2015年10月28日水曜日

マーダードールズ/ウィメン・アンド・チルドレン・ラスト

殺人人形、リアルな血を流す。

MURDORDOLLS
Women And Children Last('10)



そういえば、ホラー映画って監督や脚本家個人の思いが割とダイレクトに表現された作品だったりもしますよね。その多くは「お前らばっか恋愛だのセックスだのスポーツだの優等生だの青春を謳歌しやがってこの野郎ぉぉぉぉぉ!!!!」って恨み言だけど……。

ジョーイ・ジョーディソンとウェンズデイ13のホラー映画愛好組によるプロジェクト……と言いながらも、前作『ビヨンド・ザ・ヴァリー・オブ・マーダードールズ』はウェンズデイが以前より書き溜めていた曲から作られていたらしく、今回はジョーイとウェンズデイのほぼ2人で作曲・レコーディングしたとのこと(ライナーノーツ参照)。
ウェンズデイのB級ホラーボーカルとノリのいいロックはまぎれもないマーダードールズなのだが、前作とは大きく異なるところがある。歌詞のホラー映画ネタが皆無なのだ。2人ともあれほどホラー映画大好きなのに! と思うところもあるが、マーダードールズとしての活動再開までの間に溜め込んだパーソナルな心情やフラストレーションを反映させた結果らしい。特にウェンズデイはこの間スーツケースだけで移動生活をしていたという環境が、M5「Nowhere」やM8「My Dark Place Alone」に反映されている。中でも一番ダイレクトに表現したのは「失うものは何もない/証明するものもない/腐る前に騒音を鳴らせ/俺にはロックンロールだけなんだから」(M11『Rock N Roll Is All I Got』)の詞だろう。もはや叫ぶのは映画愛だけではなく、ドス黒い感情が渦巻いている。
それでも、M2「Chapel Of Blood」やM9「Blood Stained Valentine」、M10「Pieces Of You」には、既存の映画ネタこそはないがホラー風味がうかがえる歌詞。実際、M2など一部のMVは、グラインドハウスホラー映画の予告編を意識して作られているのである。彼らのホラー愛は決して霧散しているわけではないと安心できる。
なお、ダークになったのは歌詞だけではない。曲調も前作のパーティー・ロック感は薄れ、より不吉さが増している。前作が70年代オカルトや80年代スラッシャーの鮮やかすぎる赤い血だとしたら、今作は酸化して赤黒くなるリアルな血だ。

2015年8月の時点で、ウェンズデイはマーダードールズについて「今後の再開はないかもしれない。でも2ndアルバムだって作るとは思ってなかったからね」と語っていた。そりゃウェンズデイもジョーイもプロジェクトを持ってるし、簡単に再結成できるもんじゃないけど……どっかで続いててほしくもあるよ。だって貴重じゃないかよ、ホラー映画友だちって!(そういう次元の話じゃないことは重々承知の上で)

ホラー風味は少ないが、ウェンズデイの放浪(?)生活が反映されているようにも思える
M5「Nowhere」。

その一方で、本当にグラインドハウスホラーの予告編チックに作られた
M2「Chapel Of Blood」MV。これ以外にもニセ映画予告風Vが結構あります。

2015年10月27日火曜日

ムーンスペル/EXTINCT

絶滅させるなベルベット・ボイス。

MOONSPELL
EXTINCT('15)



実は私、ムーンスペルの曲を安眠導入に使っております。フェルナンド・リベイロ(Vo.)のクリーンボイスは大変に聴き心地が良くて落ち着くのです。
……って言うと割と分かって頂けるのに、「クレイドル・オブ・フィルスも安眠に効きます」って言うと一斉にヘンな顔をされるのは何故ですか。ちなみにムーンスペルはクレイドルのサポートアクトを務めてたことがあり、その際ステージのクライマックスにクレイドルのメンバーから小麦粉をぶっかけられるというイタズラに遭っていた模様がクレイドルのライヴDVDのドキュメンタリーに収録されていましたよ。

