2013年12月31日火曜日

2013年映画極私的ベスト10

2013年=イイやつには「悪」がつく年。

いかんせん今年は新作だけでも80本近く劇場観賞したので、ベスト10本に絞るのに苦心。それ以上に、絞り込んだあとの順位のつけ方でも苦心。2012年ベストでも、順位のつけ方に困ってましたが。
で、その結果、新作ベストにもリバイバルベストにも、タイトルに「悪」がつく作品がやたらランクインすることに……。ちなみに、ベストには入れられなかったけど、『悪いやつら』も実に素晴らしいほど特濃暴力&ゲスだらけ韓流映画です。

1位 パシフィック・リム
そりゃ劇場に20回観に行っちゃうほど(うち2回は爆音/絶叫上映)ドハマりした映画だけど、これが1位でいいものなのか……と結構迷ってました。しかし、2012年には「月面ナチスが来たぜうぉぉぉぉぉ!!!」な『アイアン・スカイ』がボンクラパワーで1位になったので、「KAIJUと巨大ロボが戦うぜうぉぉぉぉ!!!」な本作が1位でもいいか、ということで決定。

2位 悪の法則
コーマック・マッカーシーの描く世界はいつでも誰にでも容赦ない。それでも惹きつけられずにはいられない。彼女とフェラーリとの「婦人科的すぎてセクシーじゃない」セックスシーンにビビりつつ、彼女から離れられないバルデムさんみたいなもんですか?

3位 マニアック
劇場公開時の残酷シーンにボカシ問題という課題はあったものの、思わず泣けてくるほど切ないラストという、この手の映画には意外な展開が大いにプラス。

4位 キャビン
ホラー映画愛してます! ホラー映画のお約束愛してます! だからホラー映画のアレとかコレがアベンジャーズ・アッセンブル! 最凶無敵のその先へ!! ……というラブレター。

5位 アイアン・フィスト
信念を貫くことの大切さを教えてくれる映画。「カンフーが好きだ!! ヒップホップが好きだ!! 『北斗の拳』が好きだ!! だから全部オレの映画デビュー作にぶち込むのが筋ってもんじゃあぁぁぁ!!!!」っていう。

6位 地獄でなぜ悪い
映画撮ったことはないけど、映画大好きな人間としては、映画1本にここまで命をかける意気込みが欲しいなぁって思ってしまいますよ。

7位 凶悪
山田孝之のみならず観客まで魅了するピエール瀧&リリー・フランキーが凶悪。正義を追及しているはずがどんどん業が深くなっていく山田孝之の顔が凶悪。思いがけなく池脇千鶴が凶悪。これを観ているお前は凶悪じゃないといえるのか? と尋ねてくるこの映画が凶悪。

8位 フィルス
『ビトレイヤー』では膝の古傷に溜まった膿を出し続ける日々、『トランス』では実は性癖がアレな男だったジェームズ・マカヴォイの2013年ヨゴレ集大成。

9位 イノセント・ガーデン
「足首から先がエロい」というタランティーノ的感性を理解できる作品。もとい、細やかな音や色彩や仕草から、美しさと危うさとエロティシズムがにじみ出る作品。

10位 飛びだす 悪魔のいけにえ/レザーフェイス一家の逆襲
あの伝説の作品が3Dで甦る! 己のルーツをたどり、失われた家族の絆を取り戻す、2013年一番の感動巨編――!! ……何か間違ってますか?

次点には『ジャンゴ 繋がれざる者』『塀の中のジュリアス・シーザー』『ラストスタンド』『悪いやつら』『コズモポリス』など……と、鑑賞映画が多いと次点もたくさんつけたくなってしまい、もうベスト30ぐらいまでおよんでしまいそうな。
そこは自重しましたが、自重しきれなかったリバイバル映画ベストだけは挙げさせてください。

2013年極私的ベストリバイバル映画


1位 悪魔のいけにえ2(in 吉祥寺バウスシアター/爆音映画祭)
2位 グラインドハウスU.S.A.版(in 新橋文化劇場)
3位 悪魔の毒々モンスター(in 新宿武蔵野館)
4位 ロックンロール・ハイスクール(in オーディトリウム渋谷/コーマン・スクール)
5位 スキャナーズ(in 新宿武蔵野館/デヴィッド・クローネンバーグ/受胎)
6位 カリフォルニア・ドールズ(in オーディトリウム渋谷)
7位 プッシャー トリロジー(in オーディトリウム渋谷)
8位 キャリー(1976年版)(in 新橋文化劇場)
9位 ダークナイト(IMAX版)(in ユナイテッド・シネマとしまえん)
10位 怪物の花嫁(in 新橋文化劇場)

劇場名もプラスしたのは、リバイバル作を観る劇場も大切な場合があるから。例えば、2位の『グランドハウス』や10位『怪物の花嫁』なんか、キレイなシネコンより、高架下の電車ガタゴト音&ワンカップ酒とオニギリの臭い漂う名画坐で観るほうが雰囲気を味わえるってもんです。


2013年は、極私的「いつか本物を近くで見てみたいよ」(ニュート談)が叶った年でもありました。
5月には、ハリウッド・コレクターズ・コンベンションNo.2で、『エルム街の悪夢』のフレディ・クルーガーことロバート・イングランドにご対面。近くで見るどころか、サイン&ツーショット写真獲得。欲をいえば、ハリコンNo.3で処刑人兄弟も近くで見たかったなぁ。
7月には、爆音映画祭の『悪魔のいけにえ2』リバイバルで、『飛びだす 悪魔のいけにえ』PRのためチェーンソーをぶん回しにきたレザーフェイス君に遭遇。こちらも近くで見るのみならず、どさくさに紛れてツーショット写真を撮ってもらうに至った。
そして9月以降はイェーガーとKAIJU!! といっても、DC&ワーナーフェスには行けなかったので、ないふへっど君と記念撮影はしていない。リバイバル上映のたびに前方列で『パシフィック・リム』を観賞し続けたってだけなのだが、一応「本物を近くで見た」体験にカウントしておきたいところ。一度は最前列で観賞したわけだし。あのときばかりは一部始終を最前列で観たいジグソウ(『ソウ』シリーズ)の気持ちが分かったよ。

2013年映画極私的もろもろベスト

どうでもいいと思うか、ニヤリとするか、それが問題だ。

「映画にまつわる雑惑」ラベルでは、かなり変な視点から映画を楽しんでいたりもすることだし、こんな見方/楽しみ方もありますよという参考までに。参考にならない確率のほうが高そうだが。

2013年ベストオープニング

1位 パシフィック・リム
2位 マニアック
3位 2GUNS

イェーガーを起動しKAIJUと戦い陸地に辿りつくまで、標的のあとをつけて殺人に至るまでと一連のキモを描いて心を掴んだ1位と2位。3位は主人公コンビのキャラを説明する軽妙なやりとりがツボだった。


2013年ベストタイトルバック

1位 アイアン・フィスト
2位 飛びだす 悪魔のいけにえ/レザーフェイス一家の逆襲
3位 ジャンゴ 繋がれざる者

2位は、伝説の1作目の名場面を3Dで観られたという上げ底があるので、だいぶズルいですが。


2013年ベスト映画音楽

1位 パシフィック・リム
    ロード・オブ・セイラム
2位 フィルス
3位 オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ
4位 コズモポリス
5位 地獄でなぜ悪い
    マンボーグ

ラミン・ジャヴァディとクリント・マンセルは信用できる音楽担当。昔のゲーム音楽みたいなチープさが良かったので、急遽『マンボーグ』も入れました。同率5位の『地獄でなぜ悪い』は、ほとんど「全力歯ぎしりレッツゴー♪」効力。
 
 

2013年映画ベスト名言

1位 「世界は滅亡しようとしている。どこで死にたい? ここか、イェーガーの中か!?」(パシフィック・リム)
2位 「婦人科的すぎてセクシーじゃない」悪の法則
3位 「オレはお前に救ってほしかったのに」(コズモポリス)
    「オレに助言する資格はない。だが、お前が間違ったときには、反面教師にしろ」(フィルス)
4位 「芸術を知ってから、この監獄は牢獄になった」(塀の中のジュリアス・シーザー)
5位 「逃げたら殺す。完成しなかったら殺す。上手く出来なきゃお前を殺す」(地獄でなぜ悪い)
    「あっ、コレ先生関係なかったわ(笑)」(凶悪)


2013年映画ベスト迷言

1位 「Welcome to hell ...」(G.I.ジョー バック2リベンジ)
     「天皇陛下! It's standing!!」ABC・オブ・デス『Zetsumetsu』)
2位 「2000万やるからあっち向いてろ!」(ラストスタンド)
3位 「あんたを好きになりかけてたのに!」(REDリターンズ)

というわけで、2013年総合映画迷言賞はイ・ビョンホンです。


2013年声に出して読みたい映画タイトル

1位 チキン・オブ・ザ・デッド 悪魔の毒々バリューセット
    飛びだす 悪魔のいけにえ/レザーフェイス一家の逆襲
2位 バーバリアン怪奇映画特殊音響効果製作所
3位 オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ

ただし、2位のタイトルはちゃんと間違えずに言えた試しがありません。


2013年ベストホラーヒロイン

1位 ヘザー(アレクサンドラ・ダダリオ)(飛びだす 悪魔のいけにえ/レザーフェイス一家の逆襲)
2位 エリン(シャーリー・ビンソン)(サプライズ)
3位 キャリー・ホワイト(クロエ・グレース・モレッツ)(キャリー)

度胸とスキルのみならず、芸術センスもまさにソーヤー一家の血筋なヘザーちゃん。サバイバーキャンプパワーで驚異の状況適応力と判断力を身に着けたエリンちゃん。血まみれや超能力を差し置いて、女優パワーが突き抜けたキャリーちゃん……いやむしろクロエちゃん。


2013年ベストゲス野郎

1位 ラド(ベニチオ・デル・トロ)(野蛮なやつら SAVAGES)
2位 ブルース・ロバートソン(ジェームズ・マカヴォイ)(フィルス)
3位 チェ・イクヒョン(チェ・ミンシク)(悪いやつら)

真のゲスたる者、仁義など捨てるべし。真のゲスたる者、器を小さく持つべし。真のゲスたる者、みみっちくあれ。真のゲスたる者、唾か小便を引っかけられる経験はすべし。


2013年映画ベスト空回り

1位 キッド・ブルー(LOOPER)
2位 ストームシャドー(G.I.ジョー バック2リベンジ)
3位 コルテス(ラストスタンド)

目標間近でシュワのバックドロップに沈められたコルテスも、いつもの癖で脱いじゃったばかりに火傷→せっかくの空中戦シーンで袋詰め空輸に終わったストームシャドーも、たいへんよく空回りました。しかし、やること為すことすべてがキレイに裏目に出てしまうキッド・ブルー君こそ、2013年に、ひいては映画史上に君臨する空回り王といえましょう。なんかもう他人とは思えないし。


2013年映画に学ぶ間違った教訓

1位 宇宙に行くならジョージ・クルーニー必携(ゼロ・グラビティ)
2位 メモリーはラッセル・クロウで残せ(マン・オブ・スティール)
3位 殺人鬼対策はサバイバーキャンプで学べ(サプライズ)

2013年ベスト夢のガジェット

1位 イェーガー(パシフィック・リム)
2位 ゼン・イーのXブレード(アイアン・フィスト)
3位 ファイアフライのホタル爆弾&バイク爆弾(G.I.ジョー バック2リベンジ)

技術者の皆様、どうかこれらのガジェットを実用化してください。破壊と血しぶき以外の使い道が分かりませんが。あ、でもKAIJUが襲来してきたらイェーガーの出番ですよ。

2013年12月25日水曜日

悪の法則

シガーがいなくても、そこは血と暴力の国。

悪の法則('13)
監督:リドリー・スコット
出演:マイケル・ファスベンダー、ペネロペ・クルス




①きっかけは、ほんの出来心で少しばかり道を踏み外したこと。
②結果として、コントロールできない脅威に呑みこまれる。
③それまでの価値観も経験も理念も、もはや何の役にも立たない。
④コントロールできない脅威は、大して関係のない人間にすら容赦ない。
⑤取り残されることは、時として殺されるのと同じくらいむごい仕打ちになる。
⑥観客すら、不条理な世界に取り残されたまま幕を閉じる。
⑦テキサス~メキシコの間に、崩壊しゆく世界の縮図を描く。

コーマック・マッカーシーは作品比較されたくないかもしれないが、本作と『ノーカントリー』にはざっとこんな共通項がある。『血と暴力の国』は『ノーカントリー』の原作本のタイトルだが、本作にも当てはめられそうだ。

