2017年10月24日火曜日

ラウドパーク2017(10月14日編)

帝王と皇帝と魔王と。

LOUD PARK '17
2017.10.14. さいたまスーパーアリーナ



7年ぶりである。
当日会場で過去ポスターを目にしてやっと思い出したが、最後に来た2010年のラウドパークも、2日間参戦だったのだ。あのときは1日目ストーン・サワー ⇒ ハルフォード ⇒ KORN、2日目モーターヘッド ⇒ アヴェンジド・セブンフォールド ⇒ オジーとラストの3ステージを生き延びるの大変だったなぁ……。

と懐かしい気分になりつつ、そういえばさいたまスーパーアリーナという会場は、幕張メッセのオズフェストジャパンやノットフェストより過ごしやすいことにも気づいた。
アリーナの涼しさと上のフードエリアの暖かさのバランスがいいし、必要とあらばホットドリンク(コーヒーのみだが)が買える売店もある。トイレも清潔だし、数が多いからあまり並ばずに済む(もちろんこれはオズフェストやノットフェス自体ではなく、会場たる幕張メッセにお願いしたい課題だ)。

そして何より、アリーナの後方にオフィシャルバーがあり、バッグに入れてさえいればライブエリアに水のボトルは持ち込めるという環境でありながら、床にプラカップやボトルがほとんど散乱していないこと。昔のラウドパークと比べてもかなり床がきれいだ。
エリア出入り口警備はやりながら水規制はしなかったことが良かったのか、それとも開催歴史の差なのか……この辺は他のフェスと比較検討できればなぁ。

あと10年前の07年も1日だけ行きました。
目当てはもちろんマリリン・マンソンで。
  


10年前に観たとき以上にパワフルになっているように思えたANTHEMの途中からライブエリアに入り、ブルヘリアから参戦スタート。
メキシコ産、メンバーは覆面着用で素性がよく分からず(有名メタルバンドのメンバーも所属していたりする)、インディペンデント時代には死体の写真をアルバムジャケットにしていたことがある。治安の悪さと良い感じの胡散臭さがプンプン漂うグラインドコアだ。

「Brujeria! Brujeria!」「Viva Mexico!!」と開演前からコールに包まれてスタート(少し予定時間フライング気味に出てきたように思えたのだが、気のせいだろうか?)。前方エリアとはいえかなり後ろのほうに立っていたのに、あまりの音圧に死ぬ心地。10年前のラウドパークで買った耳栓を持ってこなかったことを早くも後悔した。
歌詞と大半のMCはスペイン語であったため、果たして今言ったことに「イェーーー!!」と叫び返していいものかと逡巡したのか「お、おぉー……!?」とレスポンスが微妙になってしまう瞬間も。数少ない英語MCで聞き取れたのが「世界には災害が溢れているが、最大の災害はアメリカ、ホワイトハウスにいる! ファック、ドナルド・トランプ!!」で、これには割と喝采上がってしまったよ。
もっとも、日本人オーディエンスのスペイン語理解力を考慮してか、コール&レスポンス用に「SI」&「ハイ」「NO」&「イイエ」というカンペを用意してくれる一幕も。

死体と麻薬と政治ステイトメントが満ち満ちているステージだが、時折ふとアタマの悪さ(褒めてます)を覗かせるのがマリファナ肯定系ソング。上記の「ハイ」「イイエ」のレスポンス用カンペも、マリファナに対してイエスというためである。
中にはマッシュルームソングもあったが、「半分人間、半分マッシュルームのモンスターの曲だ!!」と英語MCで言っていたし、プレイ中しばしば謎のポーズ(ちょっと可愛い)を取っていたっけ。

そのマリファナバカ一代の最たるものが、最後の最後にカラオケで流れた、タイトルそのまま "Marijuana" 。しかもコレ「マカレナ」の替え歌なので、それまでブルータルに疾走する音楽だったのが突然能天気なチャカポコ調で、観客も交えて「エーーーーマリワナ!!」と合唱する。この少しの愛嬌で、結構彼らを好きになってしまったよ。

全体的にぽっちゃり系なところもちょっと愛嬌。

昼飯休憩を挟んでオーペス。メキシコのブルータルから一転スウェーデンのプログレへ。
もちろんブルータルなパートはあるが、哀愁と美しさに満ちた静のパートも交えて巧みに世界を構築していく。初っ端から昨年の新譜より "Sorceress" でオーディエンスは妖しい渦に巻き込まれ、"Ghost Of Perdition" の荒々しい導入で熱狂していく。派手にモッシュやジャンプが起きるわけではないものの、みんな心地よさそうにグラグラと揺れていた。

フェスにおけるプログレ系の難点は、曲の長さゆえに数が少なくステージの体感時間が短いこと。ミカエル・オーカーフェルド(Vo)は「時間が少ないからお喋りは控えめにするよ」と言っていたが、ゆったりと話し観客の歓声もまめに拾ってくれるミカエルのMCももう少し聞きたいものだ。やはりフルスケールの単独ライブが一番なのかな。
それでも、静のアルバム『Damnation』(雨の日に聴くと最強だ)から "In My Time Of Need"、それと対を成す動のアルバム『Deliverance』から "Deliverance" という黄金の流れを聴けたことには大感激である。