ポルトガル産ゴシック・メタルの11thアルバム。思えば活動履歴が1992年からで23年目に入っているのだから、彼らもベテランの域に達したものだ。
6th『MEMORIAL』以降はヘヴィネス路線が目立っていて、フェルナンドのデスボイスも初期と比べて格段に深みと凄味を増していたのでそれはそれでキマっていた。ただ、本来持っていた「ゴシック」的な耽美性と艶やかさが薄まっていたのは残念だった。特にそれを担っていたのがフェルナンドのクリーンボイス。別名ベルベット・ボイスと言われるほど、低音で艶やかで色気がある。デスボイスも良いが、フェルナンドの武器はベルベット・ボイスと思う人間にしてみれば、そちらをもっと活かせばいいのにというのが近年の作品を聴いての感想だった。(だから10th『Alpha Noir』とセットというか対になっていた『Omega White』は、個人的に大変理想的だった)

そこへ本作である。時折デスボイスも入れつつ、ベースはクリーンボイス。クリーンボイスの曲はおとなしめ、あるいはバラード色が濃くなる傾向にあったが、今回はややヘヴィネスが主張している傾向。3rd『Sin/Pecado』以来の中近東風メロディやストリングスの導入も見られる。
ここ最近物足りないポイントであった耽美性と艶がぐっと増したが、デスボイス全開のヘヴィ路線が好みというファンには、あまりありがたくないかもしれない。良く言えばバランスが良く、悪く言えば折衷案か。彼らの音楽が本来持っているダークな美しさや、詩人でもあるフェルナンドの詞の魅力を引き出すには、なかなかに良い手法だったように思えるのだが。
面白いのは、彼らが「ゴシック」を意識した作品づくりをした結果、ゴシックの重鎮といわれるシスターズ・オブ・マーシーに近い曲が多々見受けられるようになったことだ。ボーカルにドスを増したエルドリッチおじさんがこのアルバムを聴いたらどう思うのだろうか。

リードシングルとなったM2「Extinct」。
アルバムの中ではフェルナンドのデスボイス中心版です。

こちらがベルベット・ボイスを堪能できるM4「Domina」。
シスターズっぽさを感じさせる曲でもある。

2015年10月25日日曜日

マーダードールズ/ビヨンド・ザ・ヴァリー・オブ・マーダードールズ

可愛い殺人人形の血しぶきパーティー。

MURDERDOLLS
Beyond The Valley Of Murderdolls('03)




ハロウィンが近いと、この人のヴォーカルが聴きたくなるんですよね!
……って言ってるの、いまだに周りに自分しかいないんだけど。

スリップノットのドラマー、ジョーイ・ジョーディソンがギターを担当し、ウェンズデイ13がB級ホラーの申し子とでも言うべき禍々しくも可愛いボーカルを聞かせてくれる。(ギタリストには当時スタティックXのトリップ・アイゼンもいたが、後々事件があってバンドどころか音楽シーンからもフェードアウトしてしまった……)
「ジョーイのサイド・プロジェクト」という位置づけもされているが、確かにスリップノットではできない音楽性を解放しているとはいえ、アーティストが両バンド同じくらい心血注いでいるのなら「サイド」扱いは失礼ではないか……とも思う。「こんだけホラー大好きアピールしてる人の作品をサイドとは何ですかサイドとは!! こっちだって立派な本家っすよ!!」というホラーファンの勝手な同志意識が突っ走った結果でもあるのだが。
ちなみに、ライヴでのバンド形態はジャケ写の通り5人だが、アルバムではジョーイがドラムも担当していたとのこと。そしてファンならジョーイのドラム技術の凄まじさは知っての通り。そのため、時間がなくて写真判定ぐらいでオーディションをパスしてしまったライヴドラマーが、「音ペナペナじゃないですか……」と反感を買うという災難もあったそうな。