順風満帆な人生を送る、カウンセラーと呼ばれる弁護士。エル・パソに高級な住居を構え、アムステルダムで高価なダイヤを買い、恋人ローラにプロポーズしたばかりだった。ただ、少しばかり欲を出して、実業家の友人ライナーとその恋人マルキナとともに、メキシコの麻薬カルテル絡みのビジネスに手を染めていた。ビジネスに関わる裏社会のブローカー・ウェストリーからは、カルテルの恐ろしさを警告されたものの、カウンセラーはさほど理解できていなかった。
やがて、カルテルの運び屋の青年が惨殺され、運んでいた荷物が持ち去られた事件により、ビジネスに綻びが生じる。その綻びは瞬く間に脅威と化し、カウンセラーと周囲の人間たちを呑みこんでいく。

本作の原題は『The Counselor』。主人公の職業(弁護士)であり、周りからの呼び名。ベタな話だが、巻き込まれた名無しの主人公は、自分を含めた誰にだって置き換えられる。
『ノーカントリー』では、アントン・シガーという人間1人が、生と死の不条理を体現していた。本作には、不特定多数の悪党が出てくるが、彼ら1人1人はシガーのように強く印象に残る人間ではない。例えば、あるシーンでバイクの高さをスッとメジャーで測ってスッと去って行く1人の男のように、淡々と自分の作業をこなしては退場していくだけ。
ただ、その淡々とした作業からもたらされる結果は、恐ろしくむごい。裏切った(とみなされた)人間に対する報復すら、淡々とした作業にすぎない。しかも、そこに「言い分を聞く」なんて概念は存在しないし、裏切りの関係者とおぼしき人間が実際無関係だろうと片足つっこんでいようと関係ない。1人1人は強力ではないが、彼らがひとたび動き出したら、止める術はないのである。
明確な1人ではなく、集団としての「コントロールできない脅威」が描かれているわけだが、正直悪党たちの動きの全体図はよく見えないまま。したがって、強いていうなら、コントロールできない脅威をもっとも具現化しているのは、映画史上屈指の嫌な処刑器具「ボリート」かもしれない。

ところで、直接的にはストーリーと関係ないのだが、本作で強烈な印象を残すエピソードが、ライナーがカウンセラーに語る「マルキナがフェラーリとセックスした話」。魅惑的と思われたものがグロテスクに転じるのを目の当たりにし、恐怖すら覚えながら、それでも離れがたいというライナー。相手を脅かしつつも魅了し絡め取ることは、コントロール不能な脅威とはまたちがったベクトルで厄介な悪なのかもしれない。下手すると、絡め取られているのは観客のほうだったりもするし。

「誰が悪の法則を操るのか?」という予告や惹句が謎解きサスペンスのような雰囲気を醸し出しているが、本作はどう見ても犯人探しのミステリではない。むしろ、コーマック・マッカーシーが描く残酷な世界を、誰が生き残れるのかがキモなのかもしれない。それは、世の中の残酷なルールを知っていて、自分はそのルールを操る側ではなく、ルールの一部なのだということも知っている人間だ。

2013年12月9日月曜日

アイアン・フィスト

RZAはオタクの秘孔を突いた!! 「お前はもうハマっている」

アイアン・フィスト('13)
監督:RZA
出演:RZA、ラッセル・クロウ



権力はセックスとバイオレンスでつかむもの(本作のルーシー・リュー談)だとしたら、オタクの心は好きなものに対するジャングルより深い愛情と、鉄が打てるほど高温の情熱でつかむものなんでしょうかね。

中国はジャングル・ヴィレッジにて、ギャングたちの抗争に巻き込まれて両腕を切り落とされた鍛冶屋(ブラックスミス)が、鉄の拳を装着し、復讐の戦いに臨む!! 血しぶきと手足が飛ぶ残虐カンフーバトルにヒップホップ!! 踊るチャイナガールにヒップホップ!! 主演オレ!! 脚本オレ!! 監督もオレ!! 音楽もちろんオレ!!! キャストにはオレの憧れのスターたち!!! 
……と、RZAは映画界本格デビューにあたって、オタクの夢のシナリオをすべて実現してくれた。夢のサポートをしてくれたのが、クェンティン・タランティーノとイーライ・ロスっていうのがまた嬉しい。
ハードな鍛冶屋の仕事やってて、鋼鉄の拳を持って戦うわりにはそんなに筋肉ついてるように見えないRZAだが、そこは「実はオレにはかくかくしかじかで壮絶な過去が……」という取ってつけたような(そしてリュック・ベッソンが好きそうな)設定でカバー。そう言われれば、RZAの目って一度死んで悟りを開いたような目ですよね。錯覚かもしれないけど。
ちなみに、私自身はカンフー映画に詳しいほうではないのだが、それでも本作に詰まった敬意と愛情はビシビシ伝わる。熱意をもって取り組めばジャンルを超えてファンが集うということは、今年の夏『パシフィック・リム』も証明してくれたところです。

タイトルにもなっている鉄の拳が活躍するのはだいぶ後半になってからだが、装着してからはまぁ期待通りの破壊劇を見せてくれる。また、鉄の拳が登場する前から、各キャラクターが持っているガジェットの数々が観ていて楽しい。
例えば、ラッセル・クロウ演じる謎のイギリス人ジャック・ナイフが持っている、ナイフと拳銃の合体拳銃。銃とナイフが一緒になってれば強いんじゃね? というチャイルディッシュな発想の具現化のよう。いざ使ってみると結果はわりとムゴイが、その一方で下ネタとしても有効だったりするので相殺扱いでいいだろうか?
ルーシー・リューのトゲトゲ扇は、実は『ジェヴォーダンの獣』のモニカ・ベルッチと被ってしまっているのだが、こちらのほうがより豪快な使い方。
豪快といえば、何の説明もなく肉体が自由自在に鋼鉄化するブラス・ボディ。WWE出身のデヴィッド・バウティスタってだけでも勝ち目ないのに、金属になっちゃったらもう反則技の極み。
中盤に登場する双飛(ジェミニ)の組み合わせブレードもイイが、それ以上に男女が組体操技みたいな構えで戦うのがアツいポイント。女性のほうはホットパンツだし。
中でも一押しは、ゼン・イーのXブレード鎧。全身に大小さまざまの刀が仕込まれているのだが、どうやって収納しているのか、どういう仕組みで刃が出てくるのかまったく分からない。マジメに考えたらそんな鎧作れるはずがない。しかし可能なのだ! オタクスピリットがあれば! 刀なんていくらでも鎧に収納できるし、刃だって気合いで出せるのだ!!

自分が大好きなカルチャー(カンフー映画と北斗の拳)に、自分が担ってきたカルチャー(ヒップホップ)をごた混ぜた必殺技で、オタクの秘孔を突いてトドメを刺す。最強の拳っていうのは、RZAの手腕のことかもしれない。

2013年11月25日月曜日

空飛ぶモンティ・パイソン 第2シリーズ第7話



アッティラ・ザ・ハン・ショー
第1シリーズ第13話「アッティラ大王の自首」でもネタにされてた、ヨーロッパ大陸で大殺戮をくり広げた遊牧民族の王アッティラ……とその家族の日常を描いた昔のホームドラマ系シチュエーションコメディ。英雄といわれようと残虐といわれようと、アッティラは家族へのおみやげに敵の首を持って帰ってくるマイホームパパなのです。

アッティラ・ザ・ナン
アッティラがもしハンじゃなくてナン(尼僧)だったら、暴走族なんでしょうかね……?

病室のストリップ
診察からこっちを想像するのは、国を問わない共通の煩悩なんでしょうかね……?

政治家のストリップ
テリーJの脱ぎ芸真骨頂。

政治家のグルーピー
ロックスターのグルーピーみたいなのじゃないにしても、ファンがつく政治家って信用性薄いイメージが。

キラー・シープ
羊ってさ、基本おとなしいイメージだし、童話においては被害者イメージだけど、実は目が無感情だから近くで見ると怖いよ。それに群れで押しかけてきても怖いよ。

アホと現代社会
田舎のアホと都会のアホでは、なまじ家族のコネと財産と学歴があるだけに、後者のほうがタチ悪いようです。パイソンズも毎回のようにネタにしてるし。

変なクリケット中継
クリケットについてはまったく知らないし、調べてもルールを一向に把握してないんですが、本当に厳格にルールに乗っ取って試合すると4日ぐらいかかるってマジですか? そりゃ観客の今にも死にそうな爺ちゃんが本当に死んじゃうぐらいうんざりするわ。
あと、最後におまけみたいについてきた家具の競馬中継、さりげなくスタンドで司祭がはしゃいでましたね。

クイズ、頭に一発!
クイズの謎な賞品よりも、テリーJおばちゃんよりも。笑顔で毒舌&威圧的な司会者のジョンよりも、背後でスリット入りドレスを着てるグレアムに注目してしまうよ。

空飛ぶモンティ・パイソン 第2シリーズ第6話

約1年と10ヵ月パイソンズスケッチ記録をほったらかしていた間に、ジョン・クリーズ吹替えの納谷悟朗さんとマイケル・ペイリン吹替えの青野武さんが亡くなり、その一方で本家パイソンズはなぜか今ごろグレアム・チャップマンの自伝をアニメ映画化し、再結成まで果たし、そして私はメンバーのパイソンズ後の企画『フォルティ・タワーズ』『リッピング・ヤーン』のDVD‐Boxを買いました。最後の項目は無視しなさい。



これがBBC商法だ!
正確には「これが商売だ」という、どうやって自分らテレビ出演者が大金稼いでいるかを紹介する番組。たぶんその稼ぎ方はBBCに限ったことじゃないよ。
吹替え版では「暮らしの知恵」という番組で、テレビ受信料の見返りに水割りもらえますというウソ情報を流してくれる。

時間ですよ!
「3分前です」「3分後には○○時になります」と要らん時報がだだ流れしてくるのは、番組スタッフが退屈だったかららしいのだが……吹替えではさっきの情報番組が不当な金品を要求していると伝える一方で、我々には関係ないとしっかり責任問題を回避している。

オープニング
この回、オープニングアニメーションの冒頭およびタイトルがブラックアウトにより映らないという、ある意味前代未聞の事態が。パイソンズ的にはごく当たり前なのかもしれないが。

表彰式
カトリック系学校の成績優秀者を牧師が表彰する式典……で何かが起こる。表彰されるような功績のない学校生活だった身としては、これぐらいとんでもない事件が起きてくれたほうがいっそ楽しいと思うよ。グレアムのニセ中国人はちょいと問題だろうけど。

パクリ映画専門監督、L.F.ディブリー
前スケッチの表彰式は、『if もしも……』という映画のラスト部分だったらしい。そして、この映画を撮った監督ディブリーさんの作品は、『2001年宇宙の旅』『真夜中のカウボーイ』『裏窓』と、どこかで聞いたようなタイトルがズラリ。もっとも、類似点はタイトルだけですが。
ちなみに本家『if もしも……』は、『時計じかけのオレンジ』のアレックス君ことマルコム・マクダウェル主演です。

事件ですよ!
外務大臣をポイするのはともかく(?)、中東ネタは今や当時以上にアウトなような……。

おまけ!
リニューアルオープンしたてのドラッグストアで、買い物のおまけに絶対使わないコスメのサンプルもらったときには困ったもんだったけど、こっちのおまけはそんなもんの比じゃないくらい困る。吹替えでは、納谷さんの渋い声で「う○こです」と精神年齢の低い便所ネタが聞ける。

サムライ
テリーG監督作『未来世紀ブラジル』の、巨大サムライが現れるシーンの雛型に思える。

ティミー・ウィリアムズの部屋
ティミーの口癖が「スーパー! スーパー!」なのは、第1シリーズ第10話のアーサー・ツリーと同じ。と思ったら、どちらもデヴィッド・フロスト(『フロスト×ニクソン』のフロスト)のパロディキャラだった。この手の無節操芸能人は、時代・国を問わず存在するもんだ。

鼻長男のインタビュー
大きい鉤鼻=ユダヤ系の特徴。自分のひいきの俳優の中だと、ヴァンサン・カッセルが顕著。とはいえこれだけバカでかいつけ鼻で、指摘されるとすぐ「差別だ!」とキレるって描き方は本来かなりマズい。「事件ですよ!」で中東をバカにしたので、ユダヤもバカにして相殺?

戸籍係にて
戸籍係で「結婚したいんですが」と言ったところ……もういっそ何かにつけてめんどくさくなったら、全員で結婚しちゃえばいいと思うよ。

ホクロ王子の冒険
このアニメ、ある単語が検閲に引っかかり、ナレーションが一部差し替えられる事件があった(そのため、もともと女性ナレーションなのに、一ヵ所唐突に男性の声になる)。しかし、なんで「癌」がダメで「壊疽」がOKなのか……。

選挙速報スペシャル
賢者党(Sensible Party)対バカ党(Silly Party)の選挙選。たまに「ちょっとバカ党」「すごいバカ党」が出ている選挙区もあり、つまり政党の多くはバカなわけで……さらに付け加えると、賢者党も果たして政治家として賢いかどうかは保証できないわけで……確かなのは、なぜかバカな候補者ほど名前が面白いってことです。

2013年11月20日水曜日

パシフィック・リム爆音上映会@立川シャッタードーム

(ドリフトで)酔った勢いでやらかした。後悔はしていない。

パシフィック・リム爆音上映会(3D吹替版)
2013. 11. 16. 立川シネマ・ツー 立川シャッタードーム



10年前の自分に告ぐ。良い知らせと悪い知らせとどっちから聞きたい?
……悪い知らせか。悪い知らせは……10年後、君はとある映画の登場人物のコスプレで劇場に駆けつけ、上映中に「ロケットパーーンチ!!」と叫ぶ大人になっている。
良い知らせは……その映画のおかげで「21世紀初のカルト映画」と呼ばれる現象にリアルタイムで参戦できて、映画つながりのお友だちが増えたことだ!