昔イギリスでメタルTを買ったとき、
オーペスのロゴTを買わなかったことを今頃後悔した。

ちなみに、アリス・クーパーまでの間にちゃちゃっとキューバンステーキサンドで夕飯を済ませている間に、フードエリアをスコットランド民族衣装のバグパイプ奏者おじさんが闊歩していった。ありゃ何者なんだろうとツイートしていたら、後にそのつぶやきをリツイートしていた加藤健二郎さんという方で、しかももはやラウドパーク名物というぐらい何年も演奏している方だそうな。
こりゃそのうちKORNのステージでジョナサンと一緒にバグパイプやるっきゃないっすよ。

「一生のうち1度はステージを見てみたい……でもあまり来日しないみたいだし、そろそろ70だし……」と思っていた魔王が、とうとう君臨する。
前方ブロックにぎゅうぎゅうになったオーディエンスが思いのほか若いのは、そういうショック・ロック界のレジェンドを生で目にしてみたいという後続のファンを多く集めたからなのかもしれない。

そんな我々に、アリスは開演前から睨みを効かせていた……

「引き返そうと思ってももう遅い……奴が来る……!!」
仰々しい口上を経ていよいよこの幕が落ちた瞬間、ただでさえアリス・クーパーのステージが始まるという高揚感が頂点に達しているというのに、私にとってはさらに高揚感が頂点をぶっちぎる瞬間が待っていた。幕開けの曲が "Brutal Planet" だったのだ!!

マリリン・マンソンを軸にロックの系譜を紐解き始めた25年前、一番最初に聴いたアリスのアルバムが『Brutal Planet』であり、冒頭のこのタイトル曲だった。
聴いた途端「コレは本当にヤバいやつだ! この人本当にぶっ飛んでるとしか考えられない!」とさえ思っていた。しかし後になって、当時頻繁に出入りしていたメタルコミュニティで、このアルバムは「モダン・ヘヴィネスに寄ったものの相性は良くない」(もともとアリスの曲は凶悪な演出とミスマッチなほどポップでキャッチーなのだ)とオールドスクールのハードロックファンからの評価が芳しくないことを知り、ちとヘコんだのだった。ということは、今ライブで聴ける可能性はまず無いのかもな……とさえ考えていた。

その矢先にこの幕開けである!! ……まぁ、確かにちょっと最近のセットリストでも調べればすぐ分かることだったが、『Blutal Planet』収録曲に期待を持たせすぎたくないからと調べもしなかった自分にとっては、嬉しすぎる大誤算だったことは分かっていただきたい。
音楽と、ステージ上でステッキを振るうアリスの姿に感激し通しの一時から、続けざまに "No More Mr. Nice Guy" を打ち込まれたときには、ブルヘリアの音圧とはまた違った意味で死にそうになった。
逆にこの曲からの "Under My Wheels" ~ "Poison" とフロアからの大合唱は生きるエネルギーになった。

何が "No More Mr. Nice Guy" だよ!
私みたいなファンにとっちゃ、この流れを作ってくれた時点でナイスガイだよ!


このクラスのベテランアーティスト勢が衰え知らずである理由の1つには、バンドメンバーをちょくちょく若返らせていることがある。アリスのメンバーも私が所有するライブDVDとはだいぶ替わっていて、中でも一番目を引いたのがニタ・ストラウス(g)
ギタープレイもさることながら、佇まいだけで彼女はカッコいい。たまにアリスが背後から髪の毛を持ち上げてイタズラしに来るが、ニタのソロになると彼女を前にぐいぐい押し出したりもする。アリスとしても推したいミュージシャンなのかも。

もう1つ最高に嬉しかったことに、アリスのライブ定番のシアトリカルな演出が思いのほかたくさん観られた。
短いステージだしそんなにギミックはないかもとハードル低めに考えていたが、中盤 "Feed My Frankenstein" で一変。アリスが血のついた白衣姿でB級SFチックなポッドを引きつれてきて、やがてそこから電気と煙とともに大きなフランケンシュタインの怪物(操り人形)が生まれる
"Cold Ethyl" になると本当に「冷たいエセル人形」が出てきて、アリスがそれを引きずったり引っ叩いたり。
"Only Women Bleed" ではとうとう生きたダンサー人形(本物の女優さん演)が周囲を踊って回るが、アリスは彼女をも絞め殺し、謎のガスマスクコンビに連行される。そして用意されたのが……アリスのショーの定番にして一部では悪名高いギロチンである‼︎ 
ドラムロールに合わせて勿体つけながら、遂にガシャンと落ちる刃!
掲げられるアリスの生首(ハリボテ)!
ライアン・ロキシー(g)&トミー・ヘンリクセン(g)リードのもと観客が歌う "I Love The Dead"
そして間もなく "I'm Eighteen" でアリス復活! 首を落とされたのに松葉杖で現れるのはご愛敬! ……いや、DVDでしかお目にかかれなかった演出の数々を生でこの目で拝めるなんて、一体この日だけで何回「死にそう」と思っているんだろう。

最後の "School's Out" では巨大バルーンが頭上に投げ込まれ、お約束のトス合戦が始まる。アリスがステッキで刺すと、割れたバルーンからは紙吹雪が舞い散る。ピンク・フロイド "Another Brick In The Wall" のコーラスも交え、見事オーディエンスを悪ガキに退化させたアリス、最後は紙テープ砲でショーを締めくくったのだった。
確かにアリスもそろそろ70ではあるが、ひょっとするとまた会えるんじゃないかと思うよ。というかまた会いたい!!