マーダードールズの発祥は、ジョーイとウェンズデイがスリップノット以前に組んでいたリジェクツというバンド。だが本作の音楽性の大元になったのは、リジェクツ活動停止後にウェンズデイが活動していたバンド、フランケンシュタイン・ドラッグ・クイーンズ・フロム・プラネット13と思われる。
その名の通りゴテゴテしたホラー色溢れる歌詞と音楽性をマーダードールズも継承し、「彼女はティーンエイジのゾンビ」(M6『She Was A Teenage Zombie』)、「俺は宇宙からやってきた墓泥棒U.S.A.!」(M8『Graverobbing U.S.A.』)、「ミス・アメリカをぶっ殺せ!」(M13『Kill Miss America』)と、ホラーファンに目配せしつつも、怖さはどこかに置いて楽しさと可愛らしさを押し出した曲を聴かせてくれる。ウェンズデイのソロアルバム『トランシルヴァニア90210』でも同じように言及したけど、鮮やかすぎる血しぶきのように毒々しくも明るい、キャッチーなロックンロールである。『エクソシスト』のリーガンに夢中なM4「Love At First Fright」、タイトルからあからさまに『ゾンビ』な「Dawn Of The Dead」など、B級に留まらないホラー愛も覗かせる。先述の「Graverobbing U.S.A.」といいM3「Dead In Hollywood」の歌詞といい、エド・ウッド映画へのオマージュも隠さない。そういえば、アルバムタイトルは巨乳大好きラス・メイヤーの『ワイルド・パーティー』の原題パロディか。
マイ映画生活がホラーやカルトに傾倒していくほどに、ウェンズデイとジョーイが友だちじゃないことを勝手に悔やんでいるよ。

ちなみに、国内盤のブックレット解説いわく、ジョーイは『悪魔のいけにえ』のほう、ウェンズデイは『悪魔のいけにえ2』のほうが好きらしい。ってことはウェンズデイのほうがより友だちになれそうなのかなぁ(一方的推測)。

歌詞に登場するホラーアイコンの名がいくつ分かるかがホラー入門者バロメータな
M3『Dead In Hollywood』。MVにはマンソン師匠も出てますよ!
もちろんウェンズデイのB級ホラー声も堪能してほしい。

2015年10月13日火曜日

マッドマックス怒りのデス・ロード絶叫上映@新文芸坐

何てラブリーでシャイニーでクロームな日だ!!!

マッドマックス 怒りのデス・ロード 絶叫上映
'15.10.11. 池袋新文芸坐 池袋ヴァルハラ坐


上映中に客が歓声をあげたりセリフを真似したりしてもいいスクリーンってないものかな……と、「ガヤスクリーンに関する思いのたけ」にぶちまけていた2012年12月の自分に、「来年(2013年)からの『パシフィック・リム』や2015年の『マッドマックス 怒りのデス・ロード』じゃ好きなだけ叫んでいい絶叫上映があるぞ!」って言ったら信じるだろうかね? 年のスパンが短いしさすがに信じてくれるんじゃないかね?

ちなみに2013年のパシフィック・リム池袋絶叫ナイトのレポはこちら
同年の立川爆音絶叫上映レポはこちら

ファンの方製作、マッドマックス神話絵巻。

ファン層は『パシフィック・リム』と重なるところが多そうなので、当然今回もコスプレのお客さんは多いだろう。とはいえ装備が面倒そうだし、そんなに凝った人もいないかもな……と思っていたら、当日ロビーは想像以上ハイクオリティコスプレで埋まっていた。最低でもきちんと白黒ペイントしたウォーボーイズ&ガールズもいたし……恐るべし、ファンの底力。
なお、途中ロビーが混雑してきたので、整理番号61番以降は階段でヴァルハラのゲートオープン待ちとなった。一応それまでに収められた写真を以下に。

5人の妻たちよりトーストとケイパブル。完成度高。

ウォーボーイズいろいろ。スキンヘッドはお得感あり。
私も白パーカ使えば良かったな……と思ったら私のはフードがなかった。

ガスタウンから棒飛び隊がチェーンソー持ってきましたよ。

作中では見られない幻の共演その1。イワオニ族とフュリオサとウォーボーイズ。

作中では見られない幻の共演その2&3。
マックス(輸血袋Ver.)&ヴァルキリーとヴァルキリーvs棒飛び隊。
 

フュリオーサ!! フュリオーサ!!(ラストの人々の雰囲気で)

もはや我らがアイドルと化したイモータン・ジョー。とうとう親衛隊が現れました。

ウォーボーイズ&ガールズの士気を高めに、コーマドゥーフウォリアーがギターを弾きにきた!!

