2015年11月14日土曜日

キングスマン レディース&ジェントルメン上映

紳士の皮を被って「パーーティーーーーーーー!!!!!」

キングスマン レディース&ジェントルメン上映
'15.11.8. 角川シネマ新宿

※レポ内には本編の核心に触れる部分があります。
 これから作品を観るにあたって、あまり多くの情報を入れたくない方はご注意下さい。

1月にはコロナシアターで『パシフィック・リム』絶叫上映があり、10月には『マッドマックス 怒りのデス・ロード』絶叫上映があり、『ロッキー・ホラー・ショー』は40周年を迎え、そして『キングスマン』へ……本当、今年は絶叫上映の当たり年になったなぁ。

兵庫県の塚口サンサン劇場に端を発したレディース&ジェントルメン上映。ルールはマッドマックスとほぼ同じ、映画を観ながら叫びクラッカーを鳴らしつつ節度ある上映会にするのだが、最大の違いは1つ。スーツと傘とメガネのドレスコードだ(注:厳守ではない)。「紳士淑女の上映会」と銘打ってはいたが、参加者は女性率が高いものの多くがメンズ(風)スーツ着用だった。少なくとも1名ずつはヴァレンタインとガゼルを確認できたけど。

観賞前にフォロワー仲間さんたちとギネスを一杯。

燃料充填後すぐ劇場へ。エレベーターが開くと、ロビーは思っていた以上にキングスマン仕様になっていた。

エレベーターが開いてすぐコレである。
ラジオからはサントラより"Slave to Love"が流れていたよ。

数バージョンのポスターはもちろんのこと……

劇場へのドアまでキングスマン仕様だ!

この日は会場内でも特別にギネスを販売していたそうだが、売店に並び待ちができるわ売り切れるわの大盛況だったとか。もちろん売店を含めこの日の館員さんたちは、スーツ着用のキングスマン仕様でしたよ。

角川シネマさんが用意してくださったのは、ロビー展示と入場前に配布されたクラッカー&紙吹雪だけではなかった。シアター内に入ると、スクリーン真正面にDJブースが設置。さらにスクリーン横にはサーチライト。キングスマンたちのわくわく感を高めてくれたのである。特にレイナード・スキナードの「フリーバード」にはまぁいろんな意味でざわつきましたね。

DJ紳士のサントラミックス。

さて、いよいよ上映時間となり、やはりスーツにメガネに傘を揃えた司会さんが注意事項を説明する。当然「席から立ち上がらない」「物を壊さない」「周りに不快な思いをさせない」といった基礎的なことだが、「皆さんが一斉にクラッカーを使用しますと、場内に煙が立ち込めます。その場合、劇場左右の扉を開けることがあります」なんて危険物取扱みたいなアナウンスまで入るとは思わんかったよ。そんなこと言ってるそばからクラッカー鳴ってたよ。
そして、シメにして盛り上げの一言はやっぱりコレですよ。「Eat! Drink! パーーティーーーーー!!」

ちなみに、「ハリーーー!」「エグジーーーー!」「マーリーーーン!」などお気に入りキャラクターに絶叫が上がるのはおなじみの光景だが、今回は特に女性率が高かったせいか絶叫オクターブが一際高かったように思える。また、私見ではもっとも歓声を浴びていたキャラクターはマーリンである。

