ/俺にはロックンロールだけなんだから」(M11『Rock N Roll Is All I Got』)の詞だろう。もはや叫ぶのは映画愛だけではなく、ドス黒い感情が渦巻いている。

それでも、M2「Chapel Of Blood」やM9「Blood Stained Valentine」、M10「Pieces Of You」には、既存の映画ネタこそはないがホラー風味がうかがえる歌詞。実際、M2など一部のMVは、グラインドハウスホラー映画の予告編を意識して作られているのである。彼らのホラー愛は決して霧散しているわけではないと安心できる。

なお、ダークになったのは歌詞だけではない。曲調も前作のパーティー・ロック感は薄れ、より不吉さが増している。前作が70年代オカルトや80年代スラッシャーの鮮やかすぎる赤い血だとしたら、今作は酸化して赤黒くなるリアルな血だ。

2015年8月の時点で、ウェンズデイはマーダードールズについて「今後の再開はないかもしれない。でも2ndアルバムだって作るとは思ってなかったからね」と語っていた。そりゃウェンズデイもジョーイもプロジェクトを持ってるし、簡単に再結成できるもんじゃないけど……どっかで続いててほしくもあるよ。
だって貴重じゃないかよ、ホラー映画友だちって!(そういう次元の話じゃないことは重々承知の上で)

ホラー風味は少ないが、ウェンズデイの放浪(?)生活が反映されているようにも思える
M5「Nowhere」。

その一方で、本当にグラインドハウスホラーの予告編チックに作られた
M2「Chapel Of Blood」MV。これ以外にもニセ映画予告風Vが結構あります。

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