さて、魔王は去っていったが、気を抜くのはまだ早い。次にステージに君臨するは、ノルウェーより来たりしブラックメタルの闇の皇帝エンペラーである。
現在のライブは彼らの名盤『Anthems To The Welkin At Dusk』20周年のためらしい。というわけで、アルバムの冒頭を飾る "Alsvartr (The Oath)" ~ "Ye Entrancemperium" という鬼のような轟音疾走ナンバーで暗黒の宴は始まった。
暗黒と言っても、もはやブラックメタル隆盛期当時のコープスペイントを施しているメンバーはいないし、長髪で黒ずくめではあっても比較的主張の少ない外見。イーサーン(Vo/g)に至ってはバンド活動と並行して音楽の先生(授業受けたいです)もやっているので、一見ただの眼鏡をかけた物腰穏やかな紳士である。

しかしこのステージからだだ漏れる「魔」は何だ
イーサーンとサモス(g/殺人罪や暴行罪で服役・逮捕歴あったり、それがもとでライブ入国ができなかったり……よくぞここまで復活した)のトレモロは時に暴力的になったり時に冷ややかになったり、常に空気を黒く塗りつぶし続ける。
タリム(Ds)のブラストビートは、今立っているまさに足元からビキビキと地割れが起きんばかりの威力。
そして、相変わらず禍々しいデスボイスとテノールが響く荘厳なクリーンボイスとで魅了してくるイーサーンのボーカル。
これが皇帝の威厳か……!! と、平伏す代わりにメロイックサインで敬意を表する。

"Thus Spake The Nightspirit" "With Strength I Burn" など『Anthems』収録曲はすべて披露してくれたが、アルバム収録ではないがエンペラー代表曲といえる "Curse You All Men!" "Inno A Satana" も燃えに燃えた。"Inno A Satana" に至ってはまさに悪魔崇拝の賛美歌である。ライブが終わった……というより、黒ミサが終わった気分だった。
分かりやすいバフォメットみたいな悪魔は降臨しなくとも、皇帝の編み出す「魔」はアリーナのあちこちに降りていたさ。

オール・ヘイル・エンペラー。

魔王が来た……皇帝が来た……それでもまだまだ気は抜けない!! 
何故なら最後には帝王がやって来るからだ!! 
そう、スラッシュ四天王の一翼を担う帝王、スレイヤーが!! 
まったく今年は何回ステージに(気持ちだけ)平伏せばいいんだ!!

アリス・クーパーと同様開演直前までステージは幕で隠されていた。その表面に赤い十字架が4つ浮かび上がり、ゆっくりと回転して逆十字になっていく。
さらに逆十字は逆ペンタグラムに変化し、幕の上を漂う。
そしてバーーーンと浮かぶSLAYERのロゴ……からの幕が落ちて "Repentless" で始まる疾走! 完璧なオープニングである。
続けて "The Antichrist" からの "Disciple" でオーディエンスの「God Hates Us All!!!」絶叫も、完璧な流れだった。

年々トム・アラヤ(Vo/b)とケリー・キング(g)の体躯が重量を増していることに少し心配にもなるが(余計なお世話か)、それより何よりそもそも音が重量級。ブルヘリアの音圧に押されるのとはまた異なり、反対側のステージエリアの端からという離れた位置にいても、ドラム/ベース/ギターそれぞれの音が全身ボコボコにぶん殴りにきているようだ。もはや、このライブ自体が巨大な暴力装置なのだ。
……と、物騒なことを言いつつ、トムが話し出すと一気に空気が穏やかになり、オーディエンスに真摯に感謝を示すときにはむしろ仏の顔だったことは明記しておきたい。

前方ブロックに巨大サークルピットができる一方、離れた位置ではデイヴ・ロンバルド(Ds)のブラストビートに合わせるように小刻みにヘッドバンギングしている人を多く見受けられる。確か自分もやっていた気がする。
その様相はヘドバンというよりもはや痙攣に近い。これに似たものをどこかで観たことがあるような気がしたら、『俺たちに明日はない』のマシンガンで撃たれていくときの「死の舞踊」だ。それも、ステージが終わるまでひたすら音の砲弾を浴び続けなければならない。つまり、メタルヘッズには幸せなことこの上ない死に様だ。生きてるけど。
ちなみに私、"Raining Blood" の最中、疲れが溜まったせいか小刻みヘドバンしながら数秒間意識がブラックアウトしておりました。これはスレイヤーにより「数秒だけ死んだ」ということにしといてもよろしいでしょうか……? ラストの "Angel Of Death" で強制的に復活したけどね。

