2015年1月25日日曜日

2014年アルバム極私的ベスト5

2014年=喪失・離脱のその先。

その年の新作映画を観る頻度より新作アルバムを買う頻度が少ないので、ベストといっても5位までが限界だというのに、なぜここで大幅に出遅れたアルバムベストを出すのか。それは、こんなネタでも挟まないと、まがりなりにも映画・ロック地獄と銘打っているのに「ロック」のラベルが一向に増えないからである。まぁ、言ってるそばからマンソンの新譜買ったので、次のロック記事のネタは決まってしまったのだけれども。
ちなみに、映画サントラに関しては2014年映画極私的もろもろベストにベスト5があるので、こちらには入れていません。

1位 SLIPKNOT/.5: The Grey Chapter




#2ポールが亡くなってから初めて作られたアルバム。2013年のOzzfest Japanではポールの喪失を内包しつつの気迫だったが、ここで彼らは前進するためポールの思い出に一つの区切りをつけたように思えた(だからこその "So walk with me" であるように聞こえた)。昨年11月のKNOTFESTのステージを観て一層そう思えたし、バンドの状態が良好そうなのを観て、彼らにまた何度でも戻ってきてほしいとも思った。

↓リフのおどろおどろしさがたまらない「The Devil In I」。
MVには少しながらグロテスクなところもあるのでまったくダメな方は注意。


2位 TRIPTYKON/Melana Chasmata




『Eparistera Daimones』同様、長年熟成させた呪いの蓋を満を持して開封したかのようなドゥーム/ブラック。もちろんトム・G・ウォリアー(Vo.)の「う゛っ!!」も聴ける。ただし幕開けとなる1曲目は、Celtic Frost時代を彷彿させるスラッシュメタル風味。前作には19分25秒にわたる呪詛「The Prolonging」があったが、今回も12分25秒の「Black Snow」という知らない人にとっては嫌がらせのようなナンバーが。
本作のアートワークを手掛けたH.R.ギーガーは、2014年5月に死去。同じスイス出身のトムとは友人でもあり、Celtic Frostのころからアートワークを手掛けていて、トムのギターもギーガーモデル。これが最後のコラボレーションとなってしまった。

↓冒頭から7分の暗黒を。「Tree Of Suffocating Souls」


3位 WHITE EMPRESS/Rise Of The Empress




ディスクユニオンなどでたまたまかかっていた曲が気に入ってしまうことを一目惚れならぬ「一聴惚れ」と勝手に呼んでいるのだが、これがまさにそれ。デス声と女性のクリーンボイスとのツインボーカルだと思っていたら、どちらも同じ女性のボーカリスト(メアリー・ズィマー)だった。元Cradle Of Filthのポール・アレンダー(G)が携わるシンフォニックメタルとのことだが、Cradleよりも装飾が控えめになり、その分君臨する女帝(=ボーカル)が音楽を輝かせている。

↓猛々しい雪の女帝がおります。「Darkness Encroaching」


4位 MAYHEM/Esoteric Warfare




2014年1月の来日公演で重鎮ぶりを容赦なく見せてくれたので、「そろそろスタジオアルバムのほうでもカリスマ健在をガシガシアピールしていただきたい」などと言っていたら、本当にガツンガツンと猛アピールしてくださった。サウンドプロダクションが微妙に怪しいのは相変わらずだし意図的なところも多いのだろうが、それでもドラムがモコモコだった前作『Ordo Ad Chao』よりは向上しているほう。戦争によるカオスという世界観は『Grand Declaration Of War』にも通ずるものがあるが、まさか「宇宙実験」だの「催眠電波」だのうっすらSF風味も漂わせてくるとは……。


5位 WITHIN TEMPTATION/Hydra




『The Silent Force』『The Heart Of Everything』でシンフォニック・メタルを極めて以降、『The Unforgiving』でアメコミのようなコンセプトに乗り出したり、本作のように多彩なゲストを迎えたりと変化し続ける。もちろん賛否はあるだろうが、こういう風に一度様式美を作っておきながら凝り固まらないところは個人的に好きだ。中でも一番意外だったのは、ヒップホップ人脈からXzibitを迎えた「And We Run」。