ようやく番号を呼ばれて英雄の館=シアター内に入ると、主催者さんチームから「絶叫上映マニュアル」を受け取る。空席を探している間に、早くも一部ウォーボーイズ&ガールズがV8コールで盛り上がっていた。コスプレ撮影の段階から今日はアツくなると思ってたけど、ここまでくるとは……!!
いよいよ上映時間というころ、ステージに現れたのはウォーボーイズに、イモータン・ジェーン(女性の方だったもので)に、マックスと同じ口枷と鎖で繋がれた文芸坐職員さん。「イモータン・ジョー様に脅されて絶叫上映をやることになりました」と前置きしつつ、注意事項を説明。
しかしだんだん舞台上の誰よりもヒートアップする文芸坐さん。「皆様の盛り上がり次第では! 今日はジョー様が勝つかもしれません!!」と観客を煽り、ステージからクラッカーをばら撒き、果ては映写室に向かって「デカい音で頼むぜ!!!」(そして手を振る映写担当さん)……この過酷(仮)な世界では、誰もが正気ではいられない。


なお、本日は鳴り物持ち込み可ということで、大多数の観客がクラッカー持参。最初のマックスの登場はもちろんのこと、それ以前のワーナーのロゴやジョージ・ミラーの名が出るあたりでも鳴らしまくり、以降発砲や爆発や信号弾に合わせてクラッカーが鳴る。おかげで場内には常に火薬の匂いがたちこめる。何ともマッドマックスにピッタリな空気になったものだ。