みんなチャックの口調を真似て「マーックス」って呼んでいきます。
 
 
パシフィック・リム』が再び立川シャッタードームに帰ってくる! しかも今回は、同じ日に札幌、土浦でも爆音上映実施という、シャッタードーム3体同時出現!
もはや伝説となった2013年9月29日の立川爆音の再来とあって、チケットの競争率の高さはカテゴリー5級(なんとなく)。自分は抽選ハズレたところを、Twitter上のチケット余ってます告知に救われた人です。譲ってくださった方には何度お礼を言っても足りないぐらいです。
と言いつつちゃっかりお祭りモードに乗り、池袋のニュートに続いてハーマンスタイルで参戦したのだが……フォロワーさんたちに初めてお会いしたり、会場の様子を見ていると、つくづく自分のコスプレは有り合わせの寄せ集めが露呈するなぁと実感。まぁ、コスプレが本格的だろうと有り合わせだろうと、いやむしろコスプレしてようとしてなかろうと、シャッタードームの空気に気持ち良く呑まれることさえできれば完全ドリフト気分なのですが。
 
それにしても、公開時の興行成績はそこまでスマッシュヒットでもなかったのに後々ファンの熱意で細々と上映が続き、冷静に見たら脚本に粗もあるのにそんなことどうでもよくなるぐらいのめり込み、しまいにはこういったコスプレで叫ぶイベントまで催されるあたり、ますます『ロッキー・ホラー・ショー』の流れを組む映画だなぁ。
 
上映直前。ぎっしり。
 
 第1回の立川爆音上映を経て、池袋、塚口でドリフト経験を積んだレンジャーたちも多かったせいか、とにかくグッとくるポイントがあったら叫ぶ! 好きなキャラクター/イェーガーが来たら叫ぶ! という手探り感の少ない潔さ。冒頭のアックスヘッド襲来、イェーガーにより人類の勝機が見えたところから、早速歓声の嵐。また、今回の爆音上映は立ち上がったりアクションしたりするのも可だったので、「ロケットパーーンチ!!」だけにとどまらずイェーガーと同じアクションでKAIJUと戦うレンジャーも多かった。
いくつかの掛け声やツッコミがいつの間にかお約束事と化していたのも、絶叫上映の定着へまた進歩したようで嬉しいところだ。もちろん、新規の掛け声/ツッコミ(ボケ?)も聞くだけで楽しいので大歓迎。ちなみに、今回は池袋よりファンイベント色が濃く、集まったのもコアなファン層だったため、ネタバレにはずっと寛容な環境である。
今回の主催者たる店主さんの挨拶「まず、携帯の電源はオフにしてください。次に、携帯の電源はオフにしてください」なんかも嬉しい限りでしたよ。
 
 

お約束になりつつある……

  • 「ヤンシー起きろ!」
  • 「今何時だ?」→「2時!」
  • 「おい坊や、調子に乗るなよ」→「ヒュー♪」
  • メインテーマがかかったらハンドクラップ
  • 「良い知らせと悪い知らせ、どっちから聞きたい?」→「悪い知らせ!」
  • 「仕事が欲しい奴、食いたい奴はいるか?」→「はーい!!」
  • 「どこで死にたい? ここか、イェーガーの中か!?」→「イェーガーの中!!」
  • 「いや、ニュートって呼んでくれ」→「ニュート!!」
  • 「可愛がるべきかひっぱたくべきか分からず……」→「ひっぱたけ!!」
  • マコ、笑顔でドアを開けるも、そこにいたのはローリーではなく司令官→「あーあ」
  • マコがコーパイに選ばれ、ローリーが一言「似合ってるよ」→「ヒュー♪」
  • ケンカが始まったら「いいぞ!」「やっちまえ!」「親父にも殴られたことないのにー!」
  • 「いいぞ、ジプシー、ぶちのめせ!!」
  • レザーバック戦の最後「あと1回! あと1回!」あと1発! ってのもあった)
  • シェルター内でニュートのメガネ落下→「メガネメガネ」
  • 幼獣オオタチ騒動のあと「後ろ、後ろーー!!」「やめとけーー!!」「逃げてーー!!」
  • おまけのアレ「お帰りーーー!!!」

 

安定の……

  • チェルノ・アルファは今回も人気者。カイダノフスキー夫妻も人気者。
  • いつでもどこでもマックス人気。
  • スコープ越しにローリーをこっそり覗き見ても、部屋を間違えても、外にいる相手を間違えても、マコさんはいつだって可愛い!!
  • マコと組むことを拒否されたローリー……を見て笑うチャック……を見て笑う観客たち。池袋でも起きた謎の現象、今回も起きました。
  • タン兄弟ともどもぼそっとつぶやく「かぶとむし」
  • 香港戦に満を持してのジプシー登場は中盤の山場です。
  • 香港戦からの帰還~司令官の演説~「タイマーを止めろ!!!」この流れは確実に爆音上映のブレインハンドシェイク最骨頂です。
 
 

初めて聞きました/やりました(この中から新たな定番が生まれる?)

  • 初めて……というか、今後願わくば起きてほしくないのだが、上映中に地震が発生するというアクシデントが。その際「地震?」に並んで「KAIJU?」「KAIJUだ!」というざわめきがあったことを銘記しておく。
  • 今回は何かが起こりそうな直前に「お? お?」とザワつく傾向。
  • ローリーのナレーションが入った瞬間から「杉田ーー!!!」の歓声。改めて声優さん人気を実感。
  • タイトルが出る直前のブロック崩れみたいなアレにもハンドクラップ
  • 司令官が口に含むカプセルに「おいしい?」……フリスクかい!!
  • 壁建設現場の高さと、そこをノーロープで滑り降りるローリーに畏怖をこめて「ヒュー」
  • エレベーター内を静まり返らせるニュートのKAIJUオタク発言に「あーあ(やっちゃった)」
  • シャッタードームに入ったあとのローリーに「前を見ろ!!」って注意しました。
  • 司令官に自説をまくしたてるゴットリーブ博士が「可愛い!」って言われてたのは、三ツ矢さん効果なのかゴーマンさん効果なのか……(後者だと嬉しい)。
  • ゴットリーブ博士が司令官に逆手敬礼するたびに同じことしてました
  • 「イモをくれ」→「イモ!!」……ハークパパへの一番気の毒系レスポンス。
  • トライアルはローリーよりマコが一本取ったときのほうが盛り上がるのだが、今回は「いいぞーマコさんやっちまえー!」とレザーバック戦に先駆けた掛け声が……
  • 「成功したら僕の勝ち。失敗したら君がやらせたようなもんだから僕の勝ち」と記録するニュートに「ズルいよ!」ってクレーム入れました。
  • ハンニバルがニュートに鼻ナイフ→「痛い痛い!!」
  • 謎のメニュー・通称KAIJUブルーゼリーに「青い!!」
  • ハーネスを外してしまったハークに、チャックともども「外すな!!」「ダメだー!!」
  • 隣のビルからオオタチが突撃してくるところで「ジプシー右だー!!」
  • 幼獣オオタチにまで「おいしかった?」って聞くかい!!
  • 実は池袋でも聞こえてたんですが、「靴は分かりやすいとこに投げて!!」ってリクエストがありました。
  • 海底戦、「右だ!」「左だ!」と、ジプシーやテンドー以上にライジュウに翻弄されてた人。
 
スタンディング自由、とはいえ3D上映だったせいか、本編中立ち上がる人はほとんど見なかったが、エンドタイトルが始まるとメインテーマにハンドクラップしながら一同起立。一応これが人生初のスタンディングオベーション体験……ってことにしてしまおうか。池袋シャッタードームのときと同様、気分はともにKAIJUと戦ったレンジャーであり、ともに戦いをサポートし続けたシャッタードームクルーであった。

マコさんたち。トライアル版や幼少期版もいらっしゃいました。

PPDCオシャレ番長テンドーは女性率高し。
 
またお会いしましたね!(池袋の寄生虫さん)


ニュートたち。タトゥーあり、KAIJUネイルあり、鼻血あり……!
後悔してないって言ったけど、せっかくハーマンだったので、ニュートとケンカすれば良かったかな。

 
チェルノたち。 帽子やバケツなど身近なものから作れるのがいいところ。
 

こちらのチェルノは装甲に加えカイダノフスキー夫妻も搭乗中です!
 
そして2人のチェルノが奇跡の対面を果たす……
 
命の壁を破ってカテゴリー4が出現!!!
 
ストライカー・エウレカ発進!! どさくさにまぎれてコンボイ(fromトランスフォーマー)も発進!!
 
この日の極私的MVPはこのTシャツのお方です。
 

『パシフィック・リム』爆音上映会は、2013年9月29日の立川シャッタードームの戦術を学び、進化した。シャッタードームは思いのほか次々に出没した。池袋、塚口、そしてこの度のトリプルイベント……カテゴリー4(たぶん)のファンイベント熱が発生している。もはやIMAXリバイバルばかりでは有効な手段ではない。定期的なシャッタードーム建設の必要性が……
ってことになりませんかね、全国の映画館さん!!!!

2013年11月15日金曜日

トレマーズ

砂漠でエクストリーム高鬼。

トレマーズ('89)
監督:ロン・アンダーウッド
出演:ケヴィン・ベーコン、フレッド・ウォード



足が遅いので普通の鬼ごっこは苦手だったけど、高鬼はわりと生存率が高かった自分。登ってられる時間や場所の制限、および高さの優位を利用して逃げ回るのは得意だった模様。
だから、うまくすればコイツらからも逃げれそうな気がするんだけど、200%気のせいなので決してやってはいけない。

砂漠地帯の街パーフェクションで、ゴミ処理や修理など便利屋仕事を続けてきたヴァルとアール。この生活に嫌気が差して街を出ていこうとした矢先、住民が鉄塔に登ったまま死んでいたり、首まで埋まった死体で発見されたりとの怪事件が発生。隣町へ通じる道路がふさがれて車が通れない中、何とか助けを呼びに行こうとした2人が目にしたのは、土の中を移動して人間を捕食する巨大なモンスター(ノリで『グラボイズ』と命名)だった。

『エイリアン』『ジョーズ』など、暗いところや湿気っぽいところでバトルが繰り広げられることが多いモンスターパニックものにおいて、異例ともいえる明るくカラリとした空気の本作。それは晴天の下&砂漠の街という舞台設定だけのおかげではない。
「目は見えないが聴力は鋭い」「地表からの音を頼りに獲物を見つける」「柔らかい土の中は猛スピードで進めるが岩など固いものには弱い」といった生態をもとに、どうやってグラボイズに対抗していくかが本作のキモ。その対抗手段というのが、岩の上を棒高跳びスタイルで逃げたり、わざとギャーギャー騒いで注意をそらすなど、まるで小学生の遊びの発想の延長線上。緊迫した状況のはずなのに、観ていてなんとも微笑ましい。
そのうちグラボイズたちも知恵をつけてきて、住民たちも戦う/逃げる手段を次から次へと編み出していくことになるあたりも、人数や遊ぶ環境の変化に応じて高鬼のルールが変更されていく過程に似ている。「いつまでもてっぺんにいるのはズルいから、この滑り台にいられるのは10秒までね!」「下水のフタの上は高いとこのうちに入らないからナシね!」みたいな。

陸上版『ジョーズ』ともいわれる本作だが、ジョーズとの決定的な違いは、グラボイズと戦うパーフェクションの住民たちが、何らかの専門家でも精鋭でもないところだ。地質学を学んでいる大学生のロンダが地底生物の生態にいくばくか詳しく、第三次世界大戦の勃発に備えて家の地下に武器を蓄えまくっている夫婦がいる程度か。素人軍団が集まって知恵を出し合うという設定は、それこそ「自分でも戦えるかも!」という素敵な勘違いに浸らせてくれる。
また、田舎町のご近所さん同士的な今一つ緊張感のないやり取りも、追い詰められた切迫感や悲壮感をきれいさっぱり消し去っていて口当たりがいい。特にヴァルとアールの掛け合いは、何かとジャンケンで決着つけたがったり、走りながらもムダ口を叩いたりと、タフガイ(気取り)っぽさとユーモアがカラリとした空気の形成に大いに貢献している。普通だったらそれどころじゃないって状況なのに、若いヴァルとロンダをくっつけてやろうとするアールのニヤケ親父っぷりにも笑えた。