「今年は何回ステージに(気持ちだけ)平伏せばいいんだ!!」と先述したが、それ以上に「今年は何回死にそうになればいいんだ!!」なラウドパーク初日だった。


帝王が帝王すぎてエライことになった。

2017年2月20日月曜日

The Haunted World Of El Superbeasto

ゾンビ店長特製全部乗せ闇鍋。

The Haunted World Of El Superbeasto ('09)
監督:ロブ・ゾンビ
出演(声):トム・パパ、シェリ・ムーン・ゾンビ




自分には一からキャラクターや世界観を作りこみストーリーを作る能力が乏しいのだと気付いたとき、「どうせオフィシャルに出すもんじゃないんだから著作権とか歴史とか現実にはどうとか知るか!」と、とにかく合理性ガン無視で、好きなジャンルネタばかり詰めた話を書いたことがある。

とっくに死んでるロックスターもホラー映画のキャラクターも混在する世界で、ロック好きの小学生4人組(好きなジャンルはメタルやグランジなどバラつきがあるが、なぜかみんなブラック・サバスを尊敬している)が、サバス主催のロックフェスに行くため車を飛ばす。
途中フェスのオープニングアクトを務めるバンドのゴッドヘッドと道中を共にしたり、ホラーのクリーチャーや悪魔のシスターらに妨害されたり、ピンチになるとなぜかリッチー・エドワーズ(失踪してしまったマニック・ストリート・プリーチャーズのギタリスト)が現れて助けてくれたり、壊し屋キース・ムーンの生霊に取り憑かれているゴスの小学生がチェーンソー抱えて殺人鬼もドン引きの暴走を始めたりしながら会場に着く……というようなものだった。
結果、言うまでもなく、ただの味のない闇鍋と化したこの話は永久に封じられたのだった。

エル・スーパービーストは覆面レスラーであり、映画監督であり、(ポルノ)俳優でもあり、そして実生活でもヒーロー。世界の誰からも好かれ、同じくらい嫌われてもいる。撮影を終え、いつものようにバーに繰り出したビーストは、No.1ストリッパーのベルベット・フォン・ブラックにベタ惚れするが、その直後彼女は頭にネジの生えた改造ゴリラに誘拐されてしまう。
下心満載のビーストは、ヒトラーの首をめぐってナチスゾンビと追っかけっこを繰り広げていた、腹違いの妹にしてスーパースパイのスージーXと共に事件を捜査する。するとその背後には、運命の花嫁を娶ることで世界征服に乗り出さんとするドクター・サタン(本名スティーヴ・ワショウスキー)の影が……。

ホラー映画、おっぱい、セックス、モンスター、尻、ロボット、おっぱい、サント映画、尻、ナチスプロイテーション、おっぱい、オレの嫁(の尻)、キャットファイト、おっぱい……と、すべてがロブ・ゾンビの好きなものだけでできている世界。おおむね同じものが好きなゾンビ監督のファンにもたまらない世界となっている……それだけに日本のゾンビファンのために国内盤が出ていないことが無念。

車を飛ばしついでにマイケル・マイヤーズ(たぶんロブ・ゾンビリメイク版『ハロウィン』)を轢き逃げしたり、ナチスの古城にゾンビと狼男とセクシー女将校がいたり。
バーに行けばフランケンシュタインの花嫁やら大アマゾンの半魚人やらエイリアンやら『シャイニング』のジャック・ニコルソンやら、果ては『デビルズ・リジェクツ』のファイアフライ一家や『ファスター・プッシーキャット キル! キル!』のヴァーラまでいるなんて、どんな理想郷だよ!!!
しかも何がスゴいかって、そんなカメオ出演的キャラクターのために、ビル・モーズリィ、シド・ヘイグ、ケン・フォリー、ダニー・トレホ、ディー・ウォーレス、そしてトゥラ・サターナらが直々に声を当ててくれているのだ!
 
そしてそして音楽はゾンビ映画の常連にして『ザ・ペイル・エンペラー』ではマンソンと共同作業もしていたタイラー・ベイツ! 
さらにHard'n Phirmなるユニットが素晴らしくバカな曲をサントラに提供!
(オススメは、ただただ画面上で起きていることをそのまま歌うだけの『Zombie Nazis』、あるホラー映画の有名シーンを丸パクリしたくだりの『The Old Bloodbath Routine』、日本人が毎日アダルトアニメでヌいてますとバラされる『Catfight!』です)好きなものを寄せ集めるなら徹底しないと、美味い闇鍋はできないのである。

あ、もちろん一番セクシーで一番強くて一番頼もしいスージーXの声は、大好きな嫁=シェリ・ムーン・ゾンビ。思えば『マーダー・ライド・ショー』のベイビーでもその傾向は表れていたとはいえ、こんなにもナチュラルボーンアニメ声だったとはな……。