以下、ウォーボーイズ&ガールズの絶叫&リアクションの数々を記憶の限り。

  • 冒頭よりマックスに「早く逃げて!」あるいは双頭ヤモリに「逃げて!」「そっちに行くな!」
  • ウォーボーイズに捕まったマックスが髪の毛を切られると「切ってくれてありがとう!」
  • 脱走マックスを捕まえようとしたウォーボーイの転落に最初の「Witnessed!」。以降ウォーボーイズが散っていくたびに「Witnessed!」スクリーンを指す。
  • 「ウィーアーウォーボーイズ!!!」「ウォーボーイズ!!!」念願のコール&レスポンス。
  • 「ジョー! ジョー! ジョー! イモータン・ジョー!」「V8!! V8!!」毎回映画観ながらこっそりやっていたコール&V8サインを、堂々と叫び掲げられる爽快感ときたら。
  • シタデルの水解放でみんな手を掲げたりペットボトルを掲げたり。
  • シタデルのウォーパブスが太鼓を叩くと、太鼓持ち込み組がドンドコ。
  • 母乳の味見をするリクタスに「おいしい?」
  • ウォー・タンクの異変に気付いたジョーが走り出すと「急いで!」
  • ドゥーフワゴンが走り出すと、客席でも太鼓が鳴り、コーマドゥーフウォリアーがギターを(弾く動きを)始めます。
  • バイクが走り出すと客席からパフパフ音が鳴り響くので、余計暴走族感が増します。
  • 「イモーーターーーン!!! イモータン・ジョーーーーー!!!」「I am awaited in Valhallaaaaaa!!!!」(ハンドル掲げる)思う存分叫んでV8できる爽快感ときたら。
  • 応援要請の信号弾にクラッカー。
  • 「Aw what a day......what a lovely day!!!!」「I live, I die, I live again!!!」思う存分叫べる爽快感ときたら。
  • 砂まみれで復活するマックスに「きなこもち!!」
  • 以降誰かが気絶や眠りから目覚めると「おはようございます!!」の声が。
  • 鎖を外そうとニュークスの手首を引っ張ったり噛みついたりするマックスに「可愛いーー!!!」
  • 水浴びをする妻たちに「ヒュー♪」と変なテンションが上がる。
  • ペットボトル持参組は、マックスと同じタイミングで水を飲む。
  • フュリオサや妻たちへの意思疎通に言葉が少ないマックスに「喋れよ!!」
  • ヤスリのようなもので口枷を外そうとするマックスの真似をして後頭部をコスコスする観客(タンバリンのシャカシャカ音付き)。というか作中のマックスのジェスチャーはだいたい真似されているよ。
  • マックスがウォー・タンク内の武器を没収するたびに「よいしょ!」って言ってる人いましたね。
  • マッドマックスファンはダグちゃんのおかげで「Schlanger!!」というスラングを覚えました。
  • マックスに腹パンで気絶させられても妻たちに放り出されてもひた走るニュークスに「頑張れー!!」と声援が。
  • 人喰い男爵はもちろんアレですね。登場するたびに「乳首!!!」
  • 本日のコスプレ勢にいらっしゃったイワオニ族、岩の門のくだりでは立ち上がって歓声をあびてました。
  • 進んで銃の再装填をしてくれるトーストちゃん、「イケメン!!!」と褒められてました。
  • 次に何が起きるか分かっているはずなのに、スプレンディッドに悲鳴の声が……
  • ジョー軍のバイクに駆け寄るフラジールちゃんに「戻っちゃダメ!!」「止めろ!」
  • やはり指摘がありましたね。オーガニック・メカニックに「ヨダレ!!!」
  • ピースメーカーへの射撃をマックスからフュリオサに交代したとき「お願いしまーーす!!!」
  • お礼として頬にキスすることを覚えたニュークスに「ヒュー♪」
  • 「我こそは正義の天秤!! 死の合唱の指揮者だ!!」「ガンフィーバー!!!」何気に一瞬でみんなをMADに染めさせた武器将軍。
  • まさか、ニュークスが虫を食べた瞬間にクラッカーが鳴るとは……
  • ヴァルキリーの真似をしてみんなハイトーンボイスで吼える。
  • V8やWitnessポーズもやるなら、もちろん鉄馬の女たちの哀悼の仕草もやらなきゃ。
  • さすがにフュリオサと鉄馬の女たちとの再会、フュリオサの慟哭、夜の砂漠の静かなひと時にはみんな静まったなぁ。
  • 一世一代のプレゼン後、マックスの握手待ちの手を真似する観客。ただし手を強く組んでくれるフュリオサの役は自分自身の左手でやるしかなかった。
  • 宙吊り爆睡のドゥーフウォリアーに「起きろ――!!」
  • ウォー・タンクを発見する棒飛び隊の見張り役に「よく気づいた!」
  • ファイナルカーチェイス&バトルはクラッカーの使いどころ満載で困る。残弾を気にしながらの密かなる戦い。
  • スリットと一緒に「ヴァルハラァァァァ!!!!」
  • 最後に「おばあ!!!」と呼ばれた鉄馬の女、いつ見ても「こんな最期を迎えられたらな……」と思う表情です。
  • 「リクターーース!!!!」
  • ケイパブルちゃんはフュリオサへ優しく呼びかけますが、我々は少々暑苦しく呼びかけます。
  • 「フュリオサ!」「フュリオサ!」「Let them up!! Let them up!!」……そして大団円へ。
  • あれほど評判の悪かった日本独自エンディング曲の「Out Of Control」が、ハンドクラップとヘッドバンギング、「ヘイ! ヘイ!」というレスポンスや「ナーーナーーナーーナーー♪」コーラスで盛り上がり、ドゥーフウォリアーもギター弾き真似をし、まるでライブの様相で迎えられるとは!! MAN WITH A MISSIONとZebrahead好き、そしてロックファンとして嬉しい瞬間だった。『ロッキー・ホラー・ショー』と同じく、やっぱり観客が自主的に楽しむことが大事なんだね。

この絶叫上映を実施できたのが新文芸坐でラッキーだった。音響システムが良く、低音が足元からビリビリ響いてくれるからだ。個人的には立川よりは近いし。新文芸坐さんに絶叫上映主催の皆さん、本当にありがとうございました。V8!! V8!! 

今のところ、絶叫上映は訓練された映画オタクが主体のイベントである。こうしたイベントの存在を少しでも世間に受け入れてもらえるために我々ができることといったら、確かに内輪で盛り上がる雰囲気ではあるけれども決して内向的になりすぎないこと、マナーはきちんと守る姿勢をキープすることなのだろうか。
だから「絶叫上映とか行ったことないしコスプレする気もないし映画そんなに何回も観てないし……」という方を、「大丈夫!! 最低限のマナーを守れば基本自由だから!」と自信を持って招き入れられるようになるのが理想だよ。


コスプレもハイレベルだが小道具も凝ってる人いたなぁ!
私なんかエアハンドルだぞ。

そ……その発想はなかった!!