自分オススメのモンスターパニックもののわりにはエロもグロもないし、ケヴィン・ベーコンはまだ露出狂になってないから安心だし……って勧め方はあんまりなので。
今は亡き木曜洋画劇場、現在は午後のロードショーでノーカット放映できるし、96分と程よいさっくり尺だし、ホラー・SF・モンスター好きに関係なく、オススメできる層は広いはず。映画史上での評価が『ジョーズ』ほどではないにしても、テンポが良くノリが軽くライトに楽しめる点では、『ジョーズ』に勝っているはずだ。

2013年11月4日月曜日

もしもこの作品で爆音絶叫上映をやってみたら

もしも『悪魔のいけにえ2』で爆音絶叫上映をやってみたら。

10月5日の『パシフィック・リム』絶叫ナイトin池袋の感動×6月2日の『悪魔のいけにえ2』爆音上映の楽しさ×もっとガヤスクリーンの面白さを味わいたいという欲求(ガヤスクリーンに対する思いのたけ記事参照)=この惨状。
つまり、=前の項目から生まれたしょうもないTwitter妄想劇を、この際なのでまとめてしまった&書き足してしまったのがこのブログ記事。今さらバカ記事の1つや2つ増えたってどうってことないさ!! という開き直りが原動力です。
なお、言うまでもないことかもしれませんが、本文は個人的見解、想像、偏見、思い込みだらけで構成されています。ご了承ください。

参加スタイル

コスプレ参加歓迎。人皮マスクやレプリカチェーンソー、針金ハンガー持ち込み(ハンガーはくれぐれもケガに注意)。1作目『悪魔のいけにえ』キャラやリメイク版のコスプレもあり。悪魔のいけにえTシャツ、Choptop's BBQTシャツもあり。ジェイソンやフレディなどほかのホラーアイコンのコスプレもいて、レザーフェイスコスプレさんとの即興バトルが繰り広げられる。

 

オープニングタイトル

タイトルおよびキャスト名、そして監督名に歓声第一波。実は一番歓声が大きいのが、「特殊メイク:トム・サヴィーニ」。

本編


  • 各主要キャラクターの登場に歓声が上がるのは定石。
  • 第一犠牲者のバカコンビに暖かい罵声の嵐。
  • 鋭い人はラジオ局のポスターやレコードさえ指摘する。
  • ナビンズ(ヒッチハイカーのミイラ)だ!!! いやババちゃんだーーー!!!! そして殺戮シーンにはもちろん拍手喝采。
  • デニス・ホッパーだぁぁぁぁぁ!!!!
  • 現場検証のシーンで、背後を通る水色の家に誰かがツッコミ入れる。
  • ドレイトン兄いのチリコンテスト優勝に「おめでとう!!!」の声。同時に「人肉じゃん!!!」 とのツッコミも。コショウの固い殻ネタで笑いがとれる。
  • 運転中通話のドレイトンに「事故るぞ!!!」「前を見ろーー!!」と注意喚起。
  • ホッパー叔父貴の豪快試し切りに爆笑。
  • チョップトップきたーーー!!!!!!
  • "Maybe uh……new music!!" → ブィィィィン!! →うわぁぁぁ!!!
  • ババちゃんお兄ちゃんのカツラ削っちゃダメ!!!
  • 戻ってきたLGに「やめろーー!!!」「入っちゃダメだー!!!」
  • ババちゃんの初恋とチェーンソー下ネタに冷やかしの声。
  • ホッパー叔父貴、チェーンソー構えて殴り込み!! ……と思ったらドアをぶった切らず普通に入場する姿に「手で開けるんかい!!!」とツッコミ。
  • ババちゃんのプロポーズに、「うわぁ……」とドン引きする観客と、「うわぁ(笑)」と喜ぶ観客あり。
  • ババちゃんのストレッチぐるぐるダンスに謎のハンドクラップ。
  • LGの男気に最後の喝采となぜか感動の涙。
  • 仲良し兄弟漫才を温かいツッコミで迎える。
  • 兄ちゃん後ろ、後ろーー!!(ストレッチが通過していくシーンで)
  • レフティとフランクリン哀しみの再会にやはり謎の涙が。
  • 通路を彩る人骨アートの職人技も誉めてあげましょう。
  • 彼女(仮)が家族にバレちゃったババちゃん、またも冷やかされる。
  • "Bubba's gotta girlfriend!" "Burn her like a rat!" は手拍子しながらみんなでやる。
  • 一番の決め台詞はもちろんみんなで、"Saw is family!!"
  • 食卓タイム。観客も一緒に歌ってグランパを迎える。
  • ババちゃんのキスはさすがに切ないので、観客の冷やかしも少し減る。
  • ドレイトンに叱られても、ホッパー叔父貴と一緒に「収穫の歌」を歌っちゃってOK。
  • チェーンソーチャンバラには歓声が上がるが、「ババちゃん頑張れ!」の声のほうが大きい。チャンバラ以降の展開には、拍手じゃなくて悲哀の声が満ちる。
  • グレート・グランマには敬意をもって拍手を送りましょう。
  • ラストはストレッチ姉さんと一緒に雄叫びをあげて爽快感を取り戻す。
  • そしてエンドクレジット後のチェーンソー音にもうひと盛り上がりして終わる。

終演後

写真撮影などを介して交流タイム。シアターが閉まるまで、再びコスプレさん同士がバトルやチェイスを繰り広げてくれれば面白い。

その他・各キャラクターに対して


レフティ:
最初は歓声で迎えられるが、しだいに爆笑で迎えられ、中盤以降は「ヒドイよ!」「何やってんの!」「お前のせいで……!」と暖かいブーイングが増える。最終的には「遅いわ!」と怒られる。

ストレッチ:
ホットパンツになると観客のテンションが上がる。

レザーフェイス:
終始可愛い可愛い言われ続け冷やかされる。

チョップトップ:
"Music is my life!" "Lick my plate you dog dick!" など、観客のモノマネ率が高い。

ドレイトン:
最優秀チリへの祝福はもちろんのことだが、零細企業の苦労話に「そうだそうだ!!」「不公平だ!!」と共感の声が。

グランパ:
応援するのは間違ってると思いつつ、ハンマータイムに「頑張れ!!」の嵐。

ナビンズ(ヒッチハイカーのミイラ):
密かな人気を誇る。

LG:
意外に「可愛い!」という声が上がる。ポテトハウスが妙に好評。反面、ツバ吐き癖を注意される。しかし最後にはその男気に拍手の嵐。


そんな可能性も妄想してみると楽しくなりますが、実践の難しさを思うと、当面は自宅で一人ツッコミ大会ということに……さすがに一人絶叫大会じゃ近隣から苦情がくるしな。

2013年10月25日金曜日

ウルヴァリン:SAMURAI

ウルヴァリンは二度死ぬ。

ウルヴァリン:SAMURAI('13)
監督:ジェームズ・マンゴールド
出演:ヒュー・ジャックマン、真田広之



これまでのX-MENシリーズ観たら、本当なら死んでるのは二度どころじゃないけどね。

『X-MEN ファイナル・デシジョン』の結末ののち、カナダの山に籠って世捨て人生活を送っていたウルヴァリンは、日本人女性・ユキオに招かれ日本へ飛ぶことになる。ユキオの雇い主は、第二次大戦中長崎で命を救った兵士・矢志田。病気と老衰で死の床にある矢志田は、昔助けられたお礼として、長年ウルヴァリンを苦しめてきた不老不死の能力を取り去ることを申し出る。
その夜矢志田は亡くなり、葬儀が執り行われる中、矢志田の孫・マリコを狙ってヤクザの襲撃が。ウルヴァリンは彼女を助け共に逃げるが、なぜか彼の治癒能力は矢志田の死と同時に失われていた。

主君を失った浪人のごとく孤独な戦いを続けるウルヴァリン……のはずが、蓋を開けてみれば(開けなくてもだいたい想像がつくけど)、ジャパンだ! ヤクザだ! ニンジャだ! そしてサムライ! と、ここが変だよ日本珍道中。
しかも、たかだかいち暴力要員ヤクザのくせに、新幹線(時速220~300キロぐらい?)の上に生身&ナイフ1本でへばりついてるという、ミュータントとほぼ互角の身体能力という過剰サービス描写。これで世界のジャパニーズヤクザに対する基準が上がってしまったのではと、妙な心配すら湧いてくる。
ニンジャの場合は、百歩譲って昔から身体能力高く描かれてるんだからいいじゃん、とフォローもしてみるが、どうしたって「なぜいまだ日本にニンジャ……?」というツッコミは避けられない。しかも、ニンジャの代表ハラダさん、どう聞いても日本語カタコトだし(実際、役者さんは韓国出身のウィル・ユン・リー)。あ、でも高田馬場の雑居ビルの上をピョンピョンするパルクールは楽しそうでしたよ。
最後には甲冑のシンゲンさん(真田広之!)やシルバーサムライも出てくるし、もう足りないものはゲイシャと「お背中流しましょうか」ぐらいじゃないだろうか。まぁ、確かに背中は流してたけど、アレは拾ってきたド汚い犬をゴシゴシしているようなもんだから……。

ちなみに、そんな昔ながらのお約束的変なジャパニーズカルチャーがある一方、ムダにオモシロ設備のラブホテルとか、英語が分からず「ノーイングリッシュ!」を連呼する受付のおばちゃんとか、その息子がこれまたムダに「オーケー」を連呼するとか、細かいところでは変なリアリティがあるんだよなぁ。まさか、スタッフさんの実体験や目撃談に基づいているのではないだろうな。

日本人キャストも携わり、日本ロケも敢行して、それがどうしてこうなった? というツッコミどころが溢れ返っている。しかし決して雑に扱われてるわけじゃなく、むしろリスペクトされている。
本作の日本を観たときのこの感覚、どこかで経験したような気がと思ったら、『007は二度死ぬ』(1967)だった。秘密警察のボス(丹波哲郎)の基地が地下鉄中野新橋駅にあり、姫路城でニンジャが訓練しているトンデモ日本。しかし、火山の下に秘密基地を持つ悪の組織をボンドが倒す! という豪快なスパイアクションを主軸にした結果、ヘンな日本描写なぞマイナスにならない娯楽作になった。
本作も、ヒーリングファクターを失って苦戦しつつ、鉤爪ファイトに余念のないウルヴァリン無双という主軸はキープ。登場するミュータントは毒蛇美女ヴァイパーぐらいと少ないが、ユキオやシンゲンやヤクザ連中が豪快アクション路線で魅せてくれる。特にユキオは、福島リラさんがテコンドー経験者ということもあって、アクションのキレがミュータント級。赤ボーダーやミニ丈喪服といったファッションも、黒髪に清楚感ただよう衣装のマリコと対照的で目に楽しい。トドメの城型要塞と巨大なシルバーサムライなんて、ますます007(コネリー~ロジャー・ムーア期の)だ。一番007との相似を覚えたのは、九州から東京までアウディで1時間ちょいで着くというマジックだが(『二度死ぬ』では、東京~神戸間がトヨタGTで20分ぐらい)。
オモシロさを突き詰めるために、徹底したリアリティは常に必要条件ではないと再認識した次第である。

なお、この映画も大多数のマーベル作品と同様、エンドクレジット始まったからといって席をたっては(あるいはディスクを止めては)いけない作品。あんなにとっ散らかった『ファイナル・デシジョン』のあと、また風呂敷広げ始めたようで、どうなるんでしょうかね?