しかし、そんな豪華な声の出演陣でも特筆すべきは、メインとなるキャラクターを担当するロザリオ・ドーソンポール・ジアマッティであろう。
ロザリオ=ベルベット・フォン・ブラックは、脅威のおっぱいと尻を誇るNo.1ストリッパーではあるが、口汚さと下品さもNo.1。かなりダミ声寄りになりつつ、モンスターもドン引きするほど明け透けな悪口雑言の嵐をまくし立てる。
ここからNetflixの『ディフェンダーズ』シリーズの強くて優しい医師クレアの姿など到底浮かばないし、『シン・シティ』のゲイルにすら気品を感じてくる始末だ。

ドクター・サタンの声を充てるポール・ジアマッティも凄まじい。バカみたいな高笑いや情けない泣き声、勝手にドアを開けられた際の思春期みたいな絶叫、デビー・レイノルズの「タミー」をBGMに○○○○するウホウホハァハァ声まで! 余計なお世話でしかないのに俳優としてのキャリアを心配したくなるほどの暴走っぷりだ。
プロの声優(日本ならではの職業観かもしれないが)ではない芸能人が声の仕事をすることに苦言を呈されることが多々ある国内エンタメ、これぐらいの吹っ切れと技術力が必要とされているんじゃないだろうか。

無理やりな分類だがヒーローものと言えなくもない本作。しかし、実はそのヒーローたるエル・スーパービーストは、よくよく見れば結構ヤな奴だ。
自分がカッコよく見えているかどうかが最大の関心事だし、その次に関心が高いのはおっぱいと尻だし、回想シーンに出てくる高校時代などはいじめっ子ジョックスの典型。普通のホラー映画なら、比較的早いうちに死んでいるはずのキャラクターだ。むしろ、かつてイケてないオタクでいじめられっ子だったドクター・サタンのほうにシンパシーが湧くだろう。

それでもいじめられっ子の逆襲が世界を滅ぼすことを潔しとしなかったのは、はみ出し者魂が創造に向かったゾンビ監督ならではの視点なのか、問答無用のセレブリティでモテモテで物理的に強いヒーローというものに対する憧れなのか。
まぁ、最愛の嫁の化身たるスージーがこんなにも輝ける世界なら、ぶち壊したくはないもんだよ。

2017年1月10日火曜日

2016年映画極私的もろもろベスト

ベストから漏れたなら、こっちで拾っちゃえばいいじゃない。

メインのベスト10作るよりこっちのほうが楽しくなってきたら、ちょっとは危機感持つことを検討してみようかと思いますよ。

参考記事:
2013年極私的映画もろもろベスト
2014年極私的映画もろもろベスト
2015年極私的映画もろもろベスト


2016年映画ベストガール

  1. ハーレイ・クイン(マーゴット・ロビー)(スーサイド・スクワッド)
  2. 鋸村ギーコ(内田理央)(血まみれスケバンチェーンソー)
  3. ワンダーウーマン(ガル・ガドット)(バットマンvsスーパーマン)
  4. 貞子&伽椰子(七海エリー&遠藤留奈)(貞子vs伽椰子)
  5. ヴァネッサ(モリーナ・バッカリン)(デッドプール)

なぜかまとめてみると、洋画はアメコミ映画、邦画はホラー&スプラッターという結果に。好みの傾向である「強くて毒気のある女性」を突き詰めるとアメコミヒーロー/ヴィランになるのは分かるが、日本だとオバケに行き着くのか……2位のギーコちゃんは違うけど、チェーンソー装備&下駄履き&ふんどし着用で、最大の武器は人望の厚さというハイスペックスケバンなので。ちなみに1位のハーレイちゃん、この路線でいくなら、ジョーカーとはチャッキー&ティファニー(チャイルド・プレイ)のような殺人バカップル街道を歩んでほしいです。



2016年映画ベストガイ

  1. 伝説の戦士(ローレンス・マコアレ)(ザ・ラスト・ウォーリアー)
  2. アレハンドロ(ベニチオ・デル・トロ)(ボーダーライン)
  3. ケヴィン・ベーコン(コップ・カー)
  4. マイク・バニング(ジェラルド・バトラー)(エンド・オブ・キングダム)
  5. ビーバップ&ロックステディ(ゲイリー・アンソニー・ウィリアムズ&スティーヴン・ファレリー)(ミュータント・ニンジャ・タートルズ 影)

ベストガイ選出傾向=アクの強さで考えていたら、伝説の戦士ことローレンスさんの顔面力という殿堂入りクラスのビジュアルに出会ってしまった2016年。3位のケヴィン・ベーコンは、もう作品内でのキャラクターがどうこうというより「ベーコン力(りょく)」押しだったので本人名で。あと、アクの強さも突き詰めると、イノシシとサイの改造人間(超ポジティブ)に行き着くのな。

未体験ゾーンのページにも貼りましたが、
ここで改めてローレンスさんの顔面力↓を再確認しましょう。



2016年映画ベストバディ

  1. チアルート&ベイズ(ローグ・ワン スター・ウォーズ・ストーリー)
  2. ビーバップ&ロックステディ(ミュータント・ニンジャ・タートルズ 影)
  3. マイク・バニング&ベンジャミン・アッシャー(エンド・オブ・キングダム)
こんな相棒同士になれたらいいなぁ……と思っても、1位と3位は両者または一方の殺傷スペックが高すぎるので、偏差値低いモン同士「うぇーーい」ってやってられる2位ならまだ望みが……と思ったけど、アイツらでさえ実は戦車運転できるし、その前に改造人間だし。