2015年10月5日月曜日

ムカデ人間3

監獄ムカデでみんな(ムカデダンスを)踊ろうぜ。

ムカデ人間3('14)
監督:トム・シックス
出演:ディーター・ラーザー、ローレンス・ハーヴェイ

 

1の静かなる変態ワールドが気に入った人の中には、2の嫌悪とグロの極致を受け付けない人もいただろう。逆に1を物足りなく思えた人は、2のダイレクトな残酷描写が気に入っただろう。
だが、1と2どちらも好き、あるいはどちらかは好きというムカデファンでも、本作には辟易してしまうかもしれない。このシリーズは、前作でファンになったであろう観客をいとも簡単に切り捨てる。まったく仕方のない奴だよ、トム・シックスは! どうしてくれるんだよ。映画館でこんなに腹筋に響いて喉の奥がゴボゴボいうほど笑えたのはたぶん初めてだよ!! 
ああ、結局3作目にして最もハマったよ!! 監督の術中に!!

アメリカ、ジョージ・ブッシュ刑務所。所長のビル・ボスは悩みの種とストレスを抱えて今日もブチ切れていた。この刑務所は暴動発生率、職員の離職率、出所者の再犯率、さらにボスによる囚人虐待のせいで医療費も全米一。このままでは州知事にクビを言い渡されてしまう。
ヒステリーが激しくなるボスに、会計士のドワイト・バトラーが提案した。『ムカデ人間』と『ムカデ人間2』を参考に、「受刑者総ムカデ人間化計画」を立ち上げるのだ! これなら暴動も起きず、職員もケガせず、食費もカットできる、最高の懲罰になる。さらにドワイトはトム・シックス監督を呼び、「ムカデ人間は医学的に100%正しい」との意見を得る。ただでさえアタマのタガが外れっぱなしなのに切羽詰まっているボスは、遂に囚人500人をつなげる一大手術にゴーサインを出した……!!

主役俳優コンビに、カツローこと北村昭博、セブリング先生ことビル・ハッチェンス、何気にシリーズ皆勤賞のピーター・ブランケンシュタイン、さらには監督まで本人役で出演。オールスタームカデ祭りだ!! ……と思いきや、見せ場の大半はディーター・ラーザーの過剰なブチ切れ独壇場という予想外の展開。しかもコレ、1のようにマジメにやってるがゆえに笑えるのではなく、完全に笑いを狙いにいったコメディになっている。ボスという名の所長にバトラーという名の執事役って、ヴィランという名の悪役(エクスペンダブルズ2)以来のギャグネーミングだなぁ。
当初より出オチ感の高かったムカデ人間も、今回は500人つなぐという規模のこともあって、シリーズNo.1の出オチ扱い。観た瞬間「本当に本気でやりやがった……」とは思うが、国内・海外問わずポスターでビジュアルを公開してしまっているから、衝撃度は控えめだろう。その代わりといっては何だが、1同様結合部はバンドで隠されているものの、手術で口とケツが結び付けられる決定的瞬間はしっかり収められているのだ! それを観て何%の人が喜ぶのかは置いといて。
まぁ、ある意味もっとヒドいのは、ボスがさらなる懲罰として作った××××人間。手術が大がかりかつ残酷な割に、ほとんど引きの画でしか映してもらえないうえ、本当のところ俳優さんたちがどういう姿勢でいるのか観客にバレバレなんだもの。それでさっさと次行っちゃうんだもの。これぞ出オチの極みにして(役者的に)懲罰の極み。
ちなみに、この一部始終を観ていた本人役のトム・シックス監督、ボスの横暴ぶりに「これはマズいよ!」とコメントし、盛大にゲ○まで吐いていたが……お前がすべての主犯格のクセして何常人ぶってるんだよ(笑)!!! 