2013年10月7日月曜日

パシフィック・リム絶叫ナイト@池袋シャッタードーム

ブレイン・ハンドシェイクはスクリーンを超える。

パシフィック・リム絶叫ナイト(3D吹替版)
2013. 10. 05. シネマサンシャイン池袋 池袋シャッタードーム



以前、「ガヤスクリーンに関する思いのたけ」という記事で、『ロッキー・ホラー・ショー』のように歓声あげたりツッコミ入れたりボケたりしながら映画観賞できたらいいのにという旨をぶちまけたことがある。
まさかそれから1年弱で、しかも自分の大好きな映画で実現されるとはなぁ。

一足先の9月29日に、立川シネマシティ改め立川シャッタードームで実施されていた爆音絶叫上映会。予約の時点からアクセス過多の憂き目でチケットを獲れなかったものの、Twitter経由の実況レポートから見て取れたのは、席から立ち上がってアクションつきで声援やツッコミを飛ばすだけでなく、上映前にDJイベント、コスプレ来場者も多数という、まさしく夢見た「ガヤスクリーン」であった。(その盛り上がり具合はこちらのまとめに詳しく掲載されている)
パシフィック・リム』を観た当初は、確かにその世界観や監督の心意気で一気に大好きになったものの、正直この作品が絶叫上映にピッタリとまでは考えていなかった。が、立川シャッタードームのレポートを見るにつけ、イェーガーと怪獣とのバトルで声援と歓声に包まれ、シャッタードーム職員と一緒に一丸となって拍手喝采する一体感が目に見えるようで、実は絶叫映画体験に非常に向いた映画だと確信した。
その余波と、ファンからの「立川以外にもシャッタードームを作りたい(=爆音上映やってほしい)」という要望が届いたのだろうか。『パシフィック・リム』3D吹替版を延長上映していたシネマサンシャイン池袋さんが、5日の最終上映を、急遽「絶叫ナイト」にしてくださったのは……。

都心部でキャパシティもそこまで広くない劇場であるせいか、思ったほどコスプレの方は登場せず。でもニュートっぽい人はちらほらと見かける。そういう自分もニュートで来たのだが。
開演前イベントは特になかったので、上映前の雰囲気は普段の映画館と変わらない。しかし、普段なら次回上映作の予告を流すところで、『パシフィック・リム』吹替版予告が2本。肩慣らしとして劇場さんが気を使ってくれたのだろうか、いずれにしても効果は絶大で、突如劇場は歓声と拍手に包まれた。そのあとの「No More 映画泥棒」のCMにすら手拍子が起きるほどだった。
序盤、怪獣との戦いの歴史が語られるところでは、まだざわつくだけだった会場だが、いよいよローリーが登場し、寝ているヤンシーを叩き起こすころになると歓声があがりはじめる。ジプシー・デンジャーが出撃準備に入ると、メインテーマに合わせて手拍子が(そしてその合間、テンドーの初登場に女子の歓声)。ナイフヘッドとの戦いになると、ジプシーの攻撃が決まると歓声&拍手、ナイフヘッドの反撃およびヤンシーの死に悲鳴が上がり、徐々に絶叫上映のモードが形作られていく。
立川に比べると、オーディエンスの手探り感が強いのかもしれないが、急遽作られたイベントとしては上々だったんじゃないかと思いたい。

ところで、池袋の音響システムおよび事情は、やはり立川とはちがうのだろうか。絶叫イベントなので音量は通常の上映より大きめだと思うのだが、それでもときどき観客の声に負けていた。かの「ロケットパーーンチ!!!」(吹替版では『エルボーロケット』ではない)ですら、ちょっと聞こえなかったぐらいだもんな。
ガヤスクリーン記事を書いたときは、「シネコンさんスクリーンの1つぐらい譲ってくれよ」と軽い感覚だったけど、他のスクリーンに響かないようにという配慮や劇場の構造を考えると、音響問題はそう簡単なことじゃないのだろう。反省。

以降は、バトルになれば声援、好きなキャラを歓声で迎え、時折面白ツッコミ(ボケ)が入る。Twitterには忘備録として逐一掲載したが、以下ではその中でも特にインパクトの強かった反応を紹介したい。

  • アラスカ基地へイェーガー計画終了を伝えるお偉方に、「何で!?」「ケチ!!」果ては「クズ!」とブーイングの嵐。
  • 壁の建設現場にて。配給カードを持った親方が「食事と金が欲しいやつはいるか!!」と呼びかけると、客席から「はい!!」とまさかの立候補が。
  • イェーガーではやはりチェルノ・アルファが、カイダノフスキー夫妻込みで一番人気。食堂シーンで、短いながらも仲睦まじい夫婦のショットに「ヒューヒュー!」と冷やかしが
  • 犬のマックスもなぜか安定の人気。
  • 博士コンビ、吹替ボイス効果もあってか安定のお笑い担当。ニュートが怪獣の内臓を床にポイしたのを見て、ゴットリーブより先に「あー!」と言ってしまったよ。
  • 字幕版では「(息子を)叱るべきタイミングが分からず……」発言に「今でしょ!!!」とツッコまれていたハーク。吹替版では「褒めるべきかひっぱたくべきか分からず……」との言葉に「ひっぱたけ!!!」と指導されていた。
  • 半裸のローリーと目があって慌ててドア閉める(でもスコープからこっそり覗く)マコ、部屋を間違えるマコ、ローリーと思って笑顔でドアを開けたら司令官がいて萎縮するマコ。男女問わず常に「可愛いーー!!」と叫ばれていた。
  • ローリーが候補生を倒したときより、マコがローリーから一本取ったときのほうが歓声がデカいトライアル風景。
  • ローリーとチャックのケンカに「いいぞー!!!」と野次とばし。友人の「親父にも殴られたことないのに!」もナイスボケでした。
  • 「ハンニバル様ーー!!」「ハン様!!!」と、ハンニバル・チャウに謎の女性人気。例の片方の靴にすら、「デカい!!」はともかく「その靴ください!!」って。あれはハンニバル親衛隊日本支部だったのだろうか。
  • 香港戦は一番の盛り上がり。出撃の歓声→バトルに声援と悲鳴(特にチェルノ)→そしていよいよやってきたジプシーにここ一番の大喝采。チャック以上に「いいぞ!!」「やっつけろ!!!」と盛り上がる。レザーバックにプラズマを打ち込むときには、立川で有名になった「もう一回! もう一回!」コールが。
  • 一番歓声(というかどよめき)をもらった怪獣は、翼を広げた瞬間のオオタチだったと思う。
  • ハーク「ここで待つか、照明弾でバカな真似をするかだ!」→観客「バカな真似をしよう!!!」
  • シェルター内でニュートがメガネを落とすと、一斉に「メガネメガネ」とエアメガネ探し。
  • 「一緒にドリフトをする」「世界が滅亡しようとしている。他に選択肢があるか?」「も……もちろん! 一緒に怪獣をやっつけよう!(ペチペチ握手返し)」ゴッドリーブ博士が一番歓声をもらった瞬間。その後の2人ドリフトが、一緒にカウントダウンする観客の声が一番大きかった。

香港戦のあとにもなると、もはや観客はシャッタードームの職員たちと一体化していた。パイロットたちを拍手で迎え入れ、司令官の演説に聞き入ったのち本当に戦いに向かう勢いで拍手し、仲間を失うときには悲痛な声が漏れ、「タイマーを止めろ!!」ではもう割れんばかりの喝采が。あれはスクリーンを超えた、クルー1人1人と観客1人1人の巨大なブレイン・ハンドシェイクだったのだと勝手に信じている。
エンドロールでも手拍子が続き、「レイ・ハリーハウゼンと本多猪四郎に捧ぐ」に最後の喝采。場内ライトが点くころには、「ありがとーーー!!!」「お疲れ様でしたーーーっ!!!」の声が飛び交い、辺り一帯は奇妙な連帯感に包まれていた。この瞬間、シネマサンシャイン池袋は、本当の意味でシャッタードーム池袋になった。
そして、この謎の連帯感の勢いで、場内とロビーはちょっとした写真撮影会へ流れ込む。私も勢いで人見知りフィルターが取れてしまったらしく、素晴らしきファンメイドTシャツとグッズの撮影に走るのだった。拍手のしすぎとボルテージの上がりすぎで、手ぶれを補正してくれるスマートフォンのカメラでさえもたないほど、右手がプルプル震えたままだったのだが……もしや、これがドリフト酔いというやつなのだろうか!? 脳への負荷がデカすぎたのだろうか!? この後東京にオオタチが来てしまうかもしれない!! ……とまで考えてしまいました。

この日いっぱいはドリフト酔いという名の高揚感でいっぱいいっぱいだったのだが、翌日ツイートまとめを確認してみると、先述の音響問題以外の絶叫イベント課題もちらほらと明らかになってきた。
ついついファンイベント感覚になってしまっていたが、池袋という場所と時間柄もあってか、会社帰りなどに初めて本作を観に来たお客さんもいたらしい。そうした方々には、映画の声が聞こえなくなるほどの歓声や、某シーンでの「志村後ろー」的発言などネタバレにつながるツッコミは、ただただ迷惑だったようだ。
一応窓口やWebで「本日この回は絶叫上映です」「静かに楽しみたい方は他の回で」とのアナウンス・表示はあったらしいのだが、もう少し大々的に伝えてもよかったのではないだろうか。その際、「うるさくなる」「ネタバレにつながる可能性あり」という注意書きも必要かもしれない。
確かに、あからさまなネタバレ発言は場を白けさせるだけだし、先の「志村後ろ」も熱心なファンは盛り上がるが初見の方には苛立たしかったのだろう(その点は少し反省したい)。だが、『ロッキー・ホラー・ショー』の上映会しかり、歓声やツッコミには「お約束事」の意味が含まれることが多い。また、歓声をあげるタイミングも、展開を知っているだけにうっかり周りよりワンテンポ早くなってしまう可能性もある。絶叫イベントで、完全なるネタバレを防ぐのは難しいと思われる。

こうした課題を乗り越える最良の方法は、絶叫上映というイベントを、もっと映画界でポピュラーな存在にしてしまうことだ。せっかくファンの側からのアプローチで再上映、上映延長、果てはイベント開催までこぎつけた映画現象なのだから、アプローチがさらに進めば、シャッタードームがもっと全国に広まるかもしれない(実際、10月13日には兵庫県尼崎市で『爆音激闘上映』が)。もっと楽天的な見方をすれば、マスコミがエンタメニュースとして拾うかもしれない。
もちろん、そんなに簡単に行くはずのない話である。しかし、大好きな映画をもっと楽しんで観賞したいという映画バカたちの新たな試み、押し進めてみる価値は多いにあると思いたい。


まさか、それをデザインに! 東京シーンの名(迷)看板Tシャツ。背面はコヨーテ・タンゴの勇姿。

ジプシー・デンジャーのクルーTシャツ。ホントに売っててもおかしくないクオリティ!
 
寄生虫ぬいぐるみ!? 普通創作なんて思いもつかないのに!! 何だここは、天国じゃないか!

2013年9月8日日曜日

ABC・オブ・デス

人生いろいろ、死に様いろいろ……

ABC・オブ・デス('13)
監督:ナチョ・ビガロンド、アドリアン・ガルシア・ボグリアーノ他
出演:



いくら死に様いろいろっていっても、ここに出てくる死に様は願わくば極力避けたいもので。
5分間でインパクトもつけなきゃならんから凄まじくなったんだろうけど。

「死」をテーマに作られた、アルファベット1文字5分間26編のオムニバス映画。監督勢は、マイナーだったりDVDスルーだったりするものの、ある種の映画オタクには「おぉ!」と感心されるラインナップ。もちろん、そんな中でも好き嫌いは出てくるけど(何しろ死に関係してもしなくても、やたらウ○コとかゲ○とかのネタが多いので)、すべての話が5分以内に完結するのでそんなにダレる心配はない……と思う。
さて、どれがお好みの死でしょうか?(という不謹慎な楽しみ方もできます)
ちなみに、以下タイトルは極私的お気に入り、タイトルは極私的まずまず面白い一編です。

A=Apocalypse(アポカリプス)

なぜ妻は突然、ベッドで寝たきりの夫をメッタ刺しにして熱々のフライパンでぶん殴ったのか? 適度なショックシーンと外の世界を一切見せずに描く「終わり」が、トップバッターとして秀逸。

B=Bigfoot(ビッグフット)

子どもをビビらせて寝かしつけるために作ったデタラメの恐怖譚が現実に……という、他の国はどうか知らないが、日本人にはわりとなじみのある話。雪の降らないアルゼンチンに、ビッグフット(雪男的なモノ)はどうやって現れるのか。

C=Cycle(サイクル)

これまた短編小説あたりでなじみの深いループもの。

D=Dogfight(ドッグファイト)

地下の非合法賭博で行われた人間ボクサー対闘犬のデスマッチ。そして死ぬのは……? スローモーションが効いていて、最後に軽ーくヒネリもあって、5分間でお腹いっぱいになれます。

E=Exterminate(駆除)

クモを殺したと思ったら……これもまた都市伝説的なお話で聞いたことある展開。とりあえず、クモ嫌いだったらゾッとするだろう。

F=Fart(おなら)

日本代表井口昇監督作。原発事故のことが頭に残りながらも『ゾンビアス』を撮っていたという自身の経験を昇華したら、なぜか美少女がおならという、死よりもフェティシズム溢れる一編になっていた。この企画がもし「ABC・オブ・ド変態」だったら、まず間違いなくコレがMVP候補ですよ。

G=Gravity(重力)

サーファーの死をPOVで……しかしシンプルイズベストとはいえず。上映してた武蔵野館でも、観客投票ワーストに選出されてしまいましたね。

 

H=Hydro-Electric Defusion(水電拡散)

アメリカ軍のパイロット(犬)vsストリッパーに化けたナチスの女兵士(猫)in着ぐるみアニメ。でもせっかくホラーオタク枠の作品でショック描写もあるんだから、そこは人間でやってくれても。

 

I=Ingrown(内向)

これ、映画の最後のエンドロールに出てくるメキシコの内情に触れた1文を、この短編の最後に持って来ればもっと余韻がちがってたんじゃないだろうか。もったいない。

 

J=Jidai-Geki(時代劇)

日本代表山口雄大監督作。切腹した侍の苦悶の顔が必要以上にゆがみまくるので、なかなか首を落とせない介錯人。不謹慎だけど、なぜか時としてつながってしまう死と笑いが皮肉。侍のゆがんだ顔が、実に気持ち悪くて面白い。

K=Klutz(不器用)

ブラックなアニメ作品。直接の死因じゃないにしても、元凶がウ○コってのはやっぱりヤですね。

L=Libido(性欲)

ある意味ソリッド・シチュエーション・スリラー:どっちが先に自慰で射精できるかデスマッチ(負けたらケツから串刺し)。深い説明は一切なく、トーナメントが進むごとに自慰のネタも変態度が上がっていくという、清々しいほど不条理の極み。

 

M=Miscarriage(流産)

話の短さといい、こういうことは実際に起きてそうで、ちょっと後味が悪い。

N=Nuptials(結婚)

彼女の前でオウムにプロポーズの言葉を喋らせるというシャレた演出のつもりが……嫉妬に狂った人間の衝動ってコワい。

O=Orgasm(オーガズム)

いわゆるイメージ映像というやつ……

 

P=Pressure(重圧)

娘へのプレゼントのため、売春婦がしなければならなくなった仕事とは……。『レクイエム・フォー・ドリーム』に次ぐくらいのダウナーになる話なので注意。

Q=Quack(アヒル)

『ABC・オブ・デス』に参加したはいいが、「Q」にまつわる題材なんか思い浮かばない! じゃあ「Q」にまつわる動物でもホントに殺すとするか! というメタネタ。ちょっとズルい気もするが、オチが良い意味でバカらしかったので良しとしたい。

 

R=Removed(切除)

焼けただれた皮膚をさらに切除される患者。皮膚を洗浄するとなぜか出てくるフィルム。マスコミに取り囲まれて有名人扱いの患者。とうとう彼は医者たちを殺して逃亡する。ひょっとして、「フィルムの表面だけ見て面白半分に近寄ったり搾取したりやがって! オレの底力はそんなもんじゃないんじゃあ!!」という監督自身ですか?