2016年映画ベストソング

  1. EVIL IDOL SONG(EVIL IDOL SONG)
  2. 呪いのシャ・ナ・ナ・ナ(貞子vs伽椰子)
  3. I Can't Help Falling In Love With You(死霊館 エンフィールド事件)
  4. デッドプール・ラップ(デッドプール)
  5. SOS(クリント・マンセル編曲版)(ハイ・ライズ)

上位3位をホラーが占めることになったけど、1位&2位は高揚感、3位はしみじみ感の曲。不気味なのはむしろABBAの曲を静かにアレンジした5位。4位はまぁ……「セクシーマザーファッカー♪」なので。



2016年映画ベストサントラ

  1. スーサイド・スクワッド
  2. イット・フォローズ
  3. ヘイトフル・エイト
  4. デッドプール
  5. オデッセイ

正直1位の映画本編での曲の使い方はそんなにベストではないんだけど、なぜか図ったように自分の好きな曲ばかりがぶっこまれているというひいき目で。2
位と3位はオリジナルスコア(3位は一部既成曲)だが、ほぼ既成曲の4位と5位については、そんなに好きな音楽でもないワム! やディスコミュージックが作中で最高の使われ方をしていた点で評価高。ただ、それでも単体でワム! や「ホット・スタッフ」を聴くのはちとキツいのだけど。


2016年ベスト(ワースト)イヤミス映画

  1. 無垢の祈り
  2. グッドナイト・マミー
  3. ザ・ギフト
  4. ヒメアノ~ル
  5. ドント・ブリーズ

メインのベストに入れるのが難しかった『無垢の祈り』、どうにか1位に入れる枠がないものかと考えてみた結果。「イヤミス」といいつつ「これは果たしてミステリなのか」という疑問は残るけど……。



2016年映画ベスト名言

  1. 「人々は私のせいにしたがるが、私はただの目撃者だ。私が見たものには天使も涙する。私を否定してもいいが、君の目に宿る炎は私だ。君にこの地上の腐った、邪悪な魂をすべて与えよう。君は復讐し、私は彼らの魂を燃やす。正直に言えば、君なしでは凍えそうだ」Let Us Prey)
  2. 「まるで映画だ。オレたちは偶然の主人公。監督はデヴィッド。天国から演出中だ」(バンド・コールド・デス)
  3. 「オレたちは必要ないってさ。あの子は世間をケツの穴まで知ってる。たぶんお前より大人だよ」(無垢の祈り)
  4. 「ママもへやにさよならして」(ルーム)
  5. 「侵略しに行かなくても、落とし物保管所に行けばよかったんだ」(マイケル・ムーアの世界侵略のススメ)

次点は、最後の最後に岡田くんと観客の心をグッサリ刺していく「お母さーーん、麦茶2つ持ってきてーー!」(ヒメアノ~ル)です。



2016年映画ベスト迷言

  1. 「メタルをくらえ‼︎ (ケツにチェーンソーをぶっこみながら)」(デビルズ・メタル)
  2. オザキ8(X-ミッション)
  3. 「俺は超合神だ‼︎」(キング・オブ・エジプト)
  4. 「くそ、あいつは死なないのか⁉︎」(エンド・オブ・キングダム)
  5. 「オレはヤクザだぁぁぁぁ‼︎」(テラフォーマーズ)


3位と4位にランクインしたということで、2016年総合迷言賞はジェラルド・バトラーです。
2位だけはセリフじゃないんだけど、「オザキ8」という造語それ自体のパワーがあったので。



2016年ワースト映画危険めし

  1. ヘドロ的な何か(エヴォリューション)
  2. ボブが淹れたコーヒー(ヘイトフル・エイト)
  3. 男子が作ったカレー(ドロメ)
  4. ヴィジョンが作ったパプリカーシュ(シビル・ウォー キャプテン・アメリカ)
  5. レモンにタバスコ(ダーティー・コップス)

今年は食欲をそそられる飯より、ヤバいだろとしか思えない飯のほうが印象に残った。
1位、あれは本当に人間の食べるモノではない。
2位のコーヒー、どんな淹れ方をすれば靴下でも入れたような味になるのか!? 
3位、どんな作り方をすれば水っぽいおでんのようなカレーができるのか!? 
4位はそもそも人造人間の味覚が謎だから、どの程度ヒドいかも謎だが……。
5位、なぜそれをやろうと思ったんだニコラス・ケイジ!? そしてなぜイライジャ・ウッドに食わせた!? 

