2017年2月20日月曜日

The Haunted World Of El Superbeasto

ゾンビ店長特製全部乗せ闇鍋。

The Haunted World Of El Superbeasto ('09)
監督:ロブ・ゾンビ
出演(声):トム・パパ、シェリ・ムーン・ゾンビ




自分には一からキャラクターや世界観を作りこみストーリーを作る能力が乏しいのだと気付いたとき、「どうせオフィシャルに出すもんじゃないんだから著作権とか歴史とか現実にはどうとか知るか!」と、とにかく合理性ガン無視で、好きなジャンルネタばかり詰めた話を書くことにした。
とっくに死んでるロックスターもホラー映画のキャラクターも混在する世界で、ロック好きの小学生4人組(好きなジャンルはメタルやグランジなどバラつきがあるが、なぜかみんなブラック・サバスを尊敬している)が、サバス主催のロックフェスに行くため車を飛ばし、途中フェスのオープニングアクトを務めるバンドのゴッドヘッドと道中を共にしたり、ホラーのクリーチャーや悪魔のシスターらに妨害されたり、ピンチになるとなぜかリッチー・エドワーズ(失踪してしまったマニック・ストリート・プリーチャーズのギタリスト)が現れて助けてくれたり、壊し屋キース・ムーンの生霊に取り憑かれているゴスの小学生がチェーンソー抱えて殺人鬼もドン引きの暴走を始めたりしながら会場に着く……というようなものだった。
結果、言うまでもなく、ただの味のない闇鍋と化したこの話は永久に封じられたのだった。

エル・スーパービーストは覆面レスラーであり、映画監督であり、(ポルノ)俳優でもあり、そして実生活でもヒーロー。世界の誰からも好かれ、同じくらい嫌われてもいる。撮影を終え、いつものようにバーに繰り出したビーストは、No.1ストリッパーのベルベット・フォン・ブラックにベタ惚れするが、その直後彼女は頭にネジの生えた改造ゴリラに誘拐されてしまう。
下心満載のビーストは、ヒトラーの首をめぐってナチスゾンビと追っかけっこを繰り広げていた、腹違いの妹にしてスーパースパイのスージーXと共に事件を捜査する。するとその背後には、運命の花嫁を娶ることで世界征服に乗り出さんとするドクター・サタン(本名スティーヴ・ワショウスキー)の影が……。

ホラー映画、おっぱい、セックス、モンスター、尻、ロボット、おっぱい、サント映画、尻、ナチスプロイテーション、おっぱい、オレの嫁(の尻)、キャットファイト、おっぱい……と、すべてがロブ・ゾンビの好きなものだけでできている世界。おおむね同じものが好きなゾンビ監督のファンにもたまらない世界となっている……それだけに日本のゾンビファンのために国内盤が出ていないことが無念。車を飛ばしついでにマイケル・マイヤーズ(たぶんロブ・ゾンビリメイク版『ハロウィン』)を轢き逃げしたり、ナチスの古城にゾンビと狼男とセクシー女将校がいたり、バーに行けばフランケンシュタインの花嫁やら大アマゾンの半魚人やらエイリアンやら『シャイニング』のジャック・ニコルソンやら、果ては『デビルズ・リジェクツ』のファイアフライ一家や『ファスター・プッシーキャット キル! キル!』のヴァーラまでいるなんて、どんな理想郷だよ!!!
しかも何がスゴいかって、そんなカメオ出演的キャラクターのために、ビル・モーズリィ、シド・ヘイグ、ケン・フォリー、ダニー・トレホ、ディー・ウォーレス、そしてトゥラ・サターナらが直々に声を当ててくれているのだ! 
そしてそして音楽はゾンビ映画の常連にして『ザ・ペイル・エンペラー』ではマンソンと共同作業もしていたタイラー・ベイツ! さらにHard'n Phirmなるユニットが素晴らしくバカな曲をサントラに提供!(オススメは、ただただ画面上で起きていることをそのまま歌うだけの『Zombie Nazis』、あるホラー映画の有名シーンを丸パクリしたくだりの『The Old Bloodbath Routine』、日本人が毎日アダルトアニメでヌいてますとバラされる『Catfight!』です)好きなものを寄せ集めるなら徹底しないと、美味い闇鍋はできないのである。
あ、もちろん一番セクシーで一番強くて一番頼もしいスージーXの声は、大好きな嫁=シェリ・ムーン・ゾンビ。思えば『マーダー・ライド・ショー』のベイビーでもその傾向は表れていたとはいえ、こんなにもナチュラルボーンアニメ声だったとはな……。

しかし、そんな豪華な声の出演陣でも特筆すべきは、メインとなるキャラクターを担当するロザリオ・ドーソンポール・ジアマッティであろう。
ロザリオ=ベルベット・フォン・ブラックは、脅威のおっぱいと尻を誇るNo.1ストリッパーではあるが、口汚さと下品さもNo.1。かなりダミ声寄りになりつつ、モンスターもドン引きするほど明け透けな悪口雑言の嵐をまくし立てる。ここからNetflixの『ディフェンダーズ』シリーズの強くて優しい医師クレアの姿など到底浮かばないし、『シン・シティ』のゲイルにすら気品を感じてくる始末だ。
ドクター・サタンの声を充てるポール・ジアマッティも凄まじい。バカみたいな高笑いや情けない泣き声、勝手にドアを開けられた際の思春期みたいな絶叫、デビー・レイノルズの「タミー」をBGMに○○○○するウホウホハァハァ声まで! 余計なお世話でしかないのに俳優としてのキャリアを心配したくなるほどの暴走っぷりだ。
プロの声優(日本ならではの職業観かもしれないが)ではない芸能人が声の仕事をすることに苦言を呈されることが多々ある国内エンタメ、これぐらいの吹っ切れと技術力が必要とされているんじゃないだろうか。

無理やりな分類だがヒーローものと言えなくもない本作。しかし、実はそのヒーローたるエル・スーパービーストは、よくよく見れば結構ヤな奴だ。自分がカッコよく見えているかどうかが最大の関心事だし、その次に関心が高いのはおっぱいと尻だし、回想シーンに出てくる高校時代などはいじめっ子ジョックスの典型。日頃のゾンビ監督のホラー映画なら、比較的早いうちに死んでいるはずのキャラクターだ。むしろ、かつてイケてないオタクでいじめられっ子だったドクター・サタンのほうにシンパシーが湧くだろう。
それでもいじめられっ子の逆襲が世界を滅ぼすことを潔しとしなかったのは、はみ出し者魂が創造に向かったゾンビ監督ならではの視点なのか、問答無用のセレブリティでモテモテで物理的に強いヒーローというものに対する憧れなのか。まぁ、最愛の嫁の化身たるスージーがこんなにも輝ける世界なら、ぶち壊したくはないもんだよ。