S=Speed(スピード)

大男に火炎放射を浴びせて逃げ、砂漠を疾走する美女。火炎放射器に砂漠というと『マッドマックス2』を連想するけど、オチで「ああ、そっちの話ですか!」とすべての実態が分かる。

T=Toilet(トイレ)

唯一の一般公募作品。トイレにまつわる怪談話系かと思いきや、もっと無惨で悲惨で最悪な現実の怖さ。グロテスクなクレイアニメが効いてます。

U=Unearthed(発掘)

発見されたモンスターが逃げ回り、人々の手で殺されるまでを、モンスター視点のPOVで。POVとして一番面白いのは最後の最後のショットですが。

V=Vagitus(産声)

出産が規制された未来にて、不法出産を取り締まる女性エージェントが遭遇した一家と、事の顛末。まさかここにきてSFものとは予想外。ちょっと『LOOPER』っぽくもあったけど。

W=WTF!?(What The Fuck!?)(カオス)

『ABC・オブ・デス』に参加したはいいが、「W」にまつわる題材がどれもピンとこない! そしたら題材に考えてたネタがまとめてオレたちに降りかかってきてもうぐっちゃぐちゃ!! というメタネタ。正直ぐっちゃぐちゃが過ぎてノリにくくなってしまったのだが、『ABC』のネタに悩むオレたちというメタ構造が「Q」と被っちゃったことこそ一番の「WTF!?」です。

 

X=XXL(ダブルエックスエル)

近年エグいホラーを量産しているフランスから、またエグい作品が。そこらですれ違った赤の他人に肥満をバカにされ続ける女性が最後に取った手段……それは世界一痛くて血みどろな劇的ビフォーアフターだった! しかし、血みどろの果てに一瞬のユーモアと皮肉を添えるあたり、監督の趣味の悪さと趣味の良さが両方にじみ出ている。

 

Y=Youngbuck(ティーンエイジャー)

小児性愛者の用務員オヤジはいかにして成敗されたか。とりあえず、あの変態全開な面構えのおっさんをよくぞ見つけてきた!! その点だけで評価がムダにガン上がりしてる!!

Z=Zetsumetsu(絶滅)

日本代表西村喜廣監督作。親米外交や原発事故や戦争への怒りをごった煮にしたら、半裸女性の血みどろレスリングの果てに、日本の○○○から飛んだ野菜とアメリカの×××でカレーができて、人間ミサイルで世界が滅びるという「W」よりもカオティックでアブナイ世界に。字面を見ても何のこっちゃだが、映像を見ても何のこっちゃと言われる可能性もある。そしてすべてを持っていくのが、村杉蝉ノ介さんのピーター・セラーズパロディ。これって『博士の異常な愛情』の最低変態版だったのか。「天皇陛下! It's Standing!!」


冒険がすぎるきらいもあるが、誰がどんなネタを持ってきてどう料理するかで楽しめる死のABC。すでに企画第2弾の制作が決まり、「M」を題材に一般募集枠も始まり、日本からは園子温(『冷たい熱帯魚』)と大畑創(『へんげ』)の参加が決定! ホラーと死とクリエイターの秀逸な発想がある限り、いろいろと観てみたいオムニバスだ。
なお、新進気鋭だけじゃなくて、そのうちベテラン監督も参加してくれても面白いんじゃないだろうか。例えば三池崇史とか……(それはやめたほうがいい?)

2013年9月4日水曜日

パシフィック・リム

環太平洋イェーガー愚連隊。

パシフィック・リム('13)
監督:ギレルモ・デル・トロ
出演:チャーリー・ハナム、菊池凜子



2012年末、この映画のティーザー・トレーラーを観たときには、そのビジュアルに「おおお!!??」となった。
2013年に入って正式な予告編が公開されると、さらに期待値は上がり「うおぉぉぉぉ!!!!」となった。
そして8月9日、ついに映画が公開されるとこうなった。
「エルボーロケットォォォォォォォォ!!!!!!!!!!」

太平洋海底の裂け目から出現した怪獣(KAIJU)vs環太平洋各国が開発した巨大ロボ・イェーガー!! ……というのが映画の主軸にして、最大重要事項である。
戦いに赴く人間たちのドラマも、親子関係やら失った仲間やら実は結構あるが、必要最小限に抑えられている。人間同士のつながりが一番活きるのは、2人のパイロットの脳をシンクロさせてイェーガーを操縦する「ドリフト」だ。
特撮怪獣映画やロボットファン必見! というような書かれ方もしているが、自分のようにゴジラもロボットものも申し訳程度にしか見たことない人でも、いちいち心が熱くなるショットが満載。冒頭だけでも、アックスヘッドのゴールデンゲートブリッジ襲撃、ジプシー・デンジャー起動、漁船の前にナイフヘッドが現れ、船長が「KAIJUだ……!」とつぶやくなど、1つ1つのシーンに心臓をつかまれっぱなし。海からの怪獣出現シーンが、音楽といい怪獣の咆哮といいどう見てもゴジラっぽいのも熱いところ。監督にその意図があったかどうかは分からないが、悪名高きエメリッヒ版ゴジラ(別名:ゴジラじゃないゴジラ)に近い展開やショットもあり、エメゴジはそんなに好きでもないのになぜか嬉しくなる。
各イェーガーのデザインが無骨で重々しいのもポイント高い。『アイアン・スカイ』といい、金属むき出しでやたら重厚でガシャンガキンゴゴゴゴと動くマシーンの類は、どうしてオタクスピリットに火をつけるんでしょうね。もちろんそれだけじゃなく、ヒーローロボのジプシー・デンジャーはスマートさと丸っこさを程よく、ライバルロボのストライカー・エウレカはシャープにと個性もある。
ここまで観客を熱くするのは、ひとえにデル・トロ監督の「こんな絵が観たかったんだ!! これがやりたかったんだ!!!」という、海底の裂け目よりも深い怪獣映画愛が背後にあるからにちがいない。

イェーガーはミサイルやプラズマ砲などの兵器を搭載しているが、基本戦闘は殴ったり投げたり羽交い絞めにしたりというプロレススタイル。そういえば、初期ウルトラマンも、スペシウム光線以外は怪獣とは基本殴り合い勝負だったような。
思いっきり冷めた観点からみれば「なんでわざわざタイマンで行くんだよ」とツッコミたくもなるのかもしれないが、それに対しては「その方がアツいから!!!」としか答えられない。イェーガーのデザインと同じく、怪獣の顔面に全力パンチ(エルボーロケット!!)かますとか、取っ組み合いながら至近距離でプラズマ撃つとか、無骨なバトルほど燃えてくるのだ。
香港でのジプシー・デンジャーvsオオタチ&レザーバック戦に至っては、ジプシーの戦闘スタイルがまるで昔の映画のヤンキー。レザーバックの顔面を殴る両手のコンテナはカイザーナックル、オオタチをぶん殴るタンカーはバット(釘が打ちつけてありそう)、とどめの新兵器チェーンソードはバタフライナイフ……と当てはめられ、ちょっと『岸和田少年愚連隊』を観ている気にすらなってしまう。
欲をいえば、この直前の戦いでもっとクリムゾン・タイフーンとチェルノ・アルファの活躍を見たかったものだ。せっかく面白い必殺技持ってるんだから。

人間ドラマは最小限に抑えられているとはいえ、主だった人間たちのキャラクターは非常に濃くて面白い。これもデル・トロ監督が愛情をぎゅうぎゅうに詰めたおかげかなぁと。リミッターを外せば全キャラクターについて語れそうなところだが、長すぎるのも難だしネタバレにもつながるのでさすがに割愛。
日本人としては、森マコこと菊池凜子の活躍がどうしても嬉しいもので。ステレオタイプすぎずアニメ系すぎず、ヘタに主人公・ローリーとの恋愛が絡まず、当然変に浮きもせず、安心して見られるカッコいい日本人。日本語パートになまりがあるのはどうしてかという疑問もあるけど。
ペントコストはセリフが一番大仰なのだが、ロボットものアニメに出てくる厳しくも優しい司令官を実写に起こしたようで、何を聞いてもカッコよく思えてしまう。「世界が滅びるとき、お前はどこにいる? ここか、イェーガーの中か?」は、ぜひ2013年映画を代表する名言にしたい。
管制官は、名前がテンドー・チョイだし演者がクリフトン・コリンズ・Jr.だし国籍不詳にもほどがあるが、指令センターであくせくしてる蝶ネクタイしめた博士キャラというのは、なぜか不思議と懐かしさがある。そんなイメージに親しんだ覚えもないはずだというのに。
そして、デル・トロ映画といえばロン・パールマン。あんな下品な金歯と金の靴が似合う人はそうそういない。怪獣危機の世界であんなにうまいこと悠々サバイバルしていけるあたり、さすがヘルボーイです。

そんな面子の中、意外にもインパクトトップクラスとなったのが、怪獣の出現頻度と生態を研究するニュートとゴットリーブの学者2人。論理派と情熱派/潔癖とグチャドロ(怪獣の内臓ほっぽらかし)という絵に描いたような凸凹コンビ→いちいち対立→でも最後は力を合わせるというベタベタなキャラ方向が、オタク監督に愛情持って作られたせいか妙に斬新に見えてしまう。ニュートの「メガネメガネ」(まさか海外作で見られるとは……)や、映画史上最適ポジションにある便器など、お笑いパートも担っているのだが、これまたうるさかったりウザったかったりしすぎず、良い感じのスパイス。個人的には、ゴットリーブが握手返し下手な理由が、直後のとあるショットから推測できるという見せ方が好きだ。
ちなみに、重度の怪獣オタクという設定のニュート、見た目はJ.J.エイブラハムス似でもどう考えてもデル・トロ監督自身ですよね? 

久しく日本で作られていない「怪獣映画」というジャンルが、まさかのメキシコ発の日本映画ラブレターとして帰ってきた本作。監督の熱いスピリットを受け止めるためにも、DVDより劇場で、2Dより3Dで、3DよりIMAXで、さらに願わくば4DXで、とにかくでっかいスケールで体感するべき映画だろう。

2013年7月26日金曜日

ゾンゲリア

肉喰うばかりがゾンビじゃないぜ。

ゾンゲリア('81)
監督:ゲイリー・A・シャーマン
出演:ジェームズ・ファレンティーノ、メロディ・アンダーソン



近い時期に出てきた「ゲリア」のつくゾンビ映画同士ということで、本作と『サンゲリア』('79)との違いを明記しておく。

『サンゲリア』
  • 舞台:だいたい南米の小島(あとちょっとニューヨーク)
  • 雰囲気:なんか暑そう
  • メインテーマ:妙にクセになる謎のシンセミュージック
  • 目に……:木が刺さる
  • 女優さんが盛大にムダ脱ぎしてくれる
  • ゾンビが腐ってて虫湧いててキタナイ
  • 肉が喰いたい本能しかないゾンビ
  • ゾンビvsサメの水中プロレスが観れる

『ゾンゲリア』
  • 舞台:アメリカの田舎町ポッターズ・ブラフ
  • 雰囲気:ちょっと荒涼感があって寒々しげ
  • メインテーマ:哀愁漂うピアノとサックス
  • 目に……:注射器が刺さる
  • 女優さんのムダ脱ぎは少ないが美女ナースコスプレあり
  • ゾンビがキレイ
  • 生活能力のあるゾンビ
  • 若き日のロバート・イングランドが観れる

ちなみに、別に派閥があるわけじゃないけど、個人的には『ゾンゲリア』の方が好みである。理由の大半は一番最後の項目である……。

海沿いの小さな町ポッターズ・ブラフにて、よそから来た人間が立て続けに殺される事件が発生。保安官のダンは捜査を進めるが、手がかりはおろか被害者の身元も一向につかめない。実は、一連の事件にはポッターズ・ブラフの住民たちが関わっており、ダンの妻も例外ではなかった。

なんとなくゾンビものらしいから&『サンゲリア』にちなんで=『ゾンゲリア』になってしまった、冒険にも程がある邦題。もっとも、原題『Dead & Buried』(死んで埋められた者?)に忠実すぎてもピンとこなさそうだけれども。
ゾンビものといっても、ここに登場するゾンビは、ヨタヨタ徘徊しては人肉を喰らうよく知られたロメロ系ゾンビではない。ブードゥーや黒魔術絡みの「生ける屍」。しかも、普通に喋るしご飯も食べるし運転もするし、ホントにごく普通に生きている屍だ。同じブードゥー絡みでも、『サンゲリア』のド汚いゾンビとは大ちがい。
かといって、本作のホラー描写がソフトかといえばそうでもない。目に注射器をブスリ、鼻から酸注入、マッドな葬儀屋が崩れた顔面をキレイに修復するプロセスなど、きちんとゴアなところはゴアだし、焼死体や溶けた顔面などの特殊メイク&効果もスタン・ウィンストンが気合いを入れている。
ただ、一番怖いのは、「ポッターズ・ブラフへようこそ!」のあいさつも早々に、わらわらと取り囲まれてボコられて、なぜか「笑って!」と写真&フィルム撮影されながら殺されるという理不尽さだ。スティーヴン・キングあたりが描いてそうな、「善良な田舎の人々の怖さ」があった。

ラストは、一応「意外な結末」ものなのだが、現在ではそんなに珍しいものでもない。しかし、そこに至るまでにちりばめられた不気味さや、クライマックスの哀しさから、やはり秀逸と思えてくる。
さすが、『バタリアン』(監督)『エイリアン』(脚本)を手がけたダン・オバノンの脚本というべきか。

ところで、第一犠牲者の男(イングランドさんに非ず)に何となくつけられた仮名が「フレディ」で、町民たちに焼き殺されて、それでもほどなく甦っちゃうってあたり、『エルム街』ファンには感慨深いものがありますね。……そうでもないですね。
ちなみに、イングランドさんは当時から「胡散臭カワイイ」という独自の存在感を開拓しておりましたよ。「カワイイ」の部分については思い切り偏見が混ざってますが。

2013年7月19日金曜日

飛びだす 悪魔のいけにえ/レザーフェイス一家の逆襲

殺人鬼はつらいよ ~フーテンのレザーフェイス~

飛びだす 悪魔のいけにえ/レザーフェイス一家の逆襲('13)
監督:ジョン・ラッセンホップ
出演:アレクサンドラ・ダダリオ、ダン・イェーガー



「私 生まれも育ちもテキサス、ニュート。チェーンソーにて洗礼を受け、
姓はソーヤー、名はジェデダイア、
人呼んで、レザーフェイスと発します」
(このために、まだ観たことない『男はつらいよ』の記事を調べた労力と、その後の脱力感をどうか薄ら悟ってください)

悪魔のいけにえ』のラスト直後。惨劇から生き残った女の子の通報により、ソーヤー一家は保安官と町の自警団に包囲された。自警団は勝手に実力行使に踏み切り、一家が立てこもる家に火を放ち、ソーヤー一家は全員死亡。唯一赤子だけが、自警団員の夫婦に密かに連れ去られていた。
時は流れ、その赤子・ヘザーは18歳になっていた。そこへ、存在すら知らなかった実の祖母の訃報と、彼女が祖母の遺産相続人であることを記した書類が届く。自身が養子であることを知ったヘザーは、本当の家族のことを知るためにもと、友人たちとテキサスへ向かった。祖母の家は豪華大邸宅で、ヘザーも友人たちもつい舞い上がる。しかしその家には、一家虐殺を逃れ、祖母にかくまわれていたレザーフェイスが潜んでいた……。

……あれ? オリジナル(1974)からの続きだったら、あのとき赤ちゃんだった子はもう40代ぐらいになってるんじゃね? レザーフェイスとドレイトンは親子じゃなくて兄弟だったはずじゃね? ついでに、『悪魔のいけにえ2』を考慮するなら、レザーフェイスはみんなから「ババ」って呼ばれてたんじゃね?(本作ではジェドと呼ばれている)
……と、正統続編とはいってもいろいろ設定矛盾が生じる本作。まぁ、『2』は別物続編としても、レザーフェイスの名前ちがいは、彼を「ババちゃん」と呼んできた自分にとってちょっと寂しい。「ジェデダイア」って、立派なお名前ですけど。もっとも、そのへんの矛盾はサクッと無視するのが監督の意図らしいので、いくらこっちがモヤモヤするといっても仕方ない……のかなぁ?

ただ、そのモヤモヤを解消してくれるぐらいのオリジナル愛とリスペクトはある。とりわけ、ガンナー・ハンセン、マリリン・バーンズらオリジナル出演者の登場が嬉しい。オリジナルのときはまだ若かったから特殊メイクでグランパやってたジョン・デュガンなんか、ようやく年相応になってほぼ素顔でグランパを再演してるもんなぁ。ドレイトン役のジム・シードウは残念ながら他界しているが、その後継者がチョップトップことビル・モーズリィってのもニクい。
ハンマースマッシュやらフック吊りやら冷蔵庫やら、オリジナルをなぞったアイテムや描写があるのは分かるが、オリジナルを意識したショットもあるのも嬉しい。特に、ムダ脱ぎ担当ニッキーのホットパンツを下からのぞき見るようなショットは、明らかにテリー・マクミン意識で印象的。あと、実は直接チェーンソーで切られて死んだ奴は1人しかいないあたりも、オリジナル意識なんだろうか……?(その唯一のチェーンソー死を遂げたキャラは、フック吊りもされているので非常に悲惨な死にざまなのだが、映画的には一番おいしい)
しかし、引き戸だけは……何度か登場したものの、「ゴン! ゴン! ピシャッ!!」の映画史上最強の引き戸には及ばない。あの引き戸だけはもはや越えられない伝説なのだろう。ただ、エンドクレジット直前の引き戸には、今までにない哀愁を感じたから良かったよ。

年齢の進行が時空を超えたヒロインに対し、こちらは時間軸に忠実に初老の域に達しているレザーフェイス。もともと丸みのあった身体のフォルムはさらに丸っこくなり、獲物を追って走るときにも
ちょっと足元が危うくなり、ハンマースマッシュも2撃ぐらいじゃ仕留めきれなくなっている。お歳柄、チェーンソーをぶん回すのも本当はキツそう。それでも、まさかのチェーンソーぶん投げアタックができちゃうあたりはさすが職人。ファッションセンスも、ワインレッドを着こなすなど、若いころより攻めになりましたね。
さすがに、昔のように何かとオタオタオドオドはしなくなったものの、初老レザーフェイスの背中には常に哀愁が漂っている。厳しくも温かかった家族を突然奪われ、同時にガソリンスタンド&バーベキュー(原材料:そこらへん通った人)の家業も立ち消え、密かに面倒を見てくれた祖母も他界。無職で孤独で、今後の人生を思うと……という境遇は、歴代レザーフェイスの中でもトップクラスに切ない。
しかし、結末は逆に、歴代レザーフェイスの中でもトップクラスに幸せといえるんじゃないだろうか。一応コレも、日本人大好き「家族の絆の感動モノ」に分類できると思いますけど。

3Dでスプラッターものということで、本作もある程度は期待通りにチェーンソーがばんばか迫ってくる。飛んでもくる。血しぶきや肉片もていねいに散る。難なのは、『ピラニア3D』のような飛びだすエロが少ないことか。
しかし後半になると、飛びだすことは二の次で、サブタイトルの通り「レザーフェイス一家の逆襲」が、怨念と哀しみと、ヘタすると感動を伴ってくり広げられる。感動しちゃったら最後、もうレザーフェイスに肩入れすることこの上なし。サブタイトル、邦題の悪ふざけだと思っててすみませんでした。
というかね、私がこの映画観て「うわぁ、テキサス行きたくねぇなぁ……」と思う理由って、レザーフェイス(とその一家)じゃないんですよ。「『目には目を』って聖書でもいってるじゃん」って、ズレズレの正義感と都合のいい倫理観を振りかざすテキサス野郎こそ、一番リアルで怖くてヤな存在じゃないですか。その最骨頂こそ、アフガン人がテロやったからイラクで戦争するぞ! ってムチャクチャやったあの大統領じゃないですか……。

なお、一時期日本の配給がよくやらかしてた日本オリジナルエンディング曲ってありましたよね。多くの映画好きの例にもれず、私もこの手法は好かないクチなのですが、コチラに限っては日本オリジナルエンディングとして流れても怒りませんよ。いや、ホントに。

2013年6月30日日曜日

イノセント・ガーデン

アリスはもう帰らない。

イノセント・ガーデン('13)
監督:パク・チャヌク
出演:ミア・ワシコウスカ、マシュー・グード



白ウサギは謎めいた金髪の好紳士。ラビットホールは鍵。
ただし、アリスが落ちてきた不思議の国には、マッドハッターも三月ウサギもトランプ兵もなく、白ウサギ=紳士とアリスだけ。そしてアリスは一人不思議の国の女王様になる。
そんなパク・チャヌク版『不思議の国のアリス』にも見えました。

他の人より鋭い感覚を持つがゆえに、孤立している少女インディア・ストーカー。18歳の誕生日を迎え、プレゼントに謎の鍵が届けられたとき、一番の理解者であった父親が事故で亡くなる。
父の葬儀の日、それまで存在すら知らなかった叔父のチャーリーが現れた。容姿も性格も非の打ちどころがなく、何かとインディアに優しいチャーリーに、母親は好意を抱くが、インディアは惹かれながらも不審を抱いていた。
同じころ、インディアの周りでは、長年勤めていた家政婦や祖母が失踪していった。チャーリーの出現と彼女らの失踪は関わりがあるのか。誕生日に届けられた鍵は、何を開けるものなのか。

ミア・ワシコウスカといえば、ティム・バートン版『アリス・イン・ワンダーランド』のアリス。変わり者で不機嫌そうな顔の彼女が、アンダーランドの冒険と戦いを経て、活き活きとした表情になっていくのが魅力的だった。
本作のミアも、憂鬱そうな表情からしだいに活き活きとしてくるのが魅力なのだが、アリスに比べインディアの冒険はよりおぞましく、生々しく、それでいて美しい。
ゆで卵をテーブルの上でゴリゴリと転がす音。脚を這い登るクモ。血のついた鉛筆を削る音。インディアが履く新しい靴。草むらに飛び散る血。細やかで危険で美しい描写が、インディアの鋭敏な感覚を伝えるだけでなく、エロティシズムさえにじませる。シャワーと自慰というダイレクトなシーンもあるが、それよりもエロティシズムが高いシーンが、インディアとチャーリーの連弾。ほんのわずかに動くインディアの足首が、また一段と官能的なのである。

『アリス』のときはあまりセクシュアリティを感じなかったミアだが、本作ではおそろしく妖艶。叔父・チャーリーのマシュー・グードも、相手を見つめる大きな瞳と微笑を絶やさない口元が、謎めいた魅力と危うさに満ちている。この2人の間に立つ母親・エヴィのニコール・キッドマンが、本来もっとも華やかでゴージャス感もあるというのに、霞んでみえるほどである。
もっとも、ここでは母親が霞むことが正しい。エヴィとインディア/チャーリーの間には、彼女が思っている以上に大きな壁がある。おそらくその正体は、チャーリーとインディアとをつなぐストーカー家の血筋である。(本作の原題は『Stoker』)

アリスは一人不思議の国に留まる……とはいったものの、実際のところインディアは住み慣れた庭(=イノセント・ガーデン)から旅立っていく。つまりは少女から女性への変態であり、脈々と伝わる血筋の目覚めでもある。欲望から解き放たれ、その血筋からも自身を解き放ったアリスは、もうもとの少女に戻ることはできないのだ。

2013年6月11日火曜日

マニアック(2013)

偏執狂的イライジャ・ウッドの穴。

マニアック('13)
監督:フランク・カルフン
出演:イライジャ・ウッド、ノラ・アルネゼデール



『マルコヴィッチの穴』って映画ありましたね。ビルにある謎の穴に入ると、3分間だけジョン・マルコヴィッチになれるってやつ。ボンクラ脳をお持ちの方なら、誰になってみたいか妄想力をフル稼働させたことだろう。……させたよね? させたと言ってくれませんか!?
それはともかく、たとえ誰かになれる穴に入れたとしても、このときのイライジャ・ウッドになってみたいって人はまずいなさそう。しかも、3分間じゃなくて、89分間だからね。でも、ハマる人は妙にハマってしまうんだよ、この視点。