ちなみに、ベストめしはミニーが作ったシチューと、同じくミニーの服飾店で売ってたミント(ヘイトフル・エイト)。あと竹内結子が作ってたご飯(クリーピー 偽りの隣人)も全部美味しそう。
ただ、『ハンニバル』シーズン2があったぶん、飯のグレードはドラマのほうが比重高かったかな……もちろん肉の調達元は考えない方向性で。



2016年映画夢のガジェット

  1. 無人在来線爆弾(シン・ゴジラ)
  2. ターンテーブル(ノック・ノック)
  3. コップ・カー(コップ・カー)
  4. 改造チェーンソー(血まみれスケバンチェーンソー)
  5. 対ゴースト兵器の数々(ゴーストバスターズ)

「無人在来線爆弾」って、言葉の響きが既に勝ちだよね! 2位と3位は現実味あるけど、ターンテーブルなんてスペース、予算、使いこなす技術において夢のまた夢。まして警察車両なんぞ、フランスのおまわりさんがタクシー感覚で乗せてくれたとき(実話)以来乗ってないよ。



2016年映画に学ぶ間違った教訓

  1. 必要なくても殺せ(エンド・オブ・キングダム)
  2. バケモンにはバケモンをぶつけんだよ(貞子vs伽椰子)
  3. 太陽は燃えるジェフリー・ラッシュのパワーで地球の上を動いている(キング・オブ・エジプト)
  4. 靴磨き機の使い方(Let Us Prey)
  5. 事故に見せかけて殺せ=事故っぽかったら別に目立っててもOK(メカニック:ワールドミッション)

何というか、だいぶバイオレントなことばかり学んできた年でした。



2016年映画に学ぶ正しい教訓


  1. 悲惨なときこそユーモアの力が問われる(オデッセイ/デッドプール)
  2. まずは君が落ち着け(シン・ゴジラ)
  3. 水没したスマホはお米に入れておくと復活するかもしれない(ノック・ノック)

毎年毎年ヘンな教訓しか学んでないので、たまにはちゃんとした教訓も……と思ったけど、1位以外はそんなにイイ話またはまっとうな情報でもなかったよ。



2016年映画言ってみたいけど一生言えないセリフ

  1. (「幸運を」と言われて)「必要ない。お前がいる」(ローグ・ワン スター・ウォーズ・ストーリー)
  2. 「数えきれないほど人を殺してきたオレだ。君1人くらい守れる」(メカニック:ワールドミッション)
  3. 「地獄でもポップコーンは大人気だぜ」(31)


その代わりといってはなんですが、今年一番実生活で使ったセリフは「え? 蒲田に?」(シン・ゴジラ)でした。話の文脈上、特に蒲田が関係なくても言ってました。

2017年1月8日日曜日

2016年映画極私的ベスト10

2016年=まだまだこの国はやれる、そう感じるよ。

今年は映画ファンにとって邦画の当たり年だったなぁと思って。ベスト10内にも4作入ったし。
……まぁ、それだけの良作が生まれるために、それなりの事故映画も生まれているんだけどな。何せワーストランキング作ってみたら1位と2位が邦画だったからな……!

参照記事一覧
2012年極私的ベスト
2013年極私的ベスト
2014年極私的ベスト
2015年極私的ベスト

1位 ヘイトフル・エイト

『デス・プルーフ』までの映画オタクと足フェチ期、歴史上で虐げられてきた人々の代理復讐を遂げた『イングロリアス・バスターズ』『ジャンゴ』ときて、「アメリカはこのままでいいのか? 憎しみを乗り越える希望があってもいいんじゃないのか?」と新たな道を示し始めたタラ。50を過ぎてから大人になったものだなぁ。そんな今年に、白人警官による安易な黒人射殺事件およびその報復事件が相次いだことは実に哀しい。この世界のどこかに、「リンカーンの手紙」は存在しないものか。

2位 イット・フォローズ

「それ」はどこまでもついてくる……けど、与えられるのは死の恐怖だけではない。まさか、ホラー映画におけるセックスと死の因果応報が、青春物語であり、ここまで壮大な人間愛の物語に押し広げられるとはなぁ……。

3位 シン・ゴジラ

正直、去年ギャレス・エドワーズの『GODZILLA』が公開され、「怪獣王ゴジラのプロレス興行」を呼び起こしてくれていた中、そのわずか翌年の日本のゴジラ復活は負ける確率の高い壮大な後出しジャンケンだった。しかしその分、ギャレス版ゴジラでは描ききれていなかった「災害としてのゴジラ」像があり、しかも3.11を想起させる描き方。何より、ギャレス版で強いて言うなら納得がいかなかった「核の扱い」にどう向き合ったのか。バジェットや技術に勝るハリウッドに、拙さがありつつも日本なりの回答を打ち出せたことが一番嬉しい収穫だった。

4位 Let Us Prey(デス・ノート/デッド・ノート)

『DEATH NOTE Light Up The New World』と同じ年に公開されてしまったことは、本当に不運でしかなかった。ときにデスノートのパチモン扱いされ、あまつさえマイナーだからといってC級映画と言われてしまうなど……。この際言うけどな、デスノート本家よりこっちのほうが小粒でもパワフルでゴアゴアでカッコよかったぞ! 死神は出てこなくても、死神よりもクールな「ある男」がいたぞ!