ベタながら元Nightwishのターヤとのデュエットは最高に美しい。
↓「Paradise (What About Us?)」


どういうわけか、2014年のベスト3位内のアルバムアーティストは、メンバーを失ったり友人を失ったり、それまでのバンドを離れたりと、喪失や離脱を経験したばかりの方々になった。ベストには入らなかったが、昨年はMy Chemical Romance解散後のジェラルド・ウェイのソロアルバムもあった。
もっとも、彼らはすでに前進を始めている。どんな道を歩んでいくのか、まだまだ観ていきたい。

2015年1月18日日曜日

武器人間/ヒトラー最終兵器

東部戦線異状大あり。

ナチスとソビエトがトンデモな泥試合……いや血みどろ試合をくり広げてるのは、『Dead Snow 2 : Red vs. Dead』(処刑山2)だけじゃなかったらしい。いや、たぶん探せばまだ出てくるだろうけど、今回はとりあえずこのあたりで勘弁しといてもらえませんか。長時間一人で観てるとある意味で疲労困憊するから。

武器人間('13)

監督:リチャード・ラーフォースト
出演:カレル・ローデン、ジョシュア・ザッセ



第二次世界大戦下、ナチスドイツとソビエトの攻防が続く東部戦線。味方からのSOS信号を受信したソ連の特殊部隊は、発信元と思われる教会に辿り着いた。しかし、発見したのは死体の山と、謎の地下施設と、おぞましいクリーチャーの数々。そこでは、フランケンシュタイン博士の末裔が、人体と機械とを融合させた改造人間を製造していたのだった。

ソ連の特殊部隊に同行した戦争プロパガンダ映画撮影班のフィルムに残されていた映像……という設定のはずだが、フィルム映像ノイズなしスゲェクリア! ナチスもソビエトもノー母国語で英語ペラペラ! このあたりで時代背景だの軍事知識だの細かい話はぶん投げるよう心がけよう。
POVものにおいて最後までカメラを回し続ける奴は、報道義務にあふれすぎているかウザいばかりというパターンが多い。本作のカメラマン=ディミトリは、実は切羽詰まった背景があるとはいえ、POV主人公トップクラスのクズ男。クズがどうにもまとまりのない部隊を映し、彼らがモメたりブチ切れたりで、最終的にご対面するのはマッドサイエンティストで、さらにその後……と、敵にも味方にもロクな人間がいない。
その点、邦題になった武器人間たちは、みんな任務(=殺戮)に忠実で、作り主に忠誠心があって非常にエラい。口にドリル、手がハサミ、頭がプロペラだったりアイアンメイデンだったりと重量感たっぷりで、洗練されているとはいえないがオタク心に刺さるデザイン。『アイアン・スカイ』もそうだが、黒々とした重金属はなぜかナチスと相性がいいし、オタク心にもフィットするのである。造形美よりインパクト重視で作られているので、生体パーツのツギハギが多少どころじゃなく粗いのはご愛嬌だ。
しかし、明らかに殺傷用に作られていながら、ギリギリまで近づいているはずのディミトリに大した傷も負わせられていないのは、やはりみんな頭が重くて視界不良なんじゃないですかね。「武器人間」としては致命的なんじゃないですかね。ケーブル一本切られたら停止しちゃうプロペラマン、大丈夫ですかね。殺傷用じゃなくて助手として作られてるオッペンハイマーさんやエヴァちゃんやポッドマン(別名ハンス君)のほうが使える子なんじゃないですかね。特に、博士の後をよちよちついて回るハンス君の愛らしさときたら! まぁ、そういう欠陥がまた可愛い奴らなんだけどね。言うまでもないけど、ここは脳ミソや内臓のモロ出しに耐えられる人に限る価値観だからね。
ちなみに、フランケンシュタイン博士を演じたカレル・ローデンは、『ヘルボーイ』でラスプーチンを演じていた、ナチスとソ連を渡り歩く怪人俳優。今回も常人では理解できない新世界への道を開くべく、新人類の誕生に熱を注いでいる。「ちょっと共産主義が多いな……」「また作るさ!」の名言には、天才の思考力半端ねぇなと脱帽したものです。

ヒトラー最終兵器('13)

監督:キアラン・パーカー
出演:ブライアン・ラーキン、イヴァン・カマラス




第二次世界大戦下、ナチスドイツとソビエトの攻防が続く東部戦線。極秘の地下研究施設へ向かうナチスの一隊を殲滅させたソ連の特殊部隊は、逆に奇襲に遭って捕まり、研究施設へと送られてしまう。そこでは、ナチス開発・最強のバイオソルジャーが製造されていたのだった。

ソ連の特殊部隊に同行した撮影班のフィルムに残されていた映像……という設定はないから画面がノイズなしスゲェクリアでも問題なし! だけどやっぱりナチスもソビエトもノー母国語で英語ペラペラ! やっぱりある程度細かい話はぶん投げるよう心がけよう。
日本版ではバイオソルジャーと銘打たれたナチスの改造兵士だが、皮膚のボロボロ具合やツギハギ具合からして、要は限りなくゾンビソルジャー。ただ、並みのゾンビに比べると結構なパワーファイターである。一応、脳ミソも並みのゾンビよりはありそうだが、上からの殺人命令以外のコミュニケーションは困難で、ほぼ猟犬扱い。実際、鎖でつながれて4足歩行してるのもいるし。処刑山ゾンビたちや上記の武器人間と比べると、愛嬌やキャラ立ちはないが、兵士としては格段に使える奴らである。
研究施設から脱出しナチスの計画を阻止するため、捕らわれたソ連特殊部隊員はこのバイオソルジャーとの苦戦を強いられる……はずだった。しかし、改造人間でもなければ特殊な血清を打ったわけでもない特殊部隊隊長・ドロコフさんが、地味な佇まいながら実は最強のおじさんだったのだ!! ナチスに捕まって早々、部下がバイオソルジャーに殺されたのを目の当たりにしたドロコフさんは、なぜかタンクトップ1枚になり「かかってこいやぁぁぁ!!!」(超訳)とそいつらを立て続けに素手でブチ殺し、さながらえげつないダイ・ハード。その無双ぶりに「こいつは実験に使えそうだなぁ」と別室に閉じ込められるも、素手で手錠をぶっちぎりドアをぶち破り、シュワルツェネッガーのごとき怪力。力任せなだけでなく、ナチ軍服をお借りし、敵の背後から忍び寄ってはナイフで仕留めていくメタルギアソリッド戦法も大活躍。そしてしまいには、銃撃の雨と爆薬でもって敵を殲滅するエクスペンダブルズ戦法へ……! 
ゾンビだらけのエグい戦いになるのかと思いきや、実はまさかのオヤジ無双映画。しかも、ナチスの一部隊やバイオソルジャー複数体よりもデキる奴。もう邦題を『スターリン最終兵器』に改めてもいいんじゃないですかね!?

なお、『ヒトラー最終兵器』の原題は『Outpost Ⅲ:Rise Of The Spetsnaz』。これ以前に『ゾンビ・ソルジャー』(Outpost)『アウトポスト BLACK SUN』(Outpost: Black Sun)という2作があって、本作はその前日譚という位置づけのよう。ソ連との戦いは終わっても、ナチスのバイオソルジャーはご健在だったのか。


ということで、現時点ではナチスとソビエトのトンデモ戦線ものはいったんお休みしてもよさそうな気がしている。しかし、トンデモ系ナチスものに関していえば、まだ観たい気がしてしまう。『ゲシュタポナチ死霊軍団 カリブゾンビ』とか……。
それもこれもすべてこいつが悪いんだよ! 『Dead Snow 2 : Red vs. Dead』が面白すぎるからだよ!!

2015年1月1日木曜日

新宿ミラノ座閉館に寄せて

映画バカ人格の生みの親。

2014.12.31.新宿ミラノ座、閉館。


私の初劇場観賞洋画は『ネバーエンディングストーリー3』('94)だった。しかし、本格的に映画にのめりこむには、1998年初頭にミラノ座で『フィフス・エレメント』(公開は1997年末)を観るまで待たねばならなかった。そこから『メン・イン・ブラック』でまだ宇宙人を取り締まる側だったトミー・リー・ジョーンズと出会い、『フェイス/オフ』でニコラス・ケイジを人生初スクリーンヒーローとし(裏地の赤いロングコートと横跳び二丁拳銃はいまだに憧れ)、『ジャッキー・ブラウン』でタランティーノとタラが愛したブラックミュージックを教えられた。
このミラノ座4連続コンボによって、私は10年以上にわたり映画バカ街道を邁進することになったのだった。

余談だが、いまだに覚えているのが『フェイス/オフ』公開時に場内にフェイス/オフフレームが使えるプリクラが置いてあったこと。もともとプリクラなぞ自主的に撮ることもないし「何だあれ?」とちょっと気になっただけだったが、観終わるころにはいろいろな意味ですっかりハマっていたので、完全にプリクラ撮りたいモードになっていた。が、すでにその日の最終上映だったため、プリクラはもう営業停止していたのだった。
その次にミラノ座に来るころにはプリクラは撤去されていたので、もはや撮影の機会は永久に失われた。どうでもいいことだが、これは本当にいまだ引きずる後悔である。一体どんなフレームがあったのだろうか……。

↓人生を(どちらかというとボンクラなほうに)変えた作品たち。↓

4つのスクリーンを抱え、巨大なスクリーンに相応しい大作から思いがけないB級、上映劇場が希少となりつつあるセガール映画まで上映してくれたミラノ座。特に大作を観るときに嬉しかったのは、座席のゆったり具合である。ブロック最前列ならずとも悠々と脚を伸ばせる余裕のあるインターバル。シネコンに多い詰まり気味の座席とは大違い。よく上映前に「前の座席を蹴らないように」ってアナウンスが出るけど、これだったら体勢を変えたときにうっかり蹴飛ばす心配もないでしょう! もともと脚の長さもないけど。また、舞台挨拶用なのかスクリーン前にもだいぶ余裕があるので、かなり前方で観ても首が痛くならない。
それに、これだけ劇場が広いと、シネコンとちがって場内で誰かがコンビニ飯かスナックをガサガサやってても気にならないんだよなぁ。

↓最大でこの規模だもんな(ミラノ1)。
一番小さいミラノ3でもゆったりしてるんだよ。

そんなミラノ座が最後に実施してくれた『新宿ミラノ座より愛をこめて ~LAST SHOW~』。かつてこの劇場で大ヒットした映画ラインナップのリバイバル上映である。観たい作品は数あれど、時間に限りがあるため、実際観られたのは『男たちの挽歌』『マトリックス』の2本だけ。それでも、兄貴を助けに二丁マシンガンで戻ってくるチョウ・ユンファ、キアヌ・リーブスのブレット・タイム、そしてエージェント・スミスには感動させられっぱなしだった。特にキアヌのブレット・タイムでは、このシーンに熱くなる人たちが多かったせいか、客席の空気が変わったように思えたよ。そして上映後には(『マトリックス』では上映前にカーテンが開いたときから)惜しみない拍手が送られた。
ちなみに、上映前には支配人さんからご挨拶と作品解説があった。『マトリックス』については、「試写会を行った当時、若手社員はハマったが年配社員は首をかしげ、当たらないと踏んでいた。現実の大ヒットを受け、若手は内心ガッツポーズをした」との裏話が。また「キアヌ・リーブスの高速弾避けは、当時多くの人が真似しました」とのエピソードも。確かにいたなぁ。学校でマトリックスごっこやろうとした結果、腰を押さえて「痛てててて……」ってなってる奴らが。……いや、私じゃありませんよ。私はエージェント・スミスの口調を真似しようとしてた(そして挫折した)だけです。

ちなみに『マトリックス リローデッド』はエージェント・スミスが増える映画です。
『マトリックス レボリューションズ』はエージェント・スミスがもっと増える映画です。

今回はのびのびと映画を観られる劇場がなくなってしまうだけじゃなく、映画バカたる私の造物主となった劇場がなくなってしまったのだな。
ミラノ座さん、長年お世話になりました。どこまでもありがとう。