以下、いつもの絶叫上映レポパターン、記憶している限りのレスポンス&リアクションです。

  • 一番最初の中東潜入任務からクラッカーの炸裂が止まらず、あたりに火薬の臭いが立ち込める。
  • 「メダルください!」「電話します!」
  • 颯爽とアクションをキメるランスロットにクラッカーと歓声が上がるも、すぐさま「ランス、後ろ、後ろーーー!!」と悲鳴に変わる。
  • ガゼルに「可愛いーーーー!!!」
  • 冒頭「煙が立ち込めたら劇場左右の扉を開けます」とアナウンスして10分足らず。このあたりで既に扉は開いていた……。
  • アーサーと円卓の騎士たちが追悼の乾杯をする席にて、「パーシーーー!!」と歓声を浴びていたパーシヴァル。マシュー・ヴォーンが呼んできた役者でもない友人で、出番も少ないのに、ここまでの人気を集めてるとはなぁ。
  • 車を暴走させるエグジーのシーンでフォロワーさんがパフパフを鳴らしたおかげで、余計に増す族車感。スクリーン内のエグジーに手を振りかえすお客さんも。
  • 「Manners! Maketh! Man!」それに続くハリーのアクションは燃えどころです。萌えどころとも言います。
  • エグジーがパルクールで逃げるシーン、BGMに合わせてハンドクラップが起きる。
  • 試着室エレベーターに唖然とするエグジーに「口開いてるよ!!」
  • キングスマン候補生たちの中で一番鼻持ちならない奴のはずだけど、なぜか歓声も多かったですね。「チャーリー!!!」って。当然「ロキシー!!」って声も多かったけど。
  • 『パシフィック・リム』のマックスしかり、犬は正義です。子犬ともなればなおさらです。「JB!!!」
  • ガゼルちゃんのアクションはもちろん大歓声。
  • 無料SIMカードのニュースを知らないハリーとマーリンに「おじさーーーん!!」(しょうがないなぁというノリで)
  • 「文句があるなら、耳元で囁け」というマーリンに本日トップクラスの「キャーーー!!!」が上がりました。
  • ハリーがヴァレンタインに接触をはかるも、素性が知れていることを匂わせるやり取りに「バレてるよ!!」「隠して!!」
  • JBがジャック・バウアーの略と気づかないアーサーも「おじさーーん!!」と言われてました。
  • ところで誰だい、フライングしてJBやアーサーを撃っちゃった(クラッカーを鳴らした)方は。
  • 極私的今年最大の名言「私はカトリックの売春男で、中絶医のユダヤ系黒人と婚外セックスを楽しんでいます。ヘイルサタン、ごきげんよう」にももちろん歓声でしたね。
  • 中盤の見どころたるアメリカ南部の教会のシーンは、クラッカーと紙ふぶきの炸裂どころでもあるが、さらにサーチライトまで光り出す。大虐殺がパーティーモードになるとは……さすがキングスマン。
  • そして「一仕事」を終えたハリーに「お疲れ!!」「おはよう!!」「ハリーは悪くない!」ついでに「前髪ありがとう!」
  • そしてさらに起きる「期待を裏切る展開」に「ハリーーー!!」「ノーーーー!!!(エグジーの真似で)」「大丈夫だよ!!!(次回作への期待を込めて)」「マーリーーーン!!」「アーサーお前……!!」「嘘つけ!!」
  • 高所恐怖症には過酷すぎる重要な任務を帯びるロキシーに「頑張れ――!!」
  • 客席のキングスマンたちが最もヴァレンタインのアジテーションに乗った瞬間「Eat! Drink! パーーティーーーーーーーー!!!!」
  • エグジー最大のアクションの見せ場には当然歓声が上がる。
  • マーリン「これは私のだ」にクラッカー。セリフだけでクラッカーが上がるのは「Manners! Maketh! Man!」に並ぶんじゃないのか。
  • で、「Manners! Maketh! Man!」に次いでみんなが同時に絶叫したセリフは、マーリンの「Yes,Please」じゃなかろうか。
  • クライマックス最大の見どころであり最も溜飲が下がる「威風堂々」のシーン。当然のようにクラッカーと紙吹雪が消費されていく……とまでは予想していたが、まさかクライマックスに劇場さんが特大クラッカーをバーーーンと鳴らして銀テープをまき散らしてくれるとは……。ただでさえ爽快なシーンでますます清々しい気持ちになりましたよ。実質血みどろだとしても。
  • 「Give It Up」をBGMに世界中にカオス発動。人類の殺し合いが始まり、エグジーとガゼルちゃんとの戦いが始まる中、観客はBGMに合わせてハンドクラップ。ポップと悪趣味が混在するほど盛り上がる絶叫上映は、マシュー・ヴォーンの不謹慎コメディ精神に合っている気がする。
  • ダニエル・クレイグになって以降今のところボンドがやっていない「最後に美女を手に入れる」のシーン。スウェーデン王室の激怒(しているのかな?)をよそに、我々はひたすら「フゥ~~♪」「ヒューーー♪」(パフパフ)と盛り上がるのだった。
  • 「塚口では最後の『Manners! Maketh! Man!』に合わせてクラッカーを3回鳴らしたらしいですよ」との話だったが、それに倣って最後のクラッカー三連発!
  • ……になるはずだったのだが、劇場さんがエンドクレジット中に風船を大量投入。「Get Ready For It」「Heavy Crown」をBGMに全力をあげての風船トス合戦が始まり、余ったらしいクラッカーがまだ鳴っていた。これが紳士淑女のやることかって? ええ、劇場さんがここまで用意してくださったサプライズを全力で楽しむのが今日のキングスマンの務めですとも!!!