1の冷ややかな色彩の世界=ハイター博士、2の暗く湿っぽいモノクロ世界=マーティン、とくれば、本作の喧騒と暴力にまみれた灼熱の世界はビル・ボスだ! 1作目ではクールな知的変態だったディーター・ラーザーが、キレる、吼える、虐待する、セクハラする、そしてまたキレるという、暑苦しくやかましいバカ暴君に嬉々として変貌を遂げている。
ハイター博士やマーティンもなかなかにアタマのネジがぶっ飛んだ方々だが、2人もビル・ボスにはドン引きしそう。父親の釈放をネタに秘書のデイジー(ポルノ女優ブリー・オルソン。彼女の幻の場外武勇伝については北村昭博氏のコラムやインタビューを読んでいただきたい)を性欲処理に利用し、精力剤としてアフリカ産干しクリトリスを食し、キレてはその辺で銃を乱射する。逆らう囚人たちに対しては、腕を折るわ、熱湯攻めにするわ、麻酔なし去勢手術を施すわで、挙句取ったタマをフライにして食ってしまう。しかし彼の実態は、囚人からの報復を悪夢に見るほど恐れている、声のデカい小心者なのである。
もはやハイター博士に輪をかけて可愛げも同情の余地もない男のはずなのだが……それでも不思議とディーターは可愛らしくて仕方ない!!!! 過剰演技で見せる暴走劇もさることながら、机の下に隠れたり、ショットガンをお守りのように抱きしめたり、我先に逃げたりする小心者ぶりまで可愛い。完成したムカデ人間を前に踊りながら歩き出す姿も可愛い。最低の人間を魅力的に映すためには、演者自身の多大なる魅力がキモ……とは重ね重ね言っているが、ディーターのチャームは思いのほか強大だった。
しかも、今度のディーターは笑いの暴走列車である。ニタニタ顔やらふくれっ面やら絶頂顔やらの顔芸、ブチ切れ芸、ヤバい事態から逃げようとするリアクション芸まで、運悪くドツボにハマってしまった人間には「もう勘弁してくれ!!」と言いたくなるほどお笑いトラップのたたみかけである。まさに「絶対に笑ってはいけないジョージ・ブッシュ刑務所」。自分は何回ケツバットを喰らうことになるのやら。そういえば、「オレのリーダーシップは原子爆弾だ! 100メガトン級だ!」とわめくボスの背後で、ブリー・オルソンが不自然な前傾体勢になってましたが、アレたぶん本気で笑っちゃってましたよね……?

その点、ドワイトは冷静なほうだし、礼儀正しいし、デイジーに乱暴な扱いをしないし、ボスに歯止めをかけようとしてるし、まだマトモだよな。デイジーもドワイトの近くにいたほうがマシなんじゃないかな……って、見事にダマされてましたよ!! 
ボスが戯画化された暴君なら、ドワイトは妙にリアリティのあるサイコである。声高にヤバいことをわめく暴力装置であからさまに危険人物のボスに対し、ドワイトは接しやすくノーマルな会話が可能。ボスの暴走に対するツッコミ役でもある。ついでにいえば、物言わずとも全身から孤独と狂気を発していたマーティンに対し、今回のローレンスはお喋りで愛嬌たっぷりの姿を見せてくれる。だから、うっかりするとボスの異常性を測るための基準として置かれた「普通の人」に映ってしまう。
しかし、そもそも非人道の極みたる受刑者ムカデ化計画の発案者はドワイトである。「あんなくだらんB級映画を!」と取り合いもしなかったボスを、監督呼び寄せてまで説得したのもドワイト。デイジーにだって密かに好意を寄せているのに、彼女がダッチワイフ以下の扱いを受けていてもボスを止めようとはしていない。囚人虐待にストップをかけるのだって、理由は「また医療費がかさむから」である。ドワイトは確かにボスを恐れているが、崇拝してもいるので、基本的にボスのやることなすことを否定してくれないのだ。
明らかな狂人の影にいて、一見普通の人の態度をとっているが、その実一般的な倫理観が抜け落ちている。幼児性とそれゆえの残酷さを持つマーティンと対比してみると、また興味深い。

(以下、核心に触れる部分は反転させています)

三部作中最も笑いの要素が強い作品ではあるが、救いのなさも前2作に劣らない。搾取される側の人間は最後まで搾取され続け、救いの手も差し伸べられない。国歌響き渡り星条旗がはためく下では、全裸の狂人が勝利の雄叫びを上げ続けるのだ。
これがアメリカだ。これが世界の不条理だ。ありがとうトム・シックス。
ありがとうムカデ!!!