2015年12月28日月曜日

グリーン・インフェルノ

捌かれるは「善人」のみ。

グリーン・インフェルノ('13)
監督:イーライ・ロス
出演:ロレンツァ・イッツォ、アリエル・レヴィ



今年上半期の『ハンニバル』シーズン1、『悪魔のいけにえ』リバイバル、そして本作を機に、自宅の料理に肉料理の頻度とレパートリーが増えました。

オーブンも石窯もなくてもローストビーフは気合いで出来る。

また、コレを観たら肉が食いたくなるにちがいないという予想の通り、観賞後に劇場近くの焼肉屋でハラミとホルモンの定食をいただきました。今まで食ってきた焼肉の中でトップクラスに美味かったです。今まで2~3回ぐらいしか食ったことないけど。

No Good Deed, No Yakiniku. 善行なくして焼肉なし。

極私的結論:食人映画は食卓を豊かにする。


正義感の強い大学生ジャスティンは、過激な学生活動団体ACTに加わり、ペルーの森林伐採を阻止して奥地に住む原住民を守る抗議活動に参加する。大胆かつ強引なACTのやり方は成功に終わり、ネット上での反響も拡大……と思った矢先、彼らを乗せたヘリが突如火を噴いて操縦不能になり、ジャングルの中に墜落。かろうじて生き残ったメンバーを待ち受けていたのは、森林伐採から守ったはずの原住民・ヤハ族。だがヤハ族は学生たちを麻酔矢で昏倒させ、村まで運んで檻に閉じ込めてしまった。彼らは他の人間を食糧とする食人族だったのだ……!

「未開の地で原始的生活を送っている人だからって、食人族として描くなんて!」という政治的正しさから今日めっきり作られなくなった食人族映画を、ホラー映画界で絶大な信頼を寄せられる監督イーライ・ロスが蘇らせた。エンドクレジットに羅列されている通り、本作のバックグラウンドには、『食人族』『人喰族』をはじめ80年代に量産されていたイタリア製食人映画へのリスペクトがぎっちり詰まっている。
性格も良ければ頭も良いイーライ監督のこと、当然本作も過去の食人映画の焼き直しではなく、きちんと現代的にアップデートされている。というわけで今回食人族の皆さんに美味しくいただかれるのは、ヤラセドキュメンタリーのために村を襲うクズ人間(食人族)でも、身勝手な理由で原住民を虐殺するクズ人間(人喰族)でもない。それなりの正義感を持ってはいるが、善意が一方的かつ押しつけがましいことに気付いていない、とはいえ完全にイヤな奴ではない、むしろ一般的な「いい人」たちである。つまり、食人族映画を野蛮だ差別だ偏見だと糾弾した人々に限りなく近いのである。自分たちが正義のもとに擁護したつもりの相手に、食人を含む彼らの慣習という価値観を逆に押しつけられるはめになるのだ。
そう思えばホラーファンとしてざまぁみさらせ感が浮上するが、義憤にかられて何らかの記事をリツイートしたり、署名運動に参加したりすることは誰にでもあるだろう。「喰われる側」のボーダーラインも、実は我々のほうにぐっと近づいてきたのではという気もしている。ヤハ族の皆さんにしてみれば、食肉に善も悪もないからね。強いて言うなら脱走は悪だけど。
そうそう、犠牲者メンバーの多くは「多少の欠点はあれど基本的にイイ奴」ではあるが、その中にコイツはちょっと人間的にどうよというレベルのゲスはいる。というか、よりによってそんな奴が(あるいはそんな奴だからこそ)、カリスマ性と統率力のもとイイ人たちを先導している。……という設定が大変に現実的ってところこそ、食人よりもえげつないんじゃないですかね?

本作を観るにあたって事前学習のため『食人族』と『人喰族』を観賞したとき、個人的にちと納得のいかなかった描写が「生食」であった。肉類を生で食えるのは新鮮なうちだけだから、それはそれでアリじゃないか? とも思うのだが、食糧である以上保存のために焼いたり燻したりしてるはずなのになー……と、比較的どうでもいいところで引っかかっていたのだった。
だから、本作における火を通した肉調理には、勝手ながら大変感心した。きちんと部位を分け、下味を付けたうえで石窯で蒸し焼きと、旨味を凝縮できる調理法。しかも、つけあわせの野菜もセッティングしているのだから、栄養のバランスもとれている。大変に納得のいく食生活だ。
何より、最大のゴアシーンである食人描写を、ブラックなギャグとして描いているのが監督のエラいところ。新鮮な食材を手際よく解体するそばから、特権により希少部位を食す長老ばあちゃんの至福の表情、喜ぶ村人たち、世間話をしながら下ごしらえをするおばさんたちや、お手伝いをする子どもたちが映し出される。異邦人にとっての地獄絵図は、原住民にとってほのぼの日常生活なのかと、大規模カルチャーギャップを感じる瞬間である。ただ、子どもにウ○コネタがウケる点だけは万国共通か?
ちなみに、本作にも肉の生食描写はあるのだが、一応そうなった理由があるし、何よりトップクラスの笑いどころに通じているので個人的には大いに納得している。マリファナギャグにそんな二重トラップがあるなんて……!

ここまで満喫しておきながらなんだが、本作を観たあと、ホラーファンの記憶に新しい『食人族』Blu-ray発売中止未遂事件を思い起こさずにはいられなかった。
『食人族』観賞時、食人よりも串刺し人体よりも観ていてキツかったのは、亀を解体して食うシーンだった。殺したあとにきちんと食べたことは、撮影のために動物を殺してもいい理由にはならないが、動物が虐待された(とみなされる)映画をソフト販売から抹消していい理由にもならない。
販売中止に働きかけた人間がどんな人間かは分からない。ジャスティンみたいに正義感が強いのはもちろん、ジョナみたいに純朴かもしれないし、ラーズみたいなお調子者かもしれないし、サマンサやダニエルみたいに身を挺して誰かを守ろうとするしっかり者かもしれない。だが、ホラーやブラックジョークや不謹慎エンターテインメントを愛する人間の目には、『食人族』を抹消しかけた人のイメージは、ユーモアを解さず他者の犠牲を問わず、実態は俗にどっぷり浸かっているアレハンドロになってしまうだろう。

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