注:こちら↓は上映終了後の映画館のフロアです。
くり返し申し上げます。ここは映画館なんです。
撒いたクラッカーや紙吹雪はできる限り拾いましたが、それでも終わりが見えませんでした……!

オレたち庶民は手癖が悪くてね。
紙吹雪の中のこういう↓貴重な写真は撒かずに持って帰っちゃったんだよ。
それで映画半券用のスクラップブックに貼ってるんだよ。

最後にまた司会さんが締めの挨拶に登壇。「劇場としてはこうした上映形態がまたできるかは分かりませんが、DVDとBlu-rayは12月23日に発売されます。そのときソニー・ピクチャーズさんにかけあったらできるかもしれません」と次への希望を残す。今回だって思っていた以上に劇場さんが頑張ってくださって嬉しいことこの上ないけど、絶叫上映ファンとしては次があったらもっと嬉しいよね。でも「クリスマスはキングスマンを観て教会に行きましょう!」って……生きて出てこれるのかな?
なお、上映終了後にも注意事項はあった。「皆さんお気づきでないと思いますが、服が大変火薬臭くなっております。お帰りの際はご注意ください」とのこと。漠然と「あーそうなのかなー」と何となく劇場を出て駅に向かう地下通路に入ったあたりで……やっと気づきました。帰りの電車で私の隣に座ってしまった方、火薬臭いサラリーマンみたいなのがいてすみません。


ネットの映画ニュースにもピックアップされ、少なくとも映画ファンの間では浸透しつつある「絶叫上映」。参加者が増えてきたぶん、終了後のツイートを観る限り、次の課題も見えてきた。「マニアな発言(とりわけいわゆる腐女子的なもの)はどこまで可か」「ネタバレにつながる発言はNGでは?」など。
個人的には「よほど不快な発言でない限り、絶叫に制約はかけすぎないほうがいい」「絶叫やツッコミに『お約束ごと』の意味合いが含まれる以上、気を付けているつもりでも完全にネタバレを防ぐのは難しい」という意見だが、こういう議論が出るようになったことは、絶叫上映が次のフェーズに進みつつあるからかもと思えて嬉しくもあるんだよね。

ロビーにて、肩当て付セーターまで再現のマーリン!

今、マーリンvsマーリンの戦いが始まる……ような気がする。

2015年11月6日金曜日

キングスマン

マイ・フェア・ジェントルマンになんかなるものか。

キングスマン('15)
監督:マシュー・ヴォーン
出演:コリン・ファース、タロン・エガートン




えっ、秘密基地作って世界征服をたくらむ悪のボスとガジェット持ったスーパースパイが戦う映画はもはや現実味がない? その割に、スーパースパイがちょっとだけ死んですぐ甦ってきたり、超高層ビルを登ったり、飛行機にしがみついたまま離陸しちゃう現実味のなさは、比較的許容されてますよ。トム・クルーズパワーともいうけど。

サヴィル・ロウの高級テイラー「キングスマン」。その裏の顔は国から独立した秘密諜報組織だった。その諜報員ハリーは、ロンドンで暮らす労働者階級の青年エグジーを、殉職したメンバーの欠員を埋める新たな候補生としてスカウトする。エグジーの父はかつてキングスマン候補生であり、活動中にハリーたちを助け命を落としていたのだった。
その頃、世界各国で科学者や著名人が行方不明になる事件が発生していた。調査に当たっていたキングスマンは、黒幕がアメリカのIT大富豪リッチモンド・ヴァレンタインであると突き止める。環境保護活動に端を発し「人間こそ地球を蝕むウイルスだ」と結論づけたヴァレンタインは、慈善活動と称し、人類の大半を抹殺する計画を練っていた……。