女性を殺して頭皮を剥いではマネキンに被せる連続殺人鬼、フランク。その犯行を追いながら、なぜ内気なマネキン修復師の彼が凶行をくり返すのかが徐々に暴かれていく。と同時に、初めて自分を理解してくれるかもしれないと思った女性カメラマン・アンナと出会ったことで、フランクの人生にもたらされた幸福と狂いも明らかになっていく。
本作は1980年の同名映画(特殊メイク担当トム・サヴィーニ先生)のリメイク。オリジナルは未見だが、もとのフランク役ジョー・スピネルのごんぶとで濃ゆい存在感とは雲泥の差ながら、対人恐怖症の気があって繊細な犯人像にはイライジャ・ウッドは適任だと思う。小動物のような見た目からターゲットが安心して近づいてしまうのも、逆にあの大きな瞳でじっとり凝視されてターゲットが恐怖をおぼえるのもうなずける。

オリジナルとのもっとも大きな違いは、すべて犯人の目線で描かれているということ。フランクがどのようにして獲物を追い、どのようにして殺すのか、犯行のすべてが分かる。映像や音楽がクールに描かれているのに相対して生々しい。
しかし同時に、主人公でありながら、フランクの姿はほとんど画面に映らないことになる。ときおり鏡や窓に映った姿を見るぐらい。あるいは彼の幻想の中で、客観的な姿(それでも主観なんだけど)を見るか。したがって、観客は常にフランクの表情を見ているわけではない。
それでも、というよりはそれだからこそ、フランクの緊張感や揺れ動きがダイレクトに伝わる。視線の動き(人の目を見てしっかり話すことが苦手な人ほど身につまされる)や、獲物を定めて追うときの息遣いを通して。あるいは、子どもにとってはおぞましい母の記憶の幻想を通して。アンナとのちょっとしたデートがいかにフランクにとって至高のひとときかも分かるし、彼女にボーイフレンドがいると知ったときや、美術編集者に屈辱的なことを言われたときには、痛みがビシビシ伝わってくるのだ。

こういう映画だと、当然真っ先にスラッシャーホラーに耐性/興味のある客層が来るはずなのだが、どういうわけか配給元は一部ゴアシーンにボカシを入れた。そして、当然上記のような客層から多かれ少なかれひんしゅくをかった。
R指定を15に押さえるためでもあり、本作のラブストーリー的側面を見てほしいための決定だそうだが、同年公開のリメイク版『死霊のはらわた』が豪快にぶっちぎったりぶった切ったりしてR18を堂々と掲げていたことを思うと、残念な気もする。残虐シーンは全部見せろ! とばかり言いたいわけではないけれど、「観るべきところはそこだけじゃないよ、ほらほらラブストーリーも観てよ」と変にガイドするのは、ちょっとお節介の部類になってしまうんじゃないかなぁ。

そんなモヤモヤを吹き飛ばしてくれたのが、終盤のフランクの暴走と、切る、刺す、殴る、ぶった切る、撥ねるなど、暴走劇を真っ赤に彩る血祭り。フランク自身の心の痛みも、肉体的痛みも最骨頂に達し、当然観ている側もフランクと一体となって体感することになる。
そしてなによりも痛いのは、血祭りの果てにそれでも望むものを得ることのできないフランクの切なさ。スプラッターを見にきたつもりだったのに、不覚にも泣けてくるほどだった。

2013年6月4日火曜日

ゾンビ・ストリッパーズ

腐ってもおっぱい……なのか?

ゾンビ・ストリッパーズ('08)
監督:ジェイ・リー
出演:ロバート・イングランド、ジェナ・ジェイムソン



確かに私はジェナ・ジェイムソンがもともとポルノスターだと知っていた。しかし、それはマリリン・マンソンの自伝に彼女のことが書いてあったのを読んだからで、せいぜい「昔マンソンと何かあった人」程度の関心。この作品において私の関心は別のところにあるのだ。
だから、本作をポチったからといって、ジェナさんのDVDをレコメンドしなくてもいいんだよAmazonさん!!

そう遠くない未来(という設定)。第4期目に突入したブッシュ政権は、中東のみならず世界各国との戦争に明け暮れ、慢性的兵力不足に悩んでいた。そこで開発されたのが、死んだ兵士を甦らせ、恐れを知らない真のスーパー兵士に変貌させる薬。ただし、この手の発明のお約束として、薬の研究所ではゾンビハザードが……。
凄腕の少数精鋭兵士Z分隊が何とか事態を鎮圧するが、実は噛まれてウィルスに感染してしまった新米兵士が、殺されるのを恐れて研究所を脱走。辿りついた先は違法ストリップクラブ「ライノ」。政府がストリップクラブの営業を禁止してしまったので、今はアングラ経営なのだ。その間にも徐々にウィルスに侵食されていった兵士は見事ゾンビ化し、ステージ上のトップダンサー、キャットにガブリ。
当然、噛まれて死んだキャットもゾンビ化してむっくり甦るのだが……そのままステージに上り、今まで以上に過激でアグレッシブなダンスでお客を大熱狂させる。スーパー兵士を作る薬で感染したストリッパーは、恐れを知らない真のスーパーストリッパーに生まれ変わったのだ!! まぁ、言ってもゾンビだから、バックステージでちゃっかりお客を文字通り喰っちゃうのだが。
「ライノ」のオーナー・イアンは、これをチャンスと金儲けに走り、キャットへの憧れやライバル心から自ら噛まれてゾンビとなるストリッパーも。しかし、クラブの地下はストリッパーたちに喰われてゾンビ化した男どもでいっぱいいっぱい。Z分隊も感染者の行方を追って「ライノ」に辿りつこうとしていた。果たして、このカオスにどうやって収拾をつけるのか……?

ブッシュ政権が長引いて戦争も長期化してる背景、女のほうがウィルスの感染進行が遅いという都合のいい設定、ストリップだけに出し惜しみなしのエロ、ストリッパーじゃなくても兵士のおねえちゃんもタンクトップかブラだけになるというムダなちょいエロ、そんなエロに見合わせて意外に気合の入ったグロ、ときおり混じってはエログロをまろやかにするお笑い、そしてエロ・グロ・笑いに隠れてサブリミナル程度に残る社会風刺……
これほど潔いB級ホラーも、近年なかなか貴重ではないかと。ストリッパーとゾンビという掛け合わせも、斬新というかイイ感じに頭が悪くて潔い。コメンタリーで裏話を聞いてみると、監督さんが現場で撮影も担当してたり、スタッフがエキストラも兼任してたりと、いかにも低予算撮影現場なお話がゴロゴロしていたのも微笑ましいところだ。

ところで、ストリッパーがゾンビ化して激しいダンスを見せるほどお客たちは熱狂するんだけど、いかんせん1回死んでるので、時間が経過するにつれ彼女らは腐敗が進んでくる。中盤もすぎると、天下のジェナといえども結構ボロボロ。このあたりまでくるとエロの度合いも下がってくる。それでも客が集まってくるのは、オーナーの言うとおり「ゴスは流行」だからなのか。それとも、裸よりもアクロバティックなダンスに夢中になったのか。まさか……裸が拝めるんなら腐っていようと関係ないぜというメンタリティの方々が集ったのか?

なお、本作はフランスの劇作家ユージーン・イオネスコの演劇『犀(サイ)』がモデルになっているとか。一応、クラブの名前は「ライノ」だし、ロバートさん演じるオーナーの本名はイアン・エスコで作者のもじりだし、唯一マトモなストリッパー・ブランジェの名前は『犀』の主人公からきてるし、後半の彼女のセリフは『犀』終盤のダイアローグを参照している。
出演者もそこは褒めてたけど、いかんせんエログロのインパクトのほうが勝ってたもんで。自分文学クラスでこの台本読んで試験勉強もしたけど、完全にゾンビ・ストリッパーズとロバート・イングランドさんに気取られてて分からなかったよ。

そう、この映画の極私的見どころは、やっぱりロバート・イングランドさんなのである。イングランドさんが出るだけで、B級ホラーも格調高くなる(当社比)。
イアンは卑屈で、小心者で、金に汚くて、ダーティーワークは全部他人に押しつける。ストリップクラブのオーナーという役得みたいな地位なのに、「汚いから触るな」とばかりにストリッパーたちをバイ菌扱いして除菌スプレーをかけまくる。どこからどう見ても、フレディ・クルーガーとはちがったベクトルで最低野郎のはず。
しかしどういうわけか、一挙一動、表情1つ1つが不思議とチャーミングで、どうしても憎み切れない。このへんはどう見ても、それこそ『エルム街の悪夢』のフレディや『2001人の狂宴』のバックマン町長同様、ロバートさん自身の魅力によるところが大きい。フレディの火傷メイクの上からでもダダ漏れていたチャーム、素顔になると余計流出が激しいようで。それも、ファンのフィルターを通すとなおさら……。
ちなみに、怒って相手を威嚇するようなポーズをとったとき、右手がフレディっぽくなる瞬間があるので注目です。

2013年5月31日金曜日

エルム街の悪夢4 ザ・ドリームマスター 最後の反撃

目的は忘れた! でも殺しとユーモアと美少女は忘れない!!

エルム街の悪夢4 ザ・ドリームマスター 最後の反撃 ('88)
監督:レニー・ハーリン
出演:ロバート・イングランド、リサ・ウィルコックス



まぁ、よくある話ですよ。気がついたら本題それてスケール拡大してるってこと。
日常でいったら、流し台に落っこちた髪の毛拾ってたら、あっちの汚れもこっちの汚れも気になって、気づいたら「何で流し台全部キレイにしてるんだ?」ってなるとか、出しっぱなしの本を棚に戻すだけのはずが、「何で本棚の並び総入れ替えになってるんだ?」ってなるとかね。
ただ、殺人鬼は別にそこで「何でオレこいつまでぶっ殺してるんだ?」って立ち止まらないからね。

前作『エルム街の悪夢3 惨劇の館』で多大な犠牲を払った方々の努力をムダにして、性懲りもなく復活するフレディ。前作で生き残ったクリステンから、さらにはクリステンの親友(でもあり、ボーイフレンドの妹)アリスを媒介に、他の子どもたちをも夢に引きずり込む。
というわけで、フレディのモチベーションは本来の「自分を殺した奴らの子どもを皆殺し」から、「趣味の子ども殺し」に転じる。そうでもしないとシリーズ続けられないし、もともと趣味で連続殺人やってたわけだからもうしょうがないとは思うけど。殺人鬼キャラに「まったくしょうがないな君は」なんて能天気なこと言ってられるのもファンぐらいなものですね。

しかし実際のところ、フレディのモチベーションはヒロインの魅力に比例していると思われる。ヒロインが可愛らしく、しかし強く、懸命に立ち向かってくるほど、ブラックユーモアも悪夢演出も冴えわたる。
クリステン役が前作の美少女パトリシア・アークエットから交代してしまったのは残念だったが、リサ・ウィルコックス演じる、透明感がありつつ芯の強そうなアリスが登場。あれだけご執心だったクリステンをあっさりポイするとは何ともゲンキンだが、おかげでフレディの悪ノリに磨きがかかってくれた。"How sweet......flesh meat!" "I love soul food!" など名ゼリフも拝聴できたし、ナースフレディ(姿形変化自在なフレディなのに、なぜかロバート・イングランドさん本人がガチで女装)、炎天下のビーチにフレディ出現、透明フレディと空手勝負、人間ミートボールなどの名演出……というよりもはや珍場面集が大量放出される。すなわちロバートさん大活躍。
とはいえ、今回のフレディ復活のくだりは、たとえ自分が再び甦られるとしてもそれはちょっとヤですと文句つけたくなる展開。ロバートさんもここらで苦情言ってもいいのに。あと、筋トレが趣味のパンク系少女デビーの死に様、別名「ゴキブリホイホイ死」。「存在そのものが犯罪」と位置付けるほどアレが大嫌いな自分には、シリーズ1どぎつい。特撮スタッフさんが張り切っちゃったのかもしれないが、ここらへんの演出はワンパクがすぎるさ。

このワンパクさの原因は、アクションゴリ押し系監督のレニー・ハーリンと思われる。アリスには「夢をコントロールできる」という力があるらしいのだが、その設定はほとんど活かされず忘れられているに等しい。サブタイトルなのに。その代わり、何の説明もなく、夢の中で死んだ友人や兄の特技や癖がアリスにそなわり、最終的に武闘派美少女として立ち上がったりする。『カットスロート・アイランド』や『ロング・キス・グッドナイト』で元奥さんのジーナ・ローランズをタフなヒロインに演出するのが好きだったみたいだし、監督の趣味なんだろうなぁ。

ここまでやっておきながら、次回作でアリスがママになった途端、さすがというべきかフレディの彼女への興味は半減したらしい。この本筋にまったく関係ないのだが、グループ魂横浜公演の港カヲルさんの前口上が、フレディのゲンキンな態度にピタリとハマったので引用しておく。
「女は……子どもを産む機械ではないのである! なぜなら……
妊婦には興味がないから!! 誰が? オレが!!!」