5位 EVIL IDOL SONG

『へんげ』に続き、小粒ながらもクライマックスはカタルシスに満ちている大畑作品。「いっそみんな死ねばいいのに」という万人が思うであろう呪詛と、「どうせ死ぬなら最高の曲を聴きながら死にたい」という音楽好きにとってある種の夢を具現化してくれました。

6位 この世界の片隅に

今であれ戦時中であれ、世界は日々の生活の積み重ねでできている。ご飯の材料が足りなければ今手に入るもので補い、寝てる場合じゃないときにも眠くなり、楽しいことを見つけようと思えば見つけられる。それができる人は、一見フワフワしているように思えて、実はとても芯が通った生き方のできる人だ。だが、そんな人ですら、積み重ねてきた世界が物理的または精神的に崩れていくときにはあまりにも無力である。それでも世界は続くということは、残酷でもあり、希望でもあるのかもしれない。

7位 ローグ・ワン スター・ウォーズ・ストーリー

ざっくり言ってしまえばスターウォーズサーガは、強いフォースの使い手にして「選ばれし者」たるスカイウォーカー一家を中心としている。そこへいくと、本作で活躍する人々は何の特殊能力も持たず(ドニーさんは存在するだけで強いけど)、中でも中心人物たちは反乱軍側に属しつつその中でも異分子であり、もっとも選ばれない者たちである。そんな人々が希望をつなげるためだけに死力を尽くす姿は、時に英雄譚よりも心動かされるものがある。

8位 ノック・ノック

浮気に関するニュースにコメンテーターがああだこうだ言ってるのを見かけると、「うん、とりあえずみんな『ノック・ノック』観ようか」と言いたくなった。パートナーもいないし浮気とか関係ないし家に人をあげることもないし……と安全圏にいるつもりの人も、「人生はいとも簡単にぶっ壊れる。しかもぶっ壊すのは他人とは限らないかもしれない」という危機感ぐらいは持ってみてほしい。そして最後の小さじ1杯ほどの悪意に笑おう。

9位 セトウツミ

「ほとんど2人が喋ってるだけの映画をスクリーンで観る意味はあるのか」と基本劇場主義の映画ファンですら思うようだが、個人的にはスクリーンで観る価値大いにありの作品である。理由その1は、同じ日に観たあるワースト入り映画が、演者の笑いセンスに頼ったTVバラエティの域を出なかったのを見ていたこと。理由その2は、いわゆる劇的かつ爽やかさと甘酸っぱさに満ちた青春像とは無縁だった多くの人間から見た、「高校時代にドラマなどない」「短くてくだらない、良いひとときの積み重ねでできていた」という普遍性がスクリーンから広がっていったことだ。それに、菅田将暉と池松壮亮の頭脳戦だったら、デスノートよりこっちのほうがアタマいいぞ。

10位 デビルズ・メタル

そりゃね、音楽と青春の映画として優れているのは『シング・ストリート』ですよ。ジョン・カーニーがとてもピュアに音楽の力を信じていることも伝わってきましたよ。でもね、鬱屈を創造性に結びつけるの下手クソで、自分で撒いちゃった種を自分で回収するのにいっぱいいっぱいで、それがまぁとにかく見苦しくてみっともない(しかも血みどろ)という本作のほうが、私にとっての音楽と青春のリアリティなのですよ。


次点としては、『帰ってきたヒトラー』『貞子vs伽椰子』『クリーピー 偽りの隣人』『ヒメアノ~ル』『ソング・オブ・ザ・シー 海のうた』『ドント・ブリーズ』『手紙は覚えている』『残穢 -住んではいけない部屋-』『ズートピア』『死霊館 エンフィールド事件』等々。あと、ランク付けするのは難しいけど今年の忘れられない映画として、特別枠に『無垢の祈り』も挙げておきたい。

そしてもうひとつのランキングが……

2016年リバイバル映画ベスト10


1位 黒い十人の女(in 角川シネマ新宿/西端100年記念映画祭 市川崑 光と影の仕草)
2位 七人の侍(in 楽天地シネマ錦糸町/午前十時の映画祭)
3位 不思議惑星キン・ザ・ザ(in キネカ大森)
4位 丑三つの村(in シネマヴェーラ渋谷/映画作家・田中登)
5位 犬神家の一族(in 角川シネマ新宿/西端100年記念映画祭 市川崑 光と影の仕草)
6位 2000人の狂人(in キネカ大森/ホラー秘宝まつり)
7位 カリガリ博士(in シネマート新宿/活弁シネマート)
8位 獄門島(in 神保町シアター/本格推理作家の世界)
9位 哀しき獣(in シネマート新宿)
10位 ヘル・レイザー(in キネカ大森/ホラー秘宝まつり)


今年の反省としては、未公開作品に触れる機会がガン下がりしていて、去年のようなランキングが作れなかったことか。それだけレンタル店に行く頻度が減ってしまったということかな、配信に頼ってるということかな……とも思ったのだが、Netflixですらそこまで観てなかったという事実が。劇場中心生活は当面続きそうではあるけど、せっかく毎月1000円近く払ってるんだから、もっと活用せねばなぁ。