武器が内蔵されたライターや靴、通信・記録機能付き眼鏡、店の奥に秘密のエレベーター、アーサー王と円卓の騎士を模したコードネーム、エコを盾に人類抹殺を目論む悪のボス、身体欠損があり義手義足が武器になっている悪の殺し屋、氷の地の巨大洞窟に悪の本拠地……と、ロジャー・ムーア期以前(ピアース・ブロスナン期もちょっと入ってるけど)の007映画でみかけた要素が満載。つまり、現在のダニエル・クレイグ版ボンドのテイストではまずできないことが満載。「昔の007は好きだ。最近のはシリアスすぎる」とセリフにまで出しているし。
しかし、007ものを始め往年のスパイ映画を彷彿させる設定をちりばめておきながら、「これはそういう映画じゃない」と言ってあっさりとこちらの期待を裏切る展開もしばしば。単に観客を驚かせよう、懐古趣味とは一線を画そうというだけでなく、「007の監督やりたかった」「『ナポレオン・ソロ』のロバート・ヴォーンが本当のお父さんだったら良かった」という、マシュー・ヴォーンのスパイ映画にまつわるちょっとした闇が顔を出したようにも思える。

キングスマンは紳士である。そして英国紳士といえば、一般的に貴族階級(中産階級の上のほうが入ったり入らなかったり)である。そこに労働者階級のエグジーを入れるとなると、まず言葉のアクセントから教えなければならないんじゃないか? 礼儀作法や教養は? と思ってしまうのだが、そういう展開ではない。というか、これはそういう映画じゃない。
ハリーがエグジー(およびその父親)をリクルートしていたのは、基本的に上流階級のみで構成されていたキングスマンの形態に危機感を覚えていたからだ。多くのキングスマン候補生たちのエグジーに対する態度を見れば分かる通り、上流階級には下の階級を見下すところが多分にある。政府や国とのしがらみはなくとも、自らの優位性にしがみつきたいがために他の者を蹴落とすようでは、世界を救うことはできない。実際、その優越感がキングスマンにとんでもない事態を招くところでもあった。ちなみに上流階級については、「親の資産と名前を傘に贅沢かつ甘やかされて育っているので、中身は大バカ野郎である」と、モンティ・パイソンに何度もバカにされている側面もある。(特に『第127回上流階級アホレース』コントに顕著である)
だから、ハリーはエグジーに紳士らしいスーツを与えはするが、言葉を直そうとはしない。候補生たちの教官であるマーリンも、筆記試験を課したり身体能力の強化訓練をさせたりはするが、エグジーその人を変えようとまではしない。ハリーが語る通り、「Manners Maketh Man.(マナーが紳士を作る。マナーが人を作るとも訳したい)」。強い者には強気で弱い者には優しく、仲間を励まし仲間のためには決して口を割らず、機転に優れたエグジーの振る舞いは、彼自身を良い人間に、また良い紳士に作り上げていたのである。

嫌な上流階級に代表される「自分たちだけ良ければ庶民なんてどうでもいいスノッブな奴ら」への恨みつらみは、あるとき最高の形で昇華されることになる。しかもその瞬間のBGMがクラシックの「威風堂々」。さらに、「自分たちだけが正しくてあとの連中(特に社会的マイノリティ)なんて天罰が下ればいい」と思っている南部のプロテスタント白人まで、ついでのように爽快なほどメッタ殺しにされる。しかも土臭いサザンアメリカンロックたるレイナード・スキナード「フリーバード」がBGM。趣味が良いとも意地悪ともいえる選曲である。
そうそう、エグジーvsブレード義足の殺し屋ガゼル(ダンサー出身のソフィア・ブテラ。ブルース・リー似で可愛い)の戦いと、並行して起きる世界中のカオスに、80年代ダンスチューンな「Give It Up」を流すセンスも忘れちゃいけない。さすがマシュー・ヴォーン。『キック・アス』でヒットガールの薙刀殺戮BGMに「Banana Split」(ナッナッナーナーナナッナー♪)を選